クレーム対応の基本手順|一次対応でやること
目次
クレーム対応は、手順が決まっていないと、受けた人の性格や経験でばらつきます。落ち着いて聞ける人もいれば、謝りすぎて話を長くしてしまう人もいます。ばらつきそのものが、あとで別の苦情になることがあります。
この記事では、クレーム対応の一次対応を手順に分けます。一次対応とは、受けたその場でやることです。解決までを1人で背負う必要はなく、どこまでやって誰に渡すかを決めておくのが要点になります。
結論:クレーム対応の一次対応は「聞く・詫びる・記録する・渡す」
クレーム対応で最初にやることは、解決策を出すことではありません。聞いて、事実の部分を詫びて、記録し、判断できる人に渡す。この4つが一次対応です。
ポイントはここです。その場で対応を約束しないことが、いちばん効きます。返金、交換、訪問。約束したあとで店の方針と違うと分かると、二度目の説明が必要になり、話が大きくなります。
一般には、クレームは次の3つに分かれます。どれかによって、渡す相手が変わります。
| 種類 | 中身 | 渡す先 |
|---|---|---|
| 商品・サービスへの指摘 | 不良、品切れ、味、汚れ | 店長、担当部門 |
| 応対への指摘 | 態度、言葉遣い、待ち時間 | 店長 |
| 要求が過大なもの | 金銭、土下座、私的な連絡先 | 店長、必要なら本部 |
3つ目はカスタマーハラスメントとはで分けて扱います。
クレーム対応の手順1:聞く
クレーム対応の最初は、最後まで聞くことです。途中で説明を挟むと、話が戻ります。遮られたこと自体が、新しい不満になるためです。
聞くときにやることは3つあります。
- 相づちを打って、聞いている姿勢を示す
- 事実と、感じたことを分けてメモする
- 5W(いつ、どこで、何が、誰が、どうした)をそろえる
メモを取ることは、失礼にはなりません。「正確に承りたいので、書き留めながらお伺いします」とひと言添えると、むしろ丁寧に受け取られます。
場所も大事です。他のお客様に聞こえる場所で続けると、双方が引きづらくなります。席や別室に移せるなら移すほうが、収まりが早くなります。
クレーム対応の手順2:詫びる
クレーム対応で謝る場面では、何に対して謝るかを分けるのが要点です。原因がまだ分からない段階で全面的に謝ると、責任を認めた形になります。
| 段階 | 謝る対象 | 言い方 |
|---|---|---|
| 原因が不明 | 不快な思いをさせたこと | ご不快な思いをおかけし申し訳ございません |
| 事実が確定 | 起きたこと | お待たせしてしまい申し訳ございません |
| 非が確定 | 店の落ち度 | こちらの確認不足でした。申し訳ございません |
原因が分からない段階でも、お客様が困っている事実そのものは詫びられます。「そのようなことがあったのですね、申し訳ございません」は、事実を認めずに気持ちに応える形になります。
逆に、明らかにこちらの非がある場面で言い訳から入ると、話が長くなります。非がはっきりしているなら、先に認めるほうが短く収まります。謝り方の組み立ては接客での謝罪の言葉で詳しく書きました。
クレーム対応の手順3:記録する
クレーム対応で抜けやすいのが記録です。その場が収まると、書かずに終わることがあります。書かないと、同じことが繰り返されても気づけません。
記録に残す項目は、次の形が扱いやすくなります。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 日時 | 受けた日と時刻 |
| 受けた人 | 自分の名前 |
| お客様 | 名前、連絡先(聞ける範囲で) |
| 内容 | 事実として聞いたこと |
| その場の対応 | 何を伝え、何を約束していないか |
| 引き継ぎ先 | 誰にいつ渡したか |
ポイントはここです。「何を約束していないか」を書いておくと、あとで引き継いだ人が助かります。約束していないことを記録に残す、という発想はあまり一般的ではありませんが、行き違いを防ぐのに効きます。
記録の様式が店に無い場合は、配布されているクレーム対応記録の様式を下敷きにできます。
クレーム対応の手順4:渡す
クレーム対応の一次対応は、渡すところで終わります。1人で抱えないのが原則です。
渡す判断は早いほうが収まります。目安としては、次のいずれかに当たれば責任者に代わります。
- 金銭の話が出た(返金、賠償、値引き)
- 対応の可否を判断できない
- 同じ説明を繰り返しても収まらない
- 個人への要求が出た(謝罪の強要、連絡先、私的な対応)
- 大声や暴言が出た
