クレーム・トラブル実務2026.08.29 公開KU-15

店の防犯の備え|見えている形が効く

目次

防犯の備えは、何も起きていないあいだは効果が見えないため、後回しになりやすい部分です。起きてから見直すことになり、そのときには被害が出ています。

この記事では、店の防犯の備えを、道具ではなく日ごろの動きから整理します。大きな設備投資の話ではありません。

設備の点検表そのものを探している場合は、商い屋にそろっています。

結論:防犯の備えは「見えている形」が効く

防犯の備えでいちばん効くのは、見られていると分かる形です。

カメラがあること、従業員が売り場にいること、声をかけられること。どれも、実際に捕まえる力ではなく、やりにくくする力です。

ポイントはここです。防ぐことと、捕まえることは別の話です。店の備えは、防ぐほうに寄せるほうが安全に回ります。

一般には、設備を増やす方向に手が入ります。ただ、設備があっても人がいない売り場は狙われます。動きと組にして初めて効きます。

見えている形4つカメラ掲示も出す売り場にいる声かけいちばん効く表示古くしない
カメラ・人・声かけ・表示という4つの見えている形を並べた層の図

声をかけることが最大の備え

万引きの備えとして、いちばん確実なのは声をかけることです。

疑って声をかけるのではありません。「いらっしゃいませ」「何かお探しですか」という普通の接客です。

一般には、声をかけられた売り場は狙われにくいとされています。顔を見られた、覚えられたと感じるためです。

逆に、誰も売り場にいない時間帯が狙われます。レジに全員が集まる時間、バックヤードに全員が入る時間。ここを作らないようにします。

死角を知っておく

店には、必ず見えない場所があります。

一般には、次の4つが死角になります。

場所理由
背の高い棚の裏通路から見えない
試着室の周り中が見えない
店の隅レジから遠い
柱の陰視線が通らない

死角そのものを無くすのは難しいので、知っておいて、通る回数を増やす形にします。

死角になる4か所場所理由棚の裏通路から見えない試着室中が見えない店の隅レジから遠い柱の陰視線が通らない
棚の裏・試着室・店の隅・柱の陰という4つの死角を並べた表

ミラーやカメラを足す方法もあります。ただし、カメラの映像を誰が見てよいかは決めておきます。

カメラの扱い

防犯カメラは、設置と運用の両方に決まりがあります。

一般には、設置していることを掲示する形が取られています。掲示があること自体が備えになります。

映像の取り扱いには注意が要ります。個人情報を含むため、保存の期間と、見てよい人を決めておきます。

なお、防犯カメラの設置や映像の取り扱いには法令上の決まりがあるとされています。判断に迷う場合は、社内の担当と、個人情報保護委員会の窓口に確かめてください。

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現金の置き方

現金は、置き方で狙われ方が変わります。

決めておくのは4つです。レジに置く上限、回収する頻度、保管する場所、運ぶ経路。

決めること目安
レジの上限超えたら回収する額を決める
回収の頻度忙しい日は回数を増やす
保管の場所売り場から見えない場所
運ぶ経路毎回同じ道を通らない

4つ目が見落とされます。毎日同じ時刻に同じ道で運ぶと、外から見ている人に分かります。

レジを離れるときは、引き出しを閉めます。開けたまま離れる形が、いちばん多い被害の入口です。

閉店後と開店前が狙われる

被害は、営業中より閉店後と開店前に起きることがあります。

人が少なく、お金が集まっていて、外から見えにくい時間帯です。

一般には、1人で閉めない、1人で開けない形が取られています。人数が足りない店では、せめて現金を扱う作業だけは2人でという線を引きます。

閉店後に外から見える場所に現金を置かないでください。レジの引き出しを開けたまま帰る店もあります。中に何も無いことを見せる意味がありますが、その場合は本当に空にします。

狙われる時間帯4段1人が少ない閉店後と開店前2お金が集ま締めのあと3外から見えないシャッターの中42人で現金の作業だけでも
人が少ない・お金が集まる・外から見えない・2人でという4段の時間帯の備えのフロー

