売上金の管理|1人で完結させない形
目次
売上金の管理は、問題が起きるまで誰も見ていない業務です。毎日回っているように見えて、手順が1人の頭の中にしかないことがあります。
この記事では、売上金の管理を1人で完結させない形として整理します。疑う話ではなく、扱う人を守る話です。
結論:売上金の管理は1人で完結させない
売上金の管理でいちばん大事なのは、1人で完結させないことです。
数える、記録する、保管する、運ぶ。この4つを全部1人がやる形は、避けます。
ポイントはここです。これは疑うためではなく、扱う人を守るためです。数字が合わなかったときに、1人しか触っていないと、その人が疑われます。
一般には、人数が少ない店ほど1人に集中します。ただ、全部を分けられなくても、確認だけを別の人がやる形なら作れます。
4つの工程に分ける
売上金の管理は、4つの工程に分かれます。
| 工程 | 中身 | 分けたい理由 |
|---|---|---|
| 数える | レジから出して数える | 間違いが起きる |
| 記録する | 金額と差額を書く | 後から確かめる |
| 保管する | 金庫や決めた場所へ | 盗難の対象 |
| 運ぶ | 金融機関へ | 外を持ち歩く |
最低限、数える人と確かめる人を分けます。これだけで、単純な数え間違いがその場で見つかります。
人数が足りない場合は、翌朝に別の人が確かめる形でもかまいません。同じ日でなくても、2人の目が入ることに意味があります。
数える手順を決める
数える手順は、毎回同じにします。
一般には、次の順で数えます。紙幣を金種ごと、硬貨を金種ごと、合計を出す、レジの記録と比べる。
金種ごとに数えるのは、どこで差が出たかを追えるようにするためです。合計だけを数えると、差が出たときに最初からやり直しになります。
数える場所も決めます。売り場から見えない場所です。カウンターの上で数えると、外から金額が分かります。
差額が出たときの扱い
差額が出たときに、その場で何度も数え直さないでください。
決めておくのは3つです。数える回数、記録の仕方、報告する先。
一般には、2回数えて合わなければ記録して報告する形が取られています。3回目以降を数えても、たいてい合いません。
記録に残すのは4つです。日付、差額、担当、その日に起きたこと。溜めると、同じ担当ではなく同じ場面で起きていることが見えます。
差額を個人の責任にしないでください。責任にすると、差額が隠されます。隠されると、原因が分からなくなります。
保管の場所を決める
売上金の保管場所は、決めて、変えないのが基本です。
決めるのは4つです。場所、鍵の管理、入れてよい人、置いておく上限。
| 決めること | 中身 |
|---|---|
| 場所 | 売り場から見えない、固定された場所 |
| 鍵 | 誰が持つか、予備はどこか |
| 入れる人 | 決めた人だけ |
| 上限 | 超えたら入金する額 |
4つ目を決めていない店が多くあります。連休をはさむと、金額が大きく膨らみます。
鍵の予備は、別の場所に保管します。同じ場所に置くと、意味がありません。
入金に行く段取り
金融機関へ持って行く段取りも、決めておきます。
決めるのは4つです。誰が行くか、いつ行くか、どの道を通るか、いくらまで1人で運ぶか。
3つ目が見落とされます。毎日同じ時刻に同じ道を通ると、外から見ている人に分かります。時刻か経路のどちらかを変えます。
金額が大きい場合は、1人で運ばない決まりにしている店もあります。上限を決めて、超えたら2人で行く形にします。
夜間金庫を使う場合も、行く時刻を毎回同じにしないほうが安全です。
記録を残す
売上金の動きは、すべて記録に残します。
残すのは5つです。日付、金額、誰が数えたか、誰が確かめたか、どこへ入れたか。
4つ目が抜けやすい部分です。確かめた人の欄が空いていると、1人で完結した形になります。
記録は、売上日報とは別に持つか、日報の中に欄を作ります。どちらでもかまいませんが、1か所にまとめます。分かれていると、追うときに両方を見ることになります。
現金以外の売上
キャッシュレスの売上は、現金と分けて記録します。
入金される日が違うためです。その日の売上と、口座に入る日がずれます。混ぜて記録すると、どこまで入金されたかが分からなくなります。
一般には、決済の種類ごとに合計を出す形が取られています。レジから出る精算のレシートに載っていることが多くあります。
