クレームの記録の書き方|事実と意見を分ける
目次
クレームの記録は、対応が終わった時点で力尽きて、書かれないまま消えていくことが多い書類です。書かれていないと、同じことが翌月も起きます。
この記事では、クレームの記録に何を書くかを整理します。うまく書く話ではなく、あとから使える形にする話です。
結論:クレームの記録は事実と意見を分けて書く
クレームの記録でいちばん大事なのは、事実と意見を分けて書くことです。
事実は、いつ、どこで、誰が、何が起きたか。意見は、なぜ起きたと思うか、どうすればよいと思うか。この2つが混ざると、あとから読んだ人が判断できません。
ポイントはここです。「お客さまが怒っていた」は意見で、「声の大きさが上がった」は事実です。同じ場面でも、書き方で残るものが変わります。
一般には、書式を整える方向に手が入ります。ただ、項目が増えても、事実と意見が混ざったままなら使えません。分けるほうが先です。
必ず書く6つ
クレームの記録に必ず書くのは、6つです。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 日時 | 起きた日と時刻 |
| 場所 | 売り場、レジ、電話など |
| 内容 | 何を言われたか |
| 対応 | 何をしたか |
| 結果 | どう収まったか |
| 担当 | 対応した人、報告した相手 |
3つ目は、お客さまの言葉をそのまま書きます。要約すると、書いた人の解釈が入ります。「対応が遅い」と言われたなら、そのまま「対応が遅い」と書きます。
5つ目の結果は、収まっていない場合も書きます。「後日ご連絡することになった」も結果です。空欄にすると、終わったのか続いているのかが分かりません。
その場で書くか、あとで書くか
クレームの記録は、その場に近いほど正確になります。
一般には、対応が終わってすぐ、5分以内に書く形が取られています。時間が経つほど、印象が記憶を上書きします。
ただし、お客さまの目の前でメモを取ることには注意が必要です。記録されていると感じると、話し方が変わることがあります。名前や連絡先を書き留める場面以外は、離れてから書きます。
書いた人の感情を入れない
記録に、書いた人の感情を入れないでください。
「理不尽だった」「一方的に責められた」と書くと、事実の記録ではなくなります。あとから読む人は、何が起きたかではなく、書いた人がどう感じたかを読むことになります。
ただし、言われた内容が度を越えていた場合は、その事実を書きます。「大声で30分にわたり同じ内容を繰り返された」は事実です。「怖かった」は感情です。
この区別は、対応する側を守るためにも要ります。度を越えた要求への対応には、社内の決まりと、場合によっては法令の判断が関わります。判断に迷う場合は、責任者と、必要に応じて所轄の警察署に相談してください。
個人情報の扱い
クレームの記録には、お客さまの名前や連絡先が入ることがあります。
名前や連絡先を書くのは、後日の連絡が必要な場合だけにします。必要のない場面で書くと、保管と廃棄の手間が増えます。
保管の場所も決めておきます。誰でも見られる場所に置かないでください。個人情報の取り扱いについては法令上の決まりがあるとされています。保管の期間や方法に迷う場合は、社内の担当か、個人情報保護委員会の窓口に確かめてください。
記録を分類する
記録が溜まってきたら、分類します。
分類の軸は、何についての申し出かです。
| 分類 | 例 |
|---|---|
| 商品 | 品質、期限、表示 |
| 接客 | 言葉づかい、待たせた、態度 |
| 会計 | 金額、釣銭、レシート |
| 施設 | 清掃、設備、駐車場 |
分類しないと、件数は分かっても手の打ち方が決まりません。4つに分けるだけで、どこに集まっているかが見えます。
分類は、書いた人ではなくまとめる人がやるほうが揃います。書く側に分類まで求めると、書くこと自体が面倒になります。
月に1回だけ見る
クレームの記録は、溜めて月に1回見ます。
1件ごとに対策を立てると、その場しのぎが積み重なります。1か月分を並べて、同じものが3件以上あるかどうかを見ます。
3件以上あるなら、個人の対応ではなく仕組みの問題です。手順、表示、配置、教育のどれかに原因があります。
1件だけのものは、対応した記録として残すだけで足ります。全部に対策を立てようとすると、見る時間が長くなって続きません。
報告の線を決めておく
