言葉遣い・敬語基礎2026.09.16 公開KO-02

接客の敬語一覧|尊敬語と謙譲語の使い分け

目次

接客の敬語でつまずく場所は、だいたい決まっています。尊敬語と謙譲語のどちらを使うかです。丁寧語は語尾を「です・ます」にするだけなので迷いませんが、残り2つは主語によって入れ替わるため、覚え方を間違えると混ざります。

この記事では、接客の敬語を主語で分けて整理します。動詞の一覧も、店でよく使うものに絞って並べました。

場面別のフレーズをすぐ知りたい方は「接客の言葉遣い一覧」へ。来店から見送りまで順に並べています。→ 接客の言葉遣い

結論:接客の敬語は「誰の動作か」だけで決まる

接客の敬語で迷ったときは、その動作をするのが誰かを見れば決まります。お客様の動作なら尊敬語、自分や店側の動作なら謙譲語です。

ポイントはここです。敬語の種類を覚えるより、主語を先に確かめるほうが早く正確になります。「見る」という動詞そのものに正解はなく、お客様が見るなら「ご覧になる」、自分が見るなら「拝見する」と分かれます。

一般には、敬語は次の3種類に分けられます。接客で混ざるのは上の2つだけです。

種類誰を高めるか
尊敬語相手(お客様)ご覧になる、召し上がる
謙譲語自分を下げて相手を立てる拝見する、いただく
丁寧語話し方を整えるです、ます、ございます
主語で、使う敬語が分かれるお客様が見るお客様が言うお客様が食べるご覧になるおっしゃる召し上がるその動作は誰のものか
主語で尊敬語と謙譲語が分かれる仕組み

接客の敬語一覧:店でよく使う動詞

接客の敬語のうち、店で実際に使う動詞は多くありません。次の表にある分を押さえれば、日常の大半は回ります。

普通の言い方尊敬語(お客様)謙譲語(自分)
見るご覧になる拝見する
言うおっしゃる申す、申し上げる
行く・来るいらっしゃる、お越しになる伺う、まいる
いるいらっしゃるおる
するなさるいたす
食べる・飲む召し上がるいただく
聞くお聞きになる伺う、拝聴する
知るご存じ存じる、存じ上げる
待つお待ちになるお待ちする
受け取るお受け取りになる頂戴する、承る

接客の敬語でよく混ざる3組

接客の敬語の中で、特に入れ替わりやすい組があります。

「伺う」と「いらっしゃる」。どちらも移動の敬語ですが、行くのが自分なら「伺う」、お客様なら「いらっしゃる」です。「お客様が伺います」は誤りになります。

「いただく」と「召し上がる」。食べるのがお客様なら「召し上がる」です。「いただいてください」という言い方は、お客様の動作に謙譲語を当てているので不自然になります。

「ご存じ」と「存じる」。知っているのがお客様なら「ご存じ」、自分なら「存じております」です。

入れ替わりやすい3組伺う/いらっしゃる行くのが自分なら伺うお客様が伺うは誤いただく/召し上がる食べるのがお客様なら召し上がいただいてくださいは誤りご存じ/存じる知っているのがお客様ならご存自分なら存じております
入れ替わりやすい3組を主語で分けた比較

