店舗の電話応対|受け方と取次ぎの手順
目次
店舗の電話応対は、接客の中でも後回しにされやすい部分です。売り場の動きは教わっても、電話は「出てみて覚える」になりがちで、最初の数回で戸惑うことが多くあります。
電話が難しいのは、相手の顔が見えないことと、こちらの手が止まることの2つが重なるためです。この記事では、電話応対を受ける・聞く・取り次ぐ・残すの4段階に分けて、その場で使える形にまとめます。
結論:店舗の電話応対は、受ける前の準備でほぼ決まる
店舗の電話応対でつまずく原因の多くは、話し方ではなく準備が無いことです。メモが手元にない、店名の言い方が決まっていない、担当が誰か分からない。この状態で出ると、聞き返しが増えます。
ポイントはここです。受話器を取る前に、メモと筆記具が手元にあるかどうかで結果が変わります。電話機のそばにメモを固定で置いておくだけで、聞き直しが減ります。
一般には、電話応対は3コール以内に取るのが目安とされています。超えた場合は「お待たせいたしました」を添えます。売り場が忙しいときは遅れることもあるので、取れなかったことより、遅れたと伝えないことのほうが印象に残ります。
店舗の電話応対1:受ける
電話応対の最初のひと言は、店名を名乗る形にします。個人名まで名乗るかは店によって違うので、決まりがあればそれに従います。
- お電話ありがとうございます。○○店でございます
- (3コール超)お待たせいたしました。○○店でございます
名乗りで迷いやすいのは、店名を早口で言ってしまうことです。相手は聞き取れず、「そちらは○○さんですか」と確認が入ります。店名だけはゆっくり言う、と決めておくと確認が減ります。
店舗の電話応対2:聞く
用件を聞く段階では、メモに残す項目をあらかじめ決めておくと抜けません。最低限、次の5つがそろえば取次ぎができます。
| 項目 | 聞き方 |
|---|---|
| 相手の名前 | 恐れ入りますが、お名前を伺えますか |
| 会社名 | どちらの○○様でいらっしゃいますか |
| 用件 | ご用件を承ります |
| 誰宛か | 担当の者をお呼びいたします |
| 連絡先 | 折り返しのお電話番号を伺えますか |
聞き取れなかったときは、その場で確認します。分からないまま進めると、取り次いだ先でもう一度聞くことになります。「恐れ入りますが、もう一度お伺いしてもよろしいでしょうか」で足ります。
名前や番号は復唱します。数字は特に聞き間違いが起きやすいので、区切って戻すと確実になります。
店舗の電話応対3:取り次ぐ
取次ぎで間違えやすいのが、身内への敬語です。お客様や取引先に対しては、店の人間に敬語を使いません。
| 誤りやすい形 | 整えた形 |
|---|---|
| 店長は席を外されています | 店長の○○は席を外しております |
| 担当者がおっしゃっていました | 担当の者が申しておりました |
| ○○さんにお伝えします | ○○に申し伝えます |
| ただいま参られます | ただいままいります |
社内では店長に敬語を使っていても、電話では切り替えます。慣れるまで間違えやすい部分ですが、「○○は」と呼び捨てで始めると決めておくと、そのあとの動詞も自然に謙譲語になります。敬語の分け方は接客の敬語一覧にまとめました。
保留にするときは、時間の目安を添えると印象が変わります。長くなりそうなら一度戻って、折り返しを提案する形にできます。
店舗の電話応対4:残す
電話応対で最後に残るのが、伝言です。ここが抜けると、電話に出たこと自体が無かったことになります。
残すときは、口頭ではなく紙かシステムにします。忙しい時間帯に口頭で伝えると、受けた側が忘れます。一般的な形は、電話機のそばに伝言の用紙を置いておくやり方です。
書く内容は、聞いた5項目に受けた日時と受けた人を足します。あとから「いつ誰が受けたか」をたどれるようにしておくと、行き違いが起きたときに確かめられます。
伝言を渡したあとも、相手に届いたかどうかは確認しておくほうが安全です。渡したつもりで机の上に残っていた、という形はよく起きます。
店舗の電話応対で、その場で答えないほうがいい内容
店舗の電話応対では、答えられそうでも保留にしたほうがよい内容があります。電話は記録が残らないぶん、間違えたときに戻しにくいためです。
在庫や営業時間のように、見れば分かることはその場で答えられます。一方、次のものは確認してから答えるほうが安全です。
- 予約や取り置きの可否(条件が細かい)
- 価格や割引の適用(条件が変わる)
- 苦情や対応の約束(責任が伴う)
- 個人の来店有無や連絡先(個人情報に当たる)