従業員が1人になる時間

1人になる時間帯は、備えの中身が変わります。

決めておくのは3つです。レジを離れてよい範囲、異常があったときの連絡先、無理をしない線。

3つ目が大事です。金銭を要求されたら、抵抗しないでください。現金は保険や補填で戻ることがありますが、けがは戻りません。

一般には、「渡してよい」と先に伝えておく形が取られています。言われていないと、その場で守ろうとします。

異常があったときの連絡先は、紙に書いてレジのそばに貼ります。携帯を取り出せない場面があります。

表示と掲示

防犯の表示は、目に入る場所に出します。

一般には、次の3つが使われます。カメラ作動中の掲示、注意の呼びかけ、巡回中の表示。

どれも、貼りっぱなしにすると読まれなくなります。日焼けした古い掲示は、かえって管理されていない印象を与えます。

なお、掲示が避難の経路や消火設備の表示を隠さないようにしてください。位置に迷う場合は、所轄の消防署に確かめてください。

記録に残す

防犯に関わる出来事は、被害が無くても記録に残します。

残すのは4つです。日時、場所、何があったか、対応。

「商品が無くなっていた」「不審な動きがあった」も記録です。被害届を出すかどうかとは別に、記録は残します。

溜まると、時間帯と場所が見えます。同じ売り場が並ぶなら、そこに手を打ちます。

記録に書く4つ書くこと中身日時いつ起きたか場所どの売り場か内容被害が無くても書く対応誰に伝えたか
日時・場所・内容・対応という4つの記録項目を並べた表

警察への連絡

万引きや被害があった場合の警察への連絡の線を決めておきます。

一般には、現場で取り押さえない形が取られています。抵抗されてけがをする場面があり、店側が加害になることもあります。

声をかけるかどうか、どこまで追うか、いつ連絡するか。この3つは店で決めておく必要があります。

なお、どこまでの行為が許されるかには法令上の判断が関わります。対応の線引きは、社内の決まりに従い、所轄の警察署に確かめてください。

設備を点検する

防犯の設備は、動いているかを定期的に確かめます。

確かめるのは4つです。カメラが録画されているか、施錠がかかるか、照明が切れていないか、警報が鳴るか。

1つ目が抜けやすい部分です。カメラが付いていても、録画が止まっていることがあります。必要になったときに初めて気づきます。

一般には、月に1回、点検の表に沿って確かめる形が取られています。表があれば、担当が変わっても同じ項目を見ます。

従業員による被害への備え

防犯の備えは、外から来る人だけが対象ではありません。

内部で起きる被害は、外からのものより見つかりにくいという特徴があります。日ごろの業務のなかで起きるので、異常として見えません。

一般には、仕組みで防ぐ形が取られています。疑う形にすると、職場の空気が壊れます。

仕組み中身
1人で完結させない現金の確認は2人で
記録が残る形にする誰がいつ操作したか
定期的に数える在庫と現金の両方
担当を固定しない同じ人だけが扱わない

4つ目は、本人を守る意味もあります。数字が合わないときに、1人しか触っていないと疑われることになります。

仕組みで防ぐ4つ仕組み中身2人で現金の確認を分ける記録誰がいつ操作したか定期的に数える在庫と現金の両方担当を回す本人を守る意味もある
2人で・記録・定期的に数える・担当を回すという4つの仕組みを並べた表

不審な人への声のかけ方

不審に見える人がいても、疑う形で声をかけないでください。

一般には、普通の接客と同じ声かけをします。「何かお探しでしょうか」で足ります。

疑う形で声をかけると、人違いだったときに大きな苦情になります。また、相手が抵抗する場面につながります。

複数の従業員で見る形にします。1人で追いかけないでください。声をかけたこと自体を記録に残します。

通報と記録の線

被害があったときに、警察へ通報するかどうかの線を決めておきます。

一般には、次の3つで分けられます。被害額、被害の内容、繰り返しかどうか。

決めていないと、その場の判断で通報するかどうかが変わります。同じ内容でも、担当によって対応が違う形になります。

通報しない場合も、記録は必ず残します。繰り返されている証拠になります。

迷惑行為への備え

防犯の備えには、盗難以外の迷惑行為も含まれます。

長時間の居座り、大声、他のお客さまへの声かけ。どれも被害額では測れませんが、客足に影響します。

一般には、1人で対応しない形が取られています。声をかける人と、周りを見る人を分けます。

対応の線も決めておきます。どこまでは様子を見るか、いつ声をかけるか、いつ警察に連絡するか。決めていないと、その場にいた人が1人で判断することになります。

迷惑行為への4段1様子を見るどこまで見るか決める2声をかける1人でやらない3責任者を呼判断を上げ4警察線を先に決めておく
様子を見る・声をかける・責任者を呼ぶ・警察という4段の対応のフロー

備えを1枚にまとめる

防犯の備えは、1枚にまとめて共有します。

書くのは4つです。死角の場所、現金の決めごと、異常時の連絡先、やらないこと。

4つ目を必ず入れてください。取り押さえない、1人で追わない、金銭を要求されたら渡す。やることより、やらないことのほうが本人を守ります。

置く場所は、レジのそばと事務所です。年に1回読み合わせて、内容を確かめます。

見直すきっかけを決める

防犯の備えは、きっかけを決めておかないと何年も変わりません。

一般には、次の3つがきっかけになります。被害や不審な出来事があったとき、売り場の配置を変えたとき、年に1回の点検のとき。

2つ目を見落としがちです。棚の高さや位置を変えると、死角の場所が変わります。配置を変えた日に、もう一度歩いて確かめます。

まとめ

防犯の備えは、見えている形が効きます。

  • いちばん確実なのは声をかけること。普通の接客で足りる
  • 死角は無くせない。知っておいて、通る回数を増やす
  • 現金はレジの上限、回収の頻度、保管の場所、運ぶ経路を決める
  • 狙われるのは閉店後と開店前。現金を扱う作業だけは2人で
  • 金銭を要求されたら抵抗しない。渡してよいと先に伝えておく