接客の敬語で「お」と「ご」をどう付けるか

接客の敬語では、名詞に「お」や「ご」を付ける場面が多くあります。一般には、和語には「お」、漢語には「ご」が付くという分け方があります。

  • お名前、お荷物、お会計、お時間、お手数、お求め
  • ご注文、ご予約、ご案内、ご利用、ご記入

例外もあります。「お電話」「お返事」「お食事」は漢語ですが「お」が付きます。覚えるより、店で使う語をそのまま覚えるほうが早い部分です。

付けすぎると不自然になります。「お品物のお値段のお支払い」のように連続すると、かえって読みにくくなります。1つの文に2つまでを目安にすると落ち着きます。

点検表テンプレート
様式をさがす

実際に使える様式が必要な方へ

敬語の基準を店の決まりとして残したい方へ。接客マニュアルや教育記録の様式は、業種別にそろえている商い屋にあります。

商い屋で様式をさがす

接客の敬語は、身内には使わない

接客の敬語で見落とされやすいのが、お客様の前で同僚や上司をどう呼ぶかです。店の人間は身内なので、お客様に対しては敬語を外します。

場面誤りやすい形整えた形
店長を呼ぶ店長がいらっしゃいます店長の○○がまいります
担当を伝える担当者がおっしゃっていました担当の者が申しておりました
不在を伝える部長は席を外されています○○は席を外しております

社内では店長に敬語を使っていても、お客様の前では切り替えるという形になります。慣れるまで間違えやすいところですが、電話応対では特に出やすいので意識しておくと安全です。電話での言い方は店舗の電話応対にまとめました。

接客の敬語は、完璧でなくても通じる

接客の敬語を厳密に使い分けられていなくても、失礼になる場面はそれほど多くありません。大きく崩れるのは、身内に尊敬語を使った場合と、お客様に謙譲語を当てた場合の2つです。

間違えたときの影響には差がある身内に尊敬語/お客様に謙譲語尊敬語と謙譲語の取り違え二重敬語・「お」の付け方
間違えても影響の小さいものと大きいものを分けた層

逆に、二重敬語や「お」の付け方は、気になる人はいても意味が変わりません。直す順番としては後ろで構いません。

覚え方としては、動詞の一覧を暗記するより、自分の店で1日に10回以上出る動詞から順に固めるほうが実用的です。飲食なら「召し上がる」、物販なら「ご覧になる」、電話が多い店なら「申す」。使う頻度の高いものから身につきます。

接客の敬語で迷ったときの、その場での逃げ方

接客の敬語は、迷った瞬間に止まってしまうのが困る場面です。正しい形が出てこないときに使える逃げ方を持っておくと、会話が止まりません。

いちばん使えるのは、「です・ます」に戻すことです。尊敬語や謙譲語が出てこないなら、丁寧語だけで組み立て直します。

出てこない形丁寧語で言い換える
ご覧になりますか見ていただけますか
召し上がりますかお召し上がりですか、で迷うなら「いかがですか」
伺いますお聞きします
頂戴しますお預かりします

丁寧語だけでも失礼にはなりません。尊敬語を間違えて使うより、丁寧語で正確に伝えるほうが安全です。

もう1つの逃げ方は、主語を言わない形にすることです。「こちらでございます」「少々お待ちください」のように、動作の主が出ない言い方なら、尊敬語と謙譲語の判断が要りません。

迷ったまま黙るのがいちばん避けたい形です。言葉を選んでいる時間は、お客様からは無反応に見えます。短く言い切って先へ進み、必要なら言い直すほうが会話として成立します。

接客の敬語は、身につく順番が決まっている

接客の敬語は、一覧を渡されても順に身につくわけではありません。使う回数の多いものから自然に入ります。

敬語が身につく順番最初定型句の敬語ございます自分の謙譲語お持ちします最後お客様の尊敬語ご覧になる尊敬語が最後なのは自然。丁寧語で逃げながら入れ替える
敬語が身につく順番の時系列

最初に入るのは、定型句の中の敬語です。「かしこまりました」「ございます」「お待たせいたしました」。これらは接客7大用語と重なるので、意識しなくても回数で覚えます。

次に入るのが、自分の動作の謙譲語です。「お持ちします」「確認いたします」「お預かりします」。自分が主語なので判断が要らず、迷いにくい部分になります。

最後に入るのが、お客様の動作の尊敬語です。「ご覧になる」「召し上がる」「おっしゃる」。ここは主語を判断してから選ぶので、時間がかかります。

この順番を知っておくと、尊敬語が出てこないのは順番として自然だと分かります。最後に入る部分なので、そこだけ苦手でも問題ありません。丁寧語で逃げながら、少しずつ入れ替えていけば足ります。