クレームのうち、その場で終わらせてよいものと、上げるものを分けます。
一般には、次の4つは必ず上げる形が取られています。けがが出た、金銭の要求があった、他のお客さまを巻き込んだ、法令に関わる指摘があった。
上げる基準を決めていないと、判断が人によって変わります。上げなかったことがあとから問題になるより、上げすぎるほうが安全です。
上げる先も決めます。責任者が不在の時間帯があるなら、そのときに誰へ上げるかまで決めておきます。
対応した人を守る形にする
クレームの記録は、対応した人を評価する材料にしないでください。
件数が評価に使われると、書かれなくなります。書かれなければ、記録そのものが成り立ちません。
一般には、「記録は原因を見るためのもので、人を見るためのものではない」と最初に言葉にして渡す形が取られています。言われていないと、書く側は評価されると思います。
とくに、度を越えた要求を受けた場面では、記録があることが本人を守ります。1人で抱えさせないためにも、書ける空気を先に作ります。
書式を1枚にする
記録の書式は、A4で1枚にまとめます。
項目は6つと、分類の欄、上げたかどうかの欄。これ以上増やすと書かれません。
置く場所は、書く人がすぐ手に取れるところです。事務所の奥にあると、取りに行くうちに書かないことになります。
電子で残す場合も同じです。入力に3分以上かかる形にすると、続きません。
記録から表示や手順を直す
記録の目的は、次に同じことが起きないようにすることです。
同じ申し出が3件以上あるなら、手順か表示を直します。接客の技術で吸収し続けると、担当が変わるたびに元に戻ります。
直したら、直した日と内容を記録に追記します。追記がないと、来月も同じものを数えることになります。
直した結果は、翌月の件数で見ます。減っていなければ、直した場所が違います。
新しく入った人への渡し方
クレームの記録は、新しく入った人にも書いてもらいます。
渡すのは2つです。事実と意見を分けることと、上げる4つの基準。この2つがあれば、書式の項目は見れば分かります。
書き方が分からずに書かないより、分けられていなくても書いてあるほうが役に立ちます。まず書いてもらって、書式は後から整えます。
電話で受けたクレームの記録
電話で受けたクレームは、対面より記録が曖昧になりやすいという特徴があります。
相手の様子が見えないぶん、言われた内容だけが残ります。そのぶん、言葉をそのまま書き留めることが大事になります。
一般には、電話中にメモを取る形が取られています。対面と違って、メモを取っていることが相手に見えません。日時、内容、相手の名前と連絡先を、話しながら書きます。
聞き取れなかった部分は、その場で確かめます。「恐れ入ります、もう一度お伺いしてもよろしいでしょうか」で足ります。あとから推測で埋めないでください。
書き込みや口コミとの関係
店への申し出が、その場ではなく書き込みとして出ることがあります。
書き込みの内容も、記録として扱えます。日時、内容、どこに書かれたかを残しておくと、店内で起きたことと突き合わせられます。
一般には、書き込みだけを見て対策を立てるのは難しいとされています。書いた人が特定できず、事実関係が確かめられないためです。
それでも、店内の記録と同じ指摘が並ぶなら、事実である可能性が高くなります。2つの記録を同じ場で見ると、判断の材料が増えます。
書き込みへの返信をするかどうかは、社内の方針で決めます。個人が判断して返信しないでください。
記録を月に1回共有する
記録は、書いた人だけが知っている状態にしないでください。
一般には、月に1回、件数と分類だけを共有する形が取られています。個別の内容まで全員に回すと、個人が特定される場面が出ます。
共有の場では、対応した人を名指ししないことを先に決めておきます。名指しされる場になると、翌月から書かれなくなります。
共有する内容は3つで足ります。今月の件数、いちばん多かった分類、直したこと。この3つがあれば、次に何をするかが決まります。
記録が続かないときに見るところ
記録が書かれなくなったときは、書く人の意識ではなく、形を見ます。
見るところは3つです。置き場所が遠い、項目が多い、書いたあと何も起きない。
3つ目がいちばん効きます。書いても何も変わらないと分かると、書く理由がなくなります。月に1回、直したことを共有する場があるだけで続き方が変わります。