入金の確認も、誰がやるかを決めます。入っていない分があっても、見ていなければ気づきません。
扱う人を守る形
売上金を扱う人は、疑われる立場にもなります。
守る形は3つです。1人で完結させない、記録を残す、担当を固定しない。
3つ目は、同じ人だけが長く扱わないという意味です。休みが取りにくくなるうえ、差額が出たときに真っ先に見られます。
一般には、月に1回、担当を入れ替える形が取られています。人数が足りない店では、確かめる人だけでも入れ替えます。
手順を1枚にする
売上金の管理の手順は、1枚にまとめます。
書くのは4つです。数える手順、差額が出たときの対応、保管の場所と鍵、入金の段取り。
置く場所は、数える場所のそばです。事務所の棚の中にあると、見られません。
新しく責任者になる人には、この1枚を最初に渡します。手順が頭の中にしかないと、引き継ぎのたびに変わります。
保存の期間
売上金に関わる記録は、帳簿書類として保存の期間が定められている場合があります。
金額が記載された記録は、税務上の扱いを受けることがあるとされています。店の判断で処分しないでください。
保存の期間や方法に迷う場合は、社内の担当か、顧問の税理士、所轄の税務署に確かめてください。
レジ締めから入金までをつなげる
売上金の管理は、レジ締めから入金までが1本の流れです。
途中で切れると、そこで止まります。「締めたけれど金庫に入れていない」「金庫にあるけれど入金していない」が起きます。
一般には、どこまで進んだかを記録に残す形が取られています。締めた、保管した、入金した。それぞれに日付と担当を書きます。
止まりやすいのは、連休や、責任者が休みの日です。あらかじめ、そのときの扱いを決めておきます。
金庫の中を定期的に数える
金庫に入っている現金は、定期的に数えます。
一般には、週に1回が目安とされています。毎日入れて、月に1回しか数えないと、差が出たときにどの日か分かりません。
数えるのは、入れた人以外が望ましい形です。人数が足りない場合は、記録と突き合わせるだけでもかまいません。
数えた結果は記録に残します。合っていた日も残します。合っていた記録があるから、合わなかった日が分かります。
現金を持ち歩くときの備え
現金を持ち歩く場面では、見えない形にします。
一般には、専用の袋や鞄を使わないという考え方もあります。いかにも現金を運んでいる形は、外から分かります。
持ち歩くときの決めごとは3つです。寄り道をしない、携帯を手に持たない、声をかけられても立ち止まらない。
3つ目が大事です。道を聞かれる形で足を止めさせる手口があります。断って進んでよい、と先に伝えておきます。
責任者が休む日の扱い
売上金の管理は、責任者が休む日にいちばん止まります。
決めておくのは3つです。誰が代わりに数えるか、保管まででよいのか入金まで行くのか、鍵をどう渡すか。
3つ目が難しい部分です。鍵を手渡しで回すと、誰が持っているか分からなくなります。受け渡しの記録を残す形にします。
一般には、責任者が休む日は保管までという線が取られています。入金は戻ってからで足ります。ただし、保管の上限を超えないかを先に見ます。
引き継ぎのときに確かめる
売上金の管理を引き継ぐときは、4つ確かめます。
金庫の中の金額、鍵の本数、記録の場所、入金の予定。口頭で引き継ぐと、必ずどれかが抜けます。
一般には、引き継ぐ日に2人で数える形が取られています。数えた金額を両方が記録に書いて、それを起点にします。
鍵の本数は、予備も含めて数えます。何本あるか分からないまま引き継ぐと、その後ずっと分かりません。
金額の上限を決める意味
売上金の保管に上限を置く意味は、2つあります。
1つは盗難の被害を小さくすること。もう1つは、入金の頻度を決めることです。
上限が無いと、「忙しいから明日でいい」が続きます。上限があると、超えた時点で行く理由ができます。
決め方は、1日の売上の2日分が1つの目安です。連休の前は、事前に入金して減らしておきます。
まとめ
売上金の管理は、1人で完結させないことが軸です。
- 数える、記録する、保管する、運ぶの4つを分ける
- 最低限、数える人と確かめる人を分ける
- 差額は2回数えて合わなければ記録して報告。個人の責任にしない
- 保管は場所、鍵、入れる人、上限の4つを決める
- 運ぶときは毎日同じ時刻に同じ道を通らない