覚える対象を絞るなら、自分の店で1日に10回以上出る動詞から固めます。飲食なら「召し上がる」、物販なら「ご覧になる」。全部を均等に覚えようとすると、どれも中途半端になります。

接客の敬語で、よく間違えられる形を場面で見る

接客の敬語は、単語だけで覚えると場面で使えません。実際に出る文の形で見ておくと、そのまま使えます。

商品をすすめる場面

間違えやすい形整えた形
こちらお試しできますこちらはお試しいただけます
見て行ってくださいご覧になってください
どうぞ着てみてくださいご試着いただけます

すすめる場面では、お客様の動作なので尊敬語になります。「いただく」を使う形も多いのですが、こちらは依頼の形として定着しているので不自然にはなりません。

説明する場面

間違えやすい形整えた形
ご存じでしょうかご存じでいらっしゃいますか
分かりましたかご不明な点はございませんか
説明させていただきますご説明いたします

「分かりましたか」は、意味としては自然でも、お客様の理解を確かめる形なので上から聞こえることがあります。不明点を尋ねる形にすると角が取れます。

受け取る場面

間違えやすい形整えた形
こちらでよろしかったですかこちらでよろしいでしょうか
お預かりいたします(ちょうどのとき)頂戴いたします
いただいてください召し上がってください

「いただいてください」は、お客様の動作に謙譲語を当てた形になります。食べるのがお客様なら「召し上がる」です。飲食では出やすい間違いなので、意識しておくと外しません。

見送る場面

間違えやすい形整えた形
またお越しになってくださいまたのお越しをお待ちしております
気をつけて帰ってくださいお気をつけてお帰りくださいませ

見送りは定型句で足りるので、1つ決めて固定するほうが自然になります。毎回考えると、言い方が揺れます。

接客の敬語と、社内で使う言葉を分ける

外部の人がいるかで切り替える社内だけ店長がいらっしゃいます○○さんに伝えます敬語のままお客様・取引先の前店長の○○がまいります○○に申し伝えます身内なので敬語を外す
外部の人がいるかで切り替わる呼び方の図

接客の敬語で迷いが出るのは、同じ相手に対して言い方が変わる場面です。店の中では店長に敬語を使い、お客様の前では呼び捨てにする。この切り替えが要るため、混ざります。

相手場面店長の呼び方
店長本人社内店長、○○さん
同僚社内店長
お客様売り場・電話○○(呼び捨て)
本部・取引先電話○○(呼び捨て)

切り替えの基準は、その場に外部の人がいるかどうかです。お客様や取引先の前では、店の人間は全員が身内になります。

慣れるまでは、文の頭を「○○は」で始めると決めておくと、そのあとの動詞が自然に謙譲語になります。「店長の田中は席を外しております」のように、名前から入る形です。

逆に、社内で急に呼び捨てにすると角が立ちます。切り替えるのは外部の人がいる場面だけで、普段の会話まで変える必要はありません。

接客の敬語は、間違えても立て直せる

接客の敬語を間違えたとき、どう立て直すかを決めておくと、焦らずに済みます。

軽い間違いは、言い直さずにそのまま続けるほうが自然です。言い直すと、間違えたことのほうに注意が向きます。お客様はほとんど気にしていないことが多く、こちらが止まるほうが目立ちます。

言い直したほうがよいのは、内容が変わる間違いです。

種類対応
敬語の形を間違えた言い直さず続ける
身内に尊敬語を使った次の文から直す
金額や数量を言い間違えたその場で訂正する
事実と違うことを言ったその場で訂正して詫びる

上の2つは言い方の問題なので、流して構いません。下の2つは内容の問題なので、その場で止めて直します。ここを混ぜると、直すべきものを流し、流してよいものを直すことになります。

