店内でのけがの対応|先に人、あとで記録
目次
店内でのけがは、起きたときに何をするかを決めていないと、その場の判断で動くことになる場面です。判断が分かれると、あとから対応の差が問題になります。
この記事では、店内でのけがが起きたときの順番を整理します。責任の話ではなく、先に人、あとで記録という順番の話です。
結論:店内でのけがは「先に人、あとで記録」
店内でのけがで守る順番は1つです。先に人、あとで記録。
けがの程度を見て、必要なら救急に連絡する。動かしてよいかを判断する。ここまでが先です。記録は、落ち着いてからで足ります。
ポイントはここです。責任の所在をその場で話さないでください。「店の落ち度ではない」と言った直後に、床が濡れていたことが分かる場面があります。
一般には、けがの対応と、責任の話を同じ場面で進めようとしてしまいます。2つを分けると、どちらも正しく進みます。
最初の30秒でやること
最初にやるのは、声をかけて状態を確かめることです。
確かめるのは3つです。意識があるか、動けるか、出血があるか。
| 状態 | 動き |
|---|---|
| 意識がない | すぐ救急に連絡する |
| 動けない | 動かさずに人を呼ぶ |
| 出血が多い | 止血して救急に連絡する |
| 動ける | 安全な場所へ誘導する |
2つ目が難しい場面です。頭や首を打っている場合、動かすとかえって悪くなることがあります。本人が立とうとしても、一度止めて確かめます。
救急に連絡するかどうかで迷ったら、連絡するほうを選びます。迷う状態そのものが、連絡してよい理由になります。
人を呼ぶ
けがの対応を、1人でやらないでください。
1人だと、その場から離れられません。救急への連絡、他のお客さまへの対応、現場の保全が同時にできません。
一般には、気づいた人がその場に残り、別の人を呼ぶ形が取られています。呼び方を先に決めておきます。インカム、内線、声。手段は店によります。
呼ぶときに伝えるのは3つです。場所、けがの程度、必要なもの。「レジ横で転倒、出血あり、救急箱をお願いします」で足ります。
現場をそのままにする
けがが起きた場所は、そのままにしておきます。
濡れていた床、はみ出していた什器、落ちていた商品。原因になったものを片づけると、何が起きたか分からなくなります。
ただし、同じことがもう1件起きる状態は先に止めます。濡れた床をそのままにして次の人が転ぶのは、防げる事故です。
一般には、写真を撮ってから片づける形が取られています。写真があれば、片づけても状態が残ります。
記録に書く7つ
けがの記録に書くのは、7つです。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 日時 | 起きた日と時刻 |
| 場所 | どこで |
| 状況 | 何が起きたか |
| けがの程度 | どこを、どの程度 |
| 対応 | 何をしたか |
| 相手 | 名前と連絡先 |
| 目撃者 | 見ていた人 |
7つ目を忘れないでください。あとから状況が食い違ったときに、見ていた人がいるかどうかで話が変わります。
3つ目の状況は、見たことだけを書きます。「不注意で」「急いでいたため」は推測です。書いた人の解釈が入ると、記録として使えません。
連絡先をどう聞くか
けがをした方の連絡先は、後日の確認のために聞きます。
聞きにくい場面ですが、聞かないと、その後の経過が分かりません。打撲や頭部の打撲は、あとから症状が出ることがあります。
聞くときは理由を添えます。「のちほど経過を伺いたいので」と言えば、目的が伝わります。断られた場合は、店の連絡先を渡します。
聞いた個人情報の扱いには、法令上の決まりがあるとされています。保管の場所と期間は社内の決まりに従い、判断に迷う場合は個人情報保護委員会の窓口に確かめてください。
治療費の話をその場でしない
けがの場面でいちばん避けたいのは、その場で治療費の話をすることです。
「治療費はお支払いします」と言うと、責任を認めたことになります。逆に「店は関係ありません」と言うと、あとから覆せません。
一般には、「まずお体を優先してください。あらためてご連絡いたします」と伝えて、その場では判断しない形が取られています。
判断は、責任者と、必要に応じて保険の窓口が行います。現場の判断で金銭の話をしないでください。
従業員がけがをしたとき
けがをするのは、お客さまだけではありません。従業員のけがは、扱いが別になります。
従業員が業務中にけがをした場合、労働災害として扱われることがあるとされています。報告の手続きや、治療費の扱いが変わります。