最後の1つは特に注意が要ります。お客様や従業員が来店しているかどうかを電話で答えない、という決まりを置いている店が多くあります。判断が難しい場合は、確認のうえ折り返す形にすると安全です。
苦情の電話を受けた場合は、その場で対応を約束しないほうが収まります。手順はクレーム対応の基本手順にまとめました。
店舗の電話応対は、切り方まで含めて型にする
電話応対は、切り方で印象が変わります。用件が済んだあと、いきなり切ると突き放した感じが残ります。
一般的な形は、要点を戻してから切ることです。「では、金曜の15時にお取り置きでお預かりいたします。ありがとうございました」のように、決まったことを一度並べます。
切る順番は、かけてきた側が先に切るのを待つのが基本とされています。ただし相手が待っている場合もあるので、数秒待って切れなければこちらから静かに置く形で構いません。受話器を戻す音が響かないよう、指でフックを押してから戻すと丁寧になります。
店舗の電話応対で、よく使う言い回しをそろえておく
店舗の電話応対は、出る場面が決まっているぶん、言い回しを固定しやすい業務です。先に決めておくと、受けた瞬間に迷いません。
| 場面 | 言い回し |
|---|---|
| 名乗る | お電話ありがとうございます。○○店でございます |
| 遅れて出た | お待たせいたしました。○○店でございます |
| 名前を聞く | 恐れ入りますが、お名前を伺えますか |
| 聞き返す | 恐れ入りますが、もう一度お伺いできますか |
| 保留にする | 少々お待ちくださいませ |
| 保留から戻る | お待たせいたしました |
| 不在を伝える | あいにく○○は席を外しております |
| 折り返す | 戻り次第、こちらからご連絡いたします |
| 伝言を受ける | 差し支えなければ、ご用件を承ります |
| 切る | ありがとうございました。失礼いたします |
このうち、聞き返す言い方を持っておくのがいちばん効きます。電話で困るのは、聞き取れなかったときに黙ってしまう形です。ひと言決まっていれば、そこで止まりません。
不在を伝えるときは、理由を詳しく言わないのが一般的です。「本日は休みを取っております」程度にとどめ、どこにいるかは伝えません。個人の予定は外部に出さない、という扱いになります。
店舗の電話応対は、かける側になったときも型が要る
店舗の電話応対は、受けるだけでなくかける場面もあります。取り置きの連絡、入荷の連絡、折り返し。受けるときと違い、こちらから用件を切り出すので、順番を決めておくと短く済みます。
かけるときの順番は次の形が扱いやすくなります。
- 名乗る(店名と自分の名前)
- 相手の都合を確かめる(今お時間よろしいでしょうか)
- 用件を先に言う(結論から)
- 詳細を伝える
- 次にどうするかを確認する
2を飛ばさないのが要点です。相手は運転中や仕事中かもしれません。ひと言確かめるだけで、かけ直しになっても角が立ちません。
用件は先に言います。「先日お取り置きのご連絡です」と最初に言えば、相手はそのつもりで聞けます。経緯から話すと、何の電話か分からないまま聞くことになります。
つながらなかった場合は、かけた記録を残します。いつ、誰が、何のためにかけたか。残していないと、別の人が同じ用件でかけ直すことになります。留守番電話に残す場合も、店名と用件だけにとどめ、個人情報は入れないほうが安全です。
店舗の電話応対で、個人情報をどう扱うか
店舗の電話応対では、その場で答えてはいけない情報があります。悪意のない問い合わせに見えても、答えると問題になるものがあります。
| 問い合わせ | 答えてよいか |
|---|---|
| 営業時間、在庫、場所 | 答えてよい |
| 特定の従業員が出勤しているか | 答えない |
| 従業員の連絡先やシフト | 答えない |
| 特定のお客様が来店しているか | 答えない |
| 予約者の名前や内容 | 答えない |
従業員が今いるかどうかは、家族を名乗る相手からも聞かれることがあります。この場合も、その場で答えず「確認して折り返します」の形にするのが安全です。本人に伝えて、本人から連絡してもらう流れにできます。
お客様についても同じです。待ち合わせを理由に「○○は来ていますか」と聞かれることがありますが、在店の有無は個人情報として扱うのが一般的です。
判断に迷う場合の言い方を決めておくと、その場で止まりません。「恐れ入りますが、そちらはお答えいたしかねます」で足ります。理由を詳しく説明する必要はなく、決まりとして答えていないことを短く伝えるほうが収まります。
店舗の電話応対を、新しく入った人に渡すとき