代わるときは、引き継ぐ前に内容を短くまとめて渡します。お客様に一から話し直させると、それ自体が不満になります。「お待たせいたしました、店長の○○です。お話は伺っております」と始められる状態にしておきます。
クレーム対応のあと、受けた本人をどう戻すか
クレーム対応で見落とされやすいのが、受けた本人のことです。強い言葉を受けたあとは、売り場に戻ってもしばらく動けません。
一般には、その場ですぐ通常業務に戻さないほうが、あとに残りません。短くても休憩を挟む、持ち場を変える、といった対応ができます。
受けた内容を店で共有するときも、個人の落ち度として扱わないことが大事になります。応対への指摘であっても、手順や決まりが無かったことが原因である場合が多くあります。人ではなく仕組みのほうを直すと、次の人が同じ思いをしません。
苦手意識が残る場合の戻し方は接客が苦手なときにも書きました。
クレーム対応で、話を前に進める言い方
クレーム対応では、聞くだけでは話が終わりません。どこかで段階を進める必要があります。そのための言い方を持っておくと、長引きにくくなります。
| 目的 | 言い方 |
|---|---|
| 内容を区切る | お伺いした内容は○○ということでよろしいでしょうか |
| 事実を確かめる | 恐れ入りますが、いつごろのことかお聞かせいただけますか |
| 場所を変える | 詳しくお伺いしたいので、あちらの席でよろしいでしょうか |
| 人を代える | 責任者の者からご説明いたします |
| 時間を区切る | お調べのうえ、○日までにご連絡いたします |
いちばん効くのが、内容を区切る言い方です。聞いた内容を戻すと、お客様は「伝わった」と感じます。伝わっていないと思われている間は、同じ話が繰り返されます。
時間で切ろうとすると角が立ちますが、内容で区切ると自然に進みます。「そろそろ」ではなく「○○ということですね」で段階を上げます。
折り返しにする場合は、いつまでに連絡するかを明示します。「後日」ではなく日付で言うほうが、待つ側の不安が減ります。期限を言ったら必ず守る必要があるので、余裕を持った日にします。
クレーム対応は、店として形を決めておくと個人差が消える
クレーム対応は、受けた人の経験によって差が出やすい業務です。店として形を決めておくと、誰が受けても同じ水準になります。
決めておきたいのは、次の4つです。
| 決めること | 内容 |
|---|---|
| 誰に渡すか | 責任者の名前と、不在時の連絡先 |
| どこまで答えてよいか | その場で答えられる範囲の線 |
| 記録の様式 | 何を書くか、どこに残すか |
| 渡す基準 | 金銭の話、大声、判断できない内容 |
とくに渡す基準が決まっていないと、担当者は「まだ自分が対応すべきか」を迷いながら聞き続けることになります。基準があれば、迷わずに代われます。
記録の様式は、無ければ作るところからになります。配布されているクレーム対応記録の様式を下敷きにすると早く整います。様式があると、書く項目を考えずに済むので、忙しい日でも残ります。
決めた内容は、新しく入った人に最初に渡すほうが安全です。クレームは経験の浅い人が最初に受けることも多く、そのときに基準が無いと1人で抱えます。
クレーム対応で、言ってはいけないこと
クレーム対応では、収めたい気持ちから出やすいものの、あとで戻せなくなる言葉があります。一次対応の段階では避けます。
| 言いがちな形 | 起きること |
|---|---|
| 返金いたします | 店の方針と違えば二度目の説明が要る |
| 二度とありません | 再発時に一段強い苦情になる |
| 私の責任です | 個人の問題として扱われる |
| そういう決まりですので | 説明を放棄した形に見える |
| 他のお客様からは言われません | 相手を否定した形になる |
下の2つは、事実であっても言わないほうが収まります。決まりを伝えるのは必要ですが、「決まりですので」だけで終わると、なぜそうなのかが伝わりません。理由を短く添えると受け取られ方が変わります。
「他のお客様からは」は、指摘そのものを否定する形になります。件数の多い少ないは、指摘が正しいかどうかと関係ありません。ここを言うと、話が事実関係から感情へ移ります。
反対に、言っておいたほうがよいこともあります。「お知らせいただきありがとうございます」です。指摘は店にとって材料になるので、受け取ったことを伝えると、その場の空気が変わることがあります。
クレーム対応は、種類によって渡す先が変わる
クレーム対応では、内容によってその先の扱いが変わります。渡す相手を間違えると、戻ってくるまでに時間がかかります。