防犯カメラの映像の取り扱いや、万引きへの対応の線引きには法令上の決まりがあるとされています。判断に迷う場合は、社内の担当と、所轄の警察署や個人情報保護委員会の窓口に確かめてください。

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設備の点検表をまとめて整えるなら、商い屋が近道です。

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よくある質問

Q. 防犯でいちばん効くのは何ですか。 A. 声をかけることです。疑って声をかけるのではなく、普通の接客で足ります。顔を見られたと感じるだけで、狙われにくくなります。

Q. 誰も売り場にいない時間ができてしまいます。 A. その時間が狙われます。レジに全員が集まる時間、バックヤードに全員が入る時間を作らないでください。

Q. 死角をどうしますか。 A. 無くすのは難しいので、知っておいて通る回数を増やしてください。棚の裏、試着室の周り、店の隅、柱の陰が代表です。

Q. カメラを付ければ安心ですか。 A. 設備があっても人がいない売り場は狙われます。動きと組にして初めて効きます。掲示を出すこと自体も備えになります。

Q. カメラの映像を誰が見てよいですか。 A. 先に決めておいてください。個人情報を含むため、保存の期間と見てよい人を決めます。取り扱いには決まりがあります。

Q. 現金をどう置きますか。 A. レジに置く上限、回収の頻度、保管の場所、運ぶ経路の4つを決めてください。毎日同じ時刻に同じ道で運ばないでください。

Q. レジを離れるときは。 A. 引き出しを閉めてください。開けたまま離れる形が、いちばん多い被害の入口です。

Q. 閉店後にレジを開けたままにしてよいですか。 A. 中に何も無いことを見せる意味はあります。その場合は本当に空にしてください。

Q. 1人で閉める日があります。 A. 現金を扱う作業だけは2人でという線を引いてください。人が少なく、お金が集まっていて、外から見えにくい時間帯です。

Q. 金銭を要求されたらどうしますか。 A. 抵抗しないでください。現金は戻ることがありますが、けがは戻りません。「渡してよい」と先に伝えておいてください。

Q. 連絡先をどこに置きますか。 A. 紙に書いてレジのそばに貼ってください。携帯を取り出せない場面があります。

Q. 万引きを見つけたら取り押さえますか。 A. 現場で取り押さえない形が一般的です。抵抗されてけがをする場面があります。線引きは所轄の警察署に確かめてください。

Q. 被害が無くても記録しますか。 A. してください。「商品が無くなっていた」「不審な動きがあった」も記録です。溜まると時間帯と場所が見えます。

Q. 設備の点検はどれくらいやりますか。 A. 月に1回、表に沿って確かめてください。カメラが付いていても録画が止まっていることがあります。

Q. 掲示はどこに貼ってもよいですか。 A. 避難の経路や消火設備の表示を隠さないようにしてください。位置に迷う場合は所轄の消防署に確かめてください。

Q. 内部で起きる被害にどう備えますか。 A. 疑う形ではなく、仕組みで防いでください。1人で完結させない、記録が残る形にする、定期的に数える、担当を固定しないの4つです。

Q. 担当を回すのはなぜですか。 A. 本人を守る意味もあります。数字が合わないときに、1人しか触っていないと疑われることになります。

Q. 不審に見える人にどう声をかけますか。 A. 普通の接客と同じで足ります。疑う形で声をかけると、人違いだったときに大きな苦情になります。

Q. 追いかけてよいですか。 A. 1人で追いかけないでください。声をかけたこと自体を記録に残します。

Q. 迷惑行為にはどう備えますか。 A. 1人で対応しないでください。どこまで様子を見るか、いつ声をかけるか、いつ警察に連絡するかを先に決めます。

Q. 備えを1枚にまとめるとしたら何を書きますか。 A. 死角の場所、現金の決めごと、異常時の連絡先、やらないことの4つです。やらないことを必ず入れてください。

Q. なぜ「やらないこと」が大事なのですか。 A. 取り押さえない、1人で追わない、金銭を要求されたら渡す。やることより、やらないことのほうが本人を守ります。

Q. 備えを見直すきっかけがありません。 A. 被害や不審な出来事、売り場の配置を変えたとき、年に1回の点検の3つです。棚の位置を変えると死角の場所が変わります。