間違いを指摘された場合は、短く詫びて用件に戻るのが穏やかな収め方です。説明を足すと長くなります。「失礼いたしました」と言い直して先へ進みます。

接客の敬語は、業種によって求められる高さが違う

接客の敬語は、どこまで改まった形を使うかが業種で変わります。丁寧すぎても店に合わないことがあるので、水準を見ておくと自然になります。

業種標準的な高さ特徴
コンビニ・食品丁寧語中心回数が多く、短い
衣料・雑貨尊敬語を交える説明が長い
飲食店業態で幅がある客層に合わせる
サロン・百貨店尊敬語と謙譲語を使い分ける名前で呼ぶ場面がある

回転の速い業種では、尊敬語を厳密に使い分けるより、短く正確に伝えるほうが合います。逆に滞在の長い業種では、使い分けができていないと目立ちます。

自分の店の水準が分からないときは、先輩が使っている動詞を場面ごとに写すのが早い方法です。全体の雰囲気を真似ようとすると時間がかかりますが、動詞だけなら数日で入ります。

接客の敬語は、書き出すと弱い場所が見える

接客の敬語は、頭の中だけで整理しようとすると混ざります。主語ごとに書き出すと、弱い場所が見えます。

自分の店で1日に使う動詞を5つ挙げて、尊敬語と謙譲語を書いてみます。書けないところが、迷っている場所です。

動詞お客様が自分が
見る
言う
来る
食べる
する

埋まらない欄があっても問題ありません。丁寧語で言い換えられるので、そちらを先に決めておけば会話は止まりません。

書き出す作業は一度でよく、繰り返す必要はありません。弱い場所が分かれば、そこだけ意識すれば入ります。

よくある質問

接客の敬語は全部覚えないといけませんか

店で使う動詞は10個ほどです。一覧を暗記するより、主語で分ける考え方を1つ覚えるほうが応用がききます。迷ったら「これは誰の動作か」と考える習慣にすると、知らない動詞にも対応できます。

「ご覧いただけますか」は正しいですか

使える形です。「ご覧」は尊敬語、「いただく」は謙譲語ですが、この組み合わせは依頼の形として定着しています。二重敬語として指摘されることはあまりありません。

「お待ちください」と「お待ちくださいませ」の違いは

意味は同じで、「ませ」が付くと改まった響きになります。百貨店やサロンでは「ませ」付き、コンビニや飲食では付けない形が多くあります。店の水準に合わせて選べます。

敬語を間違えたとき、言い直したほうがいいですか

軽い間違いなら、言い直さずそのまま続けるほうが自然です。言い直すと、間違いのほうに注意が向きます。取り違えや金額の誤りのように内容に関わるものは、その場で訂正します。

敬語が苦手でも接客はできますか

できます。敬語の細かい種類より、語尾を整えることと、身内に敬語を使わないことの2つを押さえれば、大きく外しません。残りは使いながら覚えても間に合います。

尊敬語が出てこないときはどうしますか

丁寧語に戻して構いません。「ご覧になりますか」が出てこないなら「見ていただけますか」で足ります。間違えた尊敬語より安全です。

敬語の本を1冊読んだほうがいいですか

読むより、自分の店で回数の多い動詞から固めるほうが早く効きます。一覧を通読しても、とっさには出ません。

敬語を使い分けられないと評価に響きますか

店によりますが、内容の間違いのほうが重く見られるのが一般的です。金額や数量の取り違えを防ぐほうが先で、敬語の細かい種類は後から入ります。

まとめ

接客の敬語は、動作の主語で決まります。お客様の動作なら尊敬語、自分や店側の動作なら謙譲語。この1点を押さえると、知らない動詞にも対応できます。

混ざりやすいのは「伺う/いらっしゃる」「いただく/召し上がる」「ご存じ/存じる」の3組です。どれも主語を確かめれば分かれます。

大きく崩れるのは、身内に尊敬語を使った場合と、お客様に謙譲語を当てた場合です。二重敬語や「お」の付け方は意味が変わらないので、直す順番としては後ろで構いません。

点検表テンプレート
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実際に使える様式が必要な方へ

敬語の基準を店の共通ルールにしたい方へ。接客マニュアルや従業員教育記録の様式は、業種別にそろえている商い屋にあります。

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