一般に、軽いけがでも記録は残します。あとから症状が悪化したときに、記録が無いと業務中のけがだと示せません。
労働災害の届出や手続きについては、社内の担当と、所轄の労働基準監督署に確かめてください。店の判断で「たいしたことがない」と処理しないでください。
報告する先を決めておく
けがが起きたときに、誰にどこまで報告するかを先に決めます。
一般には、次の3つで線を引きます。
| 程度 | 報告先 |
|---|---|
| 応急手当で済んだ | 責任者に当日中 |
| 病院に行った | 責任者と本部に当日中 |
| 救急車を呼んだ | 責任者と本部に即時 |
責任者が不在の時間帯の連絡先まで決めておいてください。決めていないと、その場で誰に連絡するかを探すことになります。
備えておくもの
けがへの備えは、4つです。
救急箱、連絡先の一覧、記録の様式、対応の手順。どれもすぐ手に取れる場所に置きます。
救急箱は、中身を定期的に確かめます。使ったまま補充されていないことがよくあります。期限のあるものも入っています。
連絡先の一覧には、救急、責任者、本部、近くの病院を並べます。慌てているときに調べる時間はありません。
起きた場所を直す
けがの記録が溜まってきたら、場所を見ます。
同じ場所で2件以上起きているなら、そこに原因があります。床の材質、段差、照明、通路の幅、什器の角。
一般には、濡れやすい場所と、段差のある場所に集まります。マットを敷く、表示を付ける、段差を目立たせる。どれも大きな工事は要りません。
なお、通路の幅や避難の経路については、建物の用途によって決まりがあるとされています。什器を動かす前に、所轄の消防署や特定行政庁に確かめてください。
けがの起きやすい場所
店内でけがが起きやすい場所は、だいたい決まっています。
| 場所 | 起きやすいこと |
|---|---|
| 入口の周り | 雨の日に床が濡れる |
| 段差 | つまずく |
| 什器の角 | ぶつかる |
| 階段とエスカレーター | 転倒 |
1つ目がいちばん多く起きます。雨の日は、入口のマットを増やすだけで減ります。マットがずれると、今度はマットでつまずきます。
2つ目の段差は、目立たせるのが基本です。色を変える、テープを貼る、表示を付ける。工事をしなくても減らせます。
お客さま同士のけが
けがは、店の設備が原因とは限りません。お客さま同士がぶつかる場面があります。
このときも、対応は同じです。先に人、あとで記録。当事者のどちらが悪いかを店が判断しないでください。
記録には、双方の名前と連絡先を残します。あとで当事者同士のやり取りになることがあります。
店が関わる範囲は、応急の手当てと、記録と、必要なら救急への連絡までです。それ以上に踏み込むと、店が当事者になります。
高齢の方が転倒したとき
高齢の方の転倒は、見た目より重いことがあります。
骨折していても、本人が気づかずに立ち上がることがあります。「大丈夫です」と言われても、一度座っていただいて確かめます。
一般には、頭を打っているかどうかを必ず確かめます。打っている場合は、本人が元気でも医療機関の受診をおすすめします。
連絡先は必ず伺います。あとから症状が出たときに、店が知らないままになるのを防ぐためです。
定期的に見回る
けがを減らすいちばん確実な方法は、見回ることです。
見るのは4つです。床が濡れていないか、段差の表示が消えていないか、什器がはみ出していないか、通路に物が置かれていないか。
一般には、開店前と、雨の日の営業中に回る形が取られています。回数を増やすより、雨の日に必ず回るほうが効きます。
見回りは記録に残します。回った時刻と、直したこと。記録があると、事故が起きたときに手を打っていたことが示せます。
事故が起きたあとに直す
けがが起きたら、同じ場所で二度目を起こさないのが次の仕事です。
直す順番は、危険をなくす、危険を隠す、表示で知らせるの順です。段差そのものをなくせるなら、それがいちばん確実です。
なくせないなら、目立たせるか、通らせない形にします。表示だけに頼ると、急いでいる人には届きません。
直した内容は記録に書き足します。翌月以降に同じ場所が並ばなければ、直した場所が合っていたことになります。
保険の扱いを知っておく
店には、お客さまのけがに備えた保険が掛けられていることがあります。
現場が知っておくのは、保険があるかどうかと、連絡する先の2つで足ります。金額や条件は責任者と保険の窓口が扱います。
大事なのは、記録が保険の手続きに使われることです。日時、場所、状況、目撃者。記録が薄いと、あとから確かめようがありません。