金額が記載された記録は、保存の期間が定められている場合があります。扱いに迷う場合は、社内の担当か、顧問の税理士、所轄の税務署に確かめてください。
よくある質問
Q. なぜ1人で完結させてはいけないのですか。 A. 疑うためではなく、扱う人を守るためです。数字が合わなかったときに、1人しか触っていないとその人が疑われます。
Q. 人数が足りません。 A. 全部を分けられなくても、確認だけを別の人がやる形なら作れます。翌朝に別の人が確かめる形でもかまいません。
Q. 数える手順はどうしますか。 A. 紙幣を金種ごと、硬貨を金種ごと、合計、レジと比べるの順です。合計だけを数えると、差が出たときに最初からやり直しになります。
Q. どこで数えますか。 A. 売り場から見えない場所です。カウンターの上で数えると、外から金額が分かります。
Q. 差額が出ました。 A. 2回数えて合わなければ記録して報告してください。3回目以降を数えても、たいてい合いません。
Q. 差額を担当の責任にしてよいですか。 A. しないでください。責任にすると、差額が隠されます。隠されると原因が分からなくなります。
Q. 保管の場所で何を決めますか。 A. 場所、鍵の管理、入れてよい人、置いておく上限の4つです。上限を決めていない店が多くあります。連休で膨らみます。
Q. 鍵の予備はどこに置きますか。 A. 別の場所に保管してください。同じ場所に置くと、意味がありません。
Q. 入金に行く段取りで気をつけることは。 A. 毎日同じ時刻に同じ道を通らないでください。外から見ている人に分かります。時刻か経路のどちらかを変えます。
Q. 1人で運んでよいですか。 A. 上限を決めてください。超えたら2人で行く形にしている店もあります。夜間金庫も時刻を変えます。
Q. 記録に何を残しますか。 A. 日付、金額、誰が数えたか、誰が確かめたか、どこへ入れたかの5つです。確かめた人の欄が空いていると、1人で完結した形になります。
Q. キャッシュレスの売上も一緒に記録しますか。 A. 分けて記録してください。入金される日が違います。混ぜると、どこまで入金されたかが分からなくなります。
Q. 入金の確認は誰がやりますか。 A. 決めておいてください。入っていない分があっても、見ていなければ気づきません。
Q. 担当をずっと同じ人にしてよいですか。 A. 入れ替えてください。休みが取りにくくなるうえ、差額が出たときに真っ先に見られます。月に1回が目安です。
Q. どれくらい保存しますか。 A. 帳簿書類として期間が定められている場合があります。顧問の税理士か所轄の税務署に確かめてください。店の判断で処分しないでください。
Q. レジ締めから入金まで、どこで止まりますか。 A. 連休や、責任者が休みの日です。「締めたけれど金庫に入れていない」が起きます。どこまで進んだかを記録に残してください。
Q. 金庫の中をいつ数えますか。 A. 週に1回が目安です。月に1回しか数えないと、差が出たときにどの日か分かりません。合っていた日も記録します。
Q. 現金を持ち歩くときの決めごとは。 A. 寄り道をしない、携帯を手に持たない、声をかけられても立ち止まらないの3つです。道を聞く形で足を止めさせる手口があります。
Q. 責任者が休む日はどうしますか。 A. 保管までという線が一般的です。入金は戻ってからで足ります。ただし保管の上限を超えないかを先に見てください。
Q. 鍵をどう渡しますか。 A. 受け渡しの記録を残してください。手渡しで回すと、誰が持っているか分からなくなります。
Q. 引き継ぐときに何を確かめますか。 A. 金庫の中の金額、鍵の本数、記録の場所、入金の予定の4つです。口頭で引き継ぐと必ずどれかが抜けます。
Q. 引き継ぐ日に何をしますか。 A. 2人で数えてください。数えた金額を両方が記録に書いて、それを起点にします。鍵は予備も含めて数えます。
Q. 保管の上限をどう決めますか。 A. 1日の売上の2日分が1つの目安です。上限が無いと「忙しいから明日でいい」が続きます。連休前は事前に入金して減らします。
Q. 手順を1枚にまとめるとしたら何を書きますか。 A. 数える手順、差額が出たときの対応、保管の場所と鍵、入金の段取りの4つです。数える場所のそばに置いてください。
Q. 新しく責任者になる人に何を渡しますか。 A. その1枚です。手順が頭の中にしかないと、引き継ぎのたびに変わります。