| 内容 | 渡す先 | 急ぐか |
|---|---|---|
| 商品の不具合 | 店長、仕入の担当 | 同種の在庫を止める必要があれば急ぐ |
| 食品の異物・体調不良 | 店長。保健所への連絡が要る場合がある | 最優先 |
| 応対への指摘 | 店長 | 当日中 |
| 施設の不備(床、設備) | 店長、設備の担当 | 危険があれば即時 |
| 金銭の相違 | 店長 | 当日中。記録を残す |
| 過大な要求 | 店長、必要なら本部 | 即時 |
食品に関するものは扱いが別です。異物の混入や体調不良の申し出は、同じ商品が売られ続けている可能性があるため、まず販売を止める判断が要ります。現物は捨てずに保管します。
施設の不備も、危険があれば即時です。濡れた床や破損した什器は、次のお客様にも起きます。指摘を受けた時点で現場を確かめるのが先になります。
金銭の相違は、記録が要になります。レシート、取引履歴、防犯カメラ。その場で確かめられなくても、確かめる材料がどこにあるかを押さえておくと、あとで戻せます。レジのずれとして出ていないかはレジが合わないときの探し方が使えます。
クレーム対応は、受ける前に確かめておくことがある
クレーム対応は、受けてから考えると遅くなります。受ける前に確かめておけることが3つあります。
- 責任者が誰で、不在時は誰に連絡するか
- 記録はどこに残すか
- 自分の判断で答えてよい範囲はどこまでか
このうち、3が決まっていないのがいちばん困る形です。答えてよいか分からないまま聞き続けることになり、時間が延びます。
決まりが無い場合は、「決まっていない」と分かっているだけでも違います。迷ったら答えないという基準に倒せるためです。
確かめるのは一度で済みます。入ったばかりの時期に聞いておくと、最初のクレームで慌てずに済みます。
よくある質問
クレーム対応でまず謝るべきですか
原因が分からない段階でも、不快な思いをさせたことには謝れます。ただし、こちらの非を認める形にはしないほうが安全です。「ご不快な思いをおかけし」と「こちらの落ち度で」は分けて使います。
話が長いときはどう切り上げますか
要点を戻して確認する形が使えます。「お伺いした内容は○○ということでよろしいでしょうか」と区切ると、話の段階が進みます。時間で切るより、内容で区切るほうが角が立ちません。
自分に非がないクレームでも謝りますか
店として受ける以上、お客様が困っている事実には応えます。自分個人の非を認める必要はありません。事実関係は記録に残し、判断は責任者に渡します。
記録は毎回残すのですか
その場で収まったものも残すほうが役に立ちます。件数がたまって初めて、繰り返し起きている問題が見えます。1件では気づけないものが、記録にすると分かります。
電話でクレームを受けたときは違いますか
手順は同じですが、その場で約束しないことがより重要になります。電話は記録が残らないぶん、言った言わないになりやすいためです。折り返しの形にして、記録を整えてから対応できます。受け方は店舗の電話応対にまとめました。
対応した内容はどこまで共有しますか
事実と、約束していないことを共有します。受けた人の感想や評価は分けて扱うと、あとで読む人が混乱しません。
その場で解決したものも報告しますか
報告するほうが役に立ちます。同じ内容が繰り返し起きているかは、記録がないと分かりません。1件では気づけないものが、並べると見えます。
対応したあと、お客様に連絡は要りますか
調べると伝えた場合は必要です。期限を言ったなら必ず守ります。分からないままでも、途中経過を伝えるほうが収まります。
聞いている途中でメモを取るのは失礼ですか
失礼にはなりません。「正確に承りたいので書き留めます」とひと言添えると、丁寧に受け取られます。記録が残ることで、あとの対応も確かになります。
自分が原因のクレームでも記録しますか
記録します。個人の落ち度に見える場面でも、手順が無かったことが原因である場合が多く、記録が残っていないと仕組みのほうを直せません。
まとめ
クレーム対応の一次対応は、聞く、詫びる、記録する、渡すの4つです。解決策をその場で出す必要はなく、対応を約束しないことがいちばん効きます。
謝る場面では、何に対して謝るかを段階で分けます。原因が不明なら不快な思いに、事実が確定したら起きたことに、非が確定したら落ち度に。分けておくと、あとで戻せなくなる形を避けられます。
記録には「何を約束していないか」まで書きます。金銭の話、判断できない内容、個人への要求、大声が出た場合は、早めに責任者へ渡します。受けた本人をすぐ通常業務に戻さないことも、店としてやることに入ります。