一般には、その場で保険の話をしない形が取られています。「保険で対応します」と言った時点で、責任を認めたと受け取られます。
まとめ
店内でのけがは、先に人、あとで記録の順で動きます。
- 最初に確かめるのは意識、動けるか、出血の3つ
- 迷ったら救急に連絡する。迷う状態そのものが理由になる
- 1人で対応しない。場所、程度、必要なものを伝えて人を呼ぶ
- 現場は写真を撮ってから片づける。二次災害だけは先に止める
- その場で治療費の話をしない。判断は責任者と保険の窓口が行う
従業員のけがは労働災害として扱われることがあるとされています。届出や手続きは、社内の担当と所轄の労働基準監督署に確かめてください。
よくある質問
Q. けがを見つけたら何からやりますか。 A. 声をかけて、意識、動けるか、出血の3つを確かめてください。記録は落ち着いてからで足ります。
Q. 救急車を呼ぶか迷います。 A. 呼ぶほうを選んでください。迷う状態そのものが、連絡してよい理由になります。
Q. 本人が「大丈夫」と言っています。 A. 頭や首を打っている場合は、一度止めて確かめてください。動かすとかえって悪くなることがあります。
Q. 1人で対応してもよいですか。 A. 1人だとその場から離れられません。気づいた人が残り、別の人を呼んでください。場所、程度、必要なものを伝えます。
Q. 現場を片づけてよいですか。 A. 写真を撮ってからにしてください。原因になったものを片づけると、何が起きたか分からなくなります。
Q. 濡れた床をそのままにしますか。 A. 二次災害だけは先に止めてください。次の人が転ぶのは防げる事故です。写真を撮ってから処置します。
Q. 記録に何を書きますか。 A. 日時、場所、状況、けがの程度、対応、相手、目撃者の7つです。状況は見たことだけを書いてください。
Q. 目撃者まで必要ですか。 A. 必要です。あとから状況が食い違ったときに、見ていた人がいるかどうかで話が変わります。
Q. 連絡先を聞きにくいです。 A. 理由を添えてください。「のちほど経過を伺いたいので」と言えば目的が伝わります。断られたら店の連絡先を渡します。
Q. 治療費の話をされました。 A. その場で判断しないでください。「まずお体を優先してください。あらためてご連絡いたします」と伝えます。
Q. 「店の責任です」と言われました。 A. 認めることも否定することもしないでください。責任者に上げます。現場の判断で金銭の話をしないでください。
Q. 従業員がけがをしました。 A. 扱いが別になります。労働災害として扱われることがあるとされています。軽いけがでも記録は残してください。
Q. 軽いけがでも報告しますか。 A. してください。あとから症状が悪化したときに、記録が無いと業務中のけがだと示せません。
Q. 救急箱の中身を確かめていません。 A. 定期的に確かめてください。使ったまま補充されていないことがよくあります。期限のあるものも入っています。
Q. 同じ場所で何度も起きます。 A. そこに原因があります。濡れやすい場所と段差のある場所に集まります。マットや表示で減らせます。
Q. どこで起きやすいですか。 A. 入口の周り、段差、什器の角、階段の4つです。雨の日の入口がいちばん多く起きます。マットを増やすだけで減ります。
Q. 段差をどう減らしますか。 A. 目立たせてください。色を変える、テープを貼る、表示を付ける。工事をしなくても減らせます。
Q. お客さま同士がぶつかりました。 A. 対応は同じです。どちらが悪いかを店が判断しないでください。双方の名前と連絡先を記録に残します。
Q. 高齢の方が転倒しました。 A. 「大丈夫です」と言われても一度座っていただいてください。頭を打っているかを必ず確かめます。骨折に気づかず立つことがあります。
Q. 見回りはどれくらいやりますか。 A. 開店前と、雨の日の営業中です。回数を増やすより、雨の日に必ず回るほうが効きます。回った時刻と直したことを記録します。
Q. 事故のあと、何から直しますか。 A. 危険をなくす、危険を隠す、表示で知らせるの順です。表示だけに頼ると、急いでいる人には届きません。
Q. 直したかどうかをどう確かめますか。 A. 翌月以降に同じ場所が並ばなければ、直した場所が合っていたことになります。減っていなければ、直した場所が違います。
Q. 保険の話をしてよいですか。 A. その場ではしないでください。「保険で対応します」と言った時点で、責任を認めたと受け取られます。責任者と窓口が扱います。
Q. 記録は保険に使われますか。 A. 使われます。日時、場所、状況、目撃者が薄いと、あとから確かめようがありません。