接客の敬語一覧|尊敬語と謙譲語の使い分け
目次
接客の敬語でつまずく場所は、だいたい決まっています。尊敬語と謙譲語のどちらを使うかです。丁寧語は語尾を「です・ます」にするだけなので迷いませんが、残り2つは主語によって入れ替わるため、覚え方を間違えると混ざります。
この記事では、接客の敬語を主語で分けて整理します。動詞の一覧も、店でよく使うものに絞って並べました。
結論:接客の敬語は「誰の動作か」だけで決まる
接客の敬語で迷ったときは、その動作をするのが誰かを見れば決まります。お客様の動作なら尊敬語、自分や店側の動作なら謙譲語です。
ポイントはここです。敬語の種類を覚えるより、主語を先に確かめるほうが早く正確になります。「見る」という動詞そのものに正解はなく、お客様が見るなら「ご覧になる」、自分が見るなら「拝見する」と分かれます。
一般には、敬語は次の3種類に分けられます。接客で混ざるのは上の2つだけです。
| 種類 | 誰を高めるか | 例 |
|---|---|---|
| 尊敬語 | 相手(お客様) | ご覧になる、召し上がる |
| 謙譲語 | 自分を下げて相手を立てる | 拝見する、いただく |
| 丁寧語 | 話し方を整える | です、ます、ございます |
接客の敬語一覧:店でよく使う動詞
接客の敬語のうち、店で実際に使う動詞は多くありません。次の表にある分を押さえれば、日常の大半は回ります。
| 普通の言い方 | 尊敬語(お客様) | 謙譲語(自分) |
|---|---|---|
| 見る | ご覧になる | 拝見する |
| 言う | おっしゃる | 申す、申し上げる |
| 行く・来る | いらっしゃる、お越しになる | 伺う、まいる |
| いる | いらっしゃる | おる |
| する | なさる | いたす |
| 食べる・飲む | 召し上がる | いただく |
| 聞く | お聞きになる | 伺う、拝聴する |
| 知る | ご存じ | 存じる、存じ上げる |
| 待つ | お待ちになる | お待ちする |
| 受け取る | お受け取りになる | 頂戴する、承る |
接客の敬語でよく混ざる3組
接客の敬語の中で、特に入れ替わりやすい組があります。
「伺う」と「いらっしゃる」。どちらも移動の敬語ですが、行くのが自分なら「伺う」、お客様なら「いらっしゃる」です。「お客様が伺います」は誤りになります。
「いただく」と「召し上がる」。食べるのがお客様なら「召し上がる」です。「いただいてください」という言い方は、お客様の動作に謙譲語を当てているので不自然になります。
「ご存じ」と「存じる」。知っているのがお客様なら「ご存じ」、自分なら「存じております」です。
接客の敬語で「お」と「ご」をどう付けるか
接客の敬語では、名詞に「お」や「ご」を付ける場面が多くあります。一般には、和語には「お」、漢語には「ご」が付くという分け方があります。
- お名前、お荷物、お会計、お時間、お手数、お求め
- ご注文、ご予約、ご案内、ご利用、ご記入
例外もあります。「お電話」「お返事」「お食事」は漢語ですが「お」が付きます。覚えるより、店で使う語をそのまま覚えるほうが早い部分です。
付けすぎると不自然になります。「お品物のお値段のお支払い」のように連続すると、かえって読みにくくなります。1つの文に2つまでを目安にすると落ち着きます。
接客の敬語は、身内には使わない
接客の敬語で見落とされやすいのが、お客様の前で同僚や上司をどう呼ぶかです。店の人間は身内なので、お客様に対しては敬語を外します。
| 場面 | 誤りやすい形 | 整えた形 |
|---|---|---|
| 店長を呼ぶ | 店長がいらっしゃいます | 店長の○○がまいります |
| 担当を伝える | 担当者がおっしゃっていました | 担当の者が申しておりました |
| 不在を伝える | 部長は席を外されています | ○○は席を外しております |