店舗の電話応対は、売り場の動きより教わる機会が少なく、出てみて覚える形になりがちです。渡し方を決めておくと、最初の戸惑いが減ります。
渡す順番として扱いやすいのは次の形です。
- 電話に出なくてよい期間を決める(最初の数日は出ない)
- 名乗りと聞き返しの2つだけ渡して、出てもらう
- 取次ぎを渡す(保留と、身内への敬語)
- 伝言の書き方を渡す
- 判断が要る問い合わせの断り方を渡す
2の段階では、用件が分からなくても構いません。「担当の者に代わります」で保留にできれば、電話応対として成立します。最初から全部を1人で完結させようとすると、負担が大きくなります。
伝言の用紙は、電話機のそばに固定で置くのが効きます。探すところから始まると、それだけで聞き逃します。書く項目が印刷してあれば、順に埋めるだけで抜けません。
慣れるまでは、受けたあとに先輩と内容を確かめる時間を作ると、間違いが早く分かります。間違えたまま何度も受けるより、最初の数回を確かめるほうが早く安定します。
店舗の電話応対で、忙しいときにどうするか
店舗の電話応対でいちばん困るのが、売り場が混んでいるときに電話が鳴る場面です。どちらを優先するかが決まっていないと、両方が中途半端になります。
一般的な整理は、目の前のお客様を優先するというものです。電話は折り返せますが、目の前の対応は戻せません。
ただし、鳴りっぱなしにするのも避けたい形です。取れる人がいるなら回し、いないなら取って短く折り返しを伝えるという方法があります。
- 申し訳ございません、ただいま立て込んでおります
- 折り返しお電話いたしますので、お電話番号を伺えますか
この形なら、電話は20秒ほどで終わります。完全に対応しようとするから長くなるので、受けて番号だけ聞く形に切り替えます。
折り返しを約束したら、必ず記録に残します。忙しい時間帯に口頭で覚えておこうとすると、まず忘れます。番号と名前だけ書けば足ります。
店として決めておくなら、何コールで取るか、取れないときどうするかの2点です。決まっていれば、その場で迷いません。
店舗の電話応対は、紙を1枚用意すると変わる
店舗の電話応対は、電話機のそばに紙を1枚置くだけで安定します。用意するのは伝言用紙と、言い回しの一覧です。
伝言用紙に印刷しておく項目は次のとおりです。
- 受けた日時
- 受けた人
- 相手の名前と会社名
- 誰宛か
- 用件
- 連絡先
- 折り返しの要否
項目が印刷してあると、順に埋めるだけなので抜けません。白紙だと、忙しいときに書く内容を考えることになります。
言い回しの一覧も同じ紙に入れておけます。名乗り、聞き返し、保留、不在。目に入る場所にあると、出る前に一度見られます。
よくある質問
電話に出るのが怖いのですが
聞き取れなかったときの言い方を先に決めておくと、負担が下がります。「恐れ入りますが、もう一度お伺いできますか」が出れば、たいていの場面は持ちこたえます。分からないことは保留にして確認してよい、と決めておくのも効きます。
名前が聞き取れないときはどうしますか
漢字を尋ねる形にできます。「恐れ入りますが、どのような字をお書きになりますか」と聞くと、聞き直しではなく確認の形になります。カタカナで書き取っておいて、あとで確認する方法もあります。
保留はどのくらいまで待たせていいですか
一般には30秒前後が目安とされています。超えそうなら一度戻って状況を伝えます。待たせること自体より、放置される時間のほうが不満になります。
クレームの電話はどこまで聞けばいいですか
一次対応として、内容を聞いて記録するところまでです。対応の可否をその場で約束しないことが線になります。責任者に代わる判断も、早いほうが収まりやすくなります。
間違い電話にはどう答えますか
店名を伝えて、番号を確認する形が穏やかです。相手が番号を間違えている場合も、短く丁寧に切るほうがあとに残りません。名乗った店名が次の判断材料になります。
電話に出る回数を増やしたほうが慣れますか
出る回数より、聞き返す言い方と保留の仕方が決まっているかのほうが効きます。決まっていれば、少ない回数でも安定します。
まとめ
店舗の電話応対は、受ける前の準備でほぼ決まります。メモと筆記具を電話のそばに固定しておくだけで、聞き直しが減ります。
流れは、受ける・聞く・取り次ぐ・残すの4段階です。聞く段階では、名前、会社名、用件、誰宛か、連絡先の5項目をそろえます。取次ぎでは、店の人間に敬語を使わない形に切り替えます。
その場で答えないほうがよい内容もあります。予約の可否、価格の適用、苦情への約束、個人の来店有無。どれも確認してから折り返すほうが安全です。