項目は6つまでにします。増やしたくなったら、代わりに1つ減らします。書式を作る側が使う側になっていないと、必ず増えていきます。
まとめ
クレームの記録は、事実と意見を分けると使えるものになります。
- 書くのは日時、場所、内容、対応、結果、担当の6つ
- 内容はお客さまの言葉をそのまま。要約すると解釈が入る
- 対応が終わってから5分以内に書く。時間が経つと印象が上書きする
- 月に1回だけ見て、同じものが3件以上あるかで仕組みを直す
- 記録を人の評価に使わない。使うと書かれなくなる
個人情報の取り扱いや、度を越えた要求への対応には法令上の決まりがあるとされています。判断に迷う場合は、社内の担当と、個人情報保護委員会や所轄の警察署に確かめてください。
よくある質問
Q. クレームの記録に何を書きますか。 A. 日時、場所、内容、対応、結果、担当の6つです。内容はお客さまの言葉をそのまま書いてください。要約すると解釈が入ります。
Q. 事実と意見をどう分けますか。 A. 「怒っていた」は意見、「声の大きさが上がった」は事実です。見たこと聞いたことが事実、思ったことが意見です。
Q. いつ書きますか。 A. 対応が終わってから5分以内です。時間が経つほど、印象が記憶を上書きします。
Q. お客さまの前でメモを取ってよいですか。 A. 名前や連絡先を書き留める場面以外は、離れてから書いてください。記録されていると感じると、話し方が変わることがあります。
Q. 収まらなかった場合も書きますか。 A. 書いてください。「後日ご連絡することになった」も結果です。空欄にすると、終わったのか続いているのかが分かりません。
Q. 理不尽だったことを書いてよいですか。 A. 感情ではなく事実で書いてください。「大声で30分にわたり同じ内容を繰り返された」は事実です。この記録が本人を守ります。
Q. 名前や連絡先は書くべきですか。 A. 後日の連絡が必要な場合だけにしてください。保管の場所も決めて、誰でも見られる場所に置かないでください。
Q. 保管の期間はどれくらいですか。 A. 法令上の決まりがあるとされています。社内の担当か、個人情報保護委員会の窓口に確かめてください。
Q. 記録をどう分類しますか。 A. 商品、接客、会計、施設の4つで足ります。分類はまとめる人がやるほうが揃います。書く側に求めると面倒になります。
Q. いつ見ますか。 A. 月に1回です。1件ごとに対策を立てると、その場しのぎが積み重なります。同じものが3件以上あるかを見ます。
Q. 3件以上あったらどうしますか。 A. 個人の対応ではなく仕組みの問題です。手順、表示、配置、教育のどれかを直してください。
Q. 必ず報告すべきものはありますか。 A. けがが出た、金銭の要求があった、他のお客さまを巻き込んだ、法令に関わる指摘があったの4つです。上げすぎるほうが安全です。
Q. 責任者がいない時間帯はどうしますか。 A. そのときに誰へ上げるかまで決めておいてください。基準だけ決めて上げ先を決めないと、その場で止まります。
Q. 記録を評価に使ってよいですか。 A. 使わないでください。件数が評価に使われると書かれなくなります。書かれなければ記録そのものが成り立ちません。
Q. 新しい人にも書いてもらうべきですか。 A. 書いてもらってください。分けられていなくても、書いてあるほうが役に立ちます。書式は後から整えます。
Q. 電話で受けたクレームはどう記録しますか。 A. 電話中にメモを取ってください。対面と違って、メモを取っていることが相手に見えません。聞き取れなかった部分はその場で確かめます。
Q. 書き込みや口コミも記録に入れますか。 A. 日時、内容、どこに書かれたかを残してください。店内の記録と同じ指摘が並ぶなら、事実である可能性が高くなります。
Q. 書き込みに返信してよいですか。 A. 社内の方針で決めてください。個人が判断して返信しないでください。
Q. 記録をどう共有しますか。 A. 月に1回、件数と分類だけです。対応した人を名指ししないと先に決めてください。名指しされる場になると書かれなくなります。
Q. 記録が書かれなくなりました。 A. 置き場所が遠い、項目が多い、書いたあと何も起きないの3つを見てください。書いても何も変わらないと分かると、書く理由がなくなります。
Q. 項目を増やしたくなります。 A. 6つまでにしてください。増やしたくなったら、代わりに1つ減らします。書式を作る側が使う側になっていないと、必ず増えます。