社内では店長に敬語を使っていても、お客様の前では切り替えるという形になります。慣れるまで間違えやすいところですが、電話応対では特に出やすいので意識しておくと安全です。電話での言い方は店舗の電話応対にまとめました。
接客の敬語は、完璧でなくても通じる
接客の敬語を厳密に使い分けられていなくても、失礼になる場面はそれほど多くありません。大きく崩れるのは、身内に尊敬語を使った場合と、お客様に謙譲語を当てた場合の2つです。
逆に、二重敬語や「お」の付け方は、気になる人はいても意味が変わりません。直す順番としては後ろで構いません。
覚え方としては、動詞の一覧を暗記するより、自分の店で1日に10回以上出る動詞から順に固めるほうが実用的です。飲食なら「召し上がる」、物販なら「ご覧になる」、電話が多い店なら「申す」。使う頻度の高いものから身につきます。
接客の敬語で迷ったときの、その場での逃げ方
接客の敬語は、迷った瞬間に止まってしまうのが困る場面です。正しい形が出てこないときに使える逃げ方を持っておくと、会話が止まりません。
いちばん使えるのは、「です・ます」に戻すことです。尊敬語や謙譲語が出てこないなら、丁寧語だけで組み立て直します。
| 出てこない形 | 丁寧語で言い換える |
|---|---|
| ご覧になりますか | 見ていただけますか |
| 召し上がりますか | お召し上がりですか、で迷うなら「いかがですか」 |
| 伺います | お聞きします |
| 頂戴します | お預かりします |
丁寧語だけでも失礼にはなりません。尊敬語を間違えて使うより、丁寧語で正確に伝えるほうが安全です。
もう1つの逃げ方は、主語を言わない形にすることです。「こちらでございます」「少々お待ちください」のように、動作の主が出ない言い方なら、尊敬語と謙譲語の判断が要りません。
迷ったまま黙るのがいちばん避けたい形です。言葉を選んでいる時間は、お客様からは無反応に見えます。短く言い切って先へ進み、必要なら言い直すほうが会話として成立します。
接客の敬語は、身につく順番が決まっている
接客の敬語は、一覧を渡されても順に身につくわけではありません。使う回数の多いものから自然に入ります。
最初に入るのは、定型句の中の敬語です。「かしこまりました」「ございます」「お待たせいたしました」。これらは接客7大用語と重なるので、意識しなくても回数で覚えます。
次に入るのが、自分の動作の謙譲語です。「お持ちします」「確認いたします」「お預かりします」。自分が主語なので判断が要らず、迷いにくい部分になります。
最後に入るのが、お客様の動作の尊敬語です。「ご覧になる」「召し上がる」「おっしゃる」。ここは主語を判断してから選ぶので、時間がかかります。
この順番を知っておくと、尊敬語が出てこないのは順番として自然だと分かります。最後に入る部分なので、そこだけ苦手でも問題ありません。丁寧語で逃げながら、少しずつ入れ替えていけば足ります。
覚える対象を絞るなら、自分の店で1日に10回以上出る動詞から固めます。飲食なら「召し上がる」、物販なら「ご覧になる」。全部を均等に覚えようとすると、どれも中途半端になります。
接客の敬語で、よく間違えられる形を場面で見る
接客の敬語は、単語だけで覚えると場面で使えません。実際に出る文の形で見ておくと、そのまま使えます。
商品をすすめる場面
| 間違えやすい形 | 整えた形 |
|---|---|
| こちらお試しできます | こちらはお試しいただけます |
| 見て行ってください | ご覧になってください |
| どうぞ着てみてください | ご試着いただけます |
すすめる場面では、お客様の動作なので尊敬語になります。「いただく」を使う形も多いのですが、こちらは依頼の形として定着しているので不自然にはなりません。
説明する場面
| 間違えやすい形 | 整えた形 |
|---|---|
| ご存じでしょうか | ご存じでいらっしゃいますか |
| 分かりましたか | ご不明な点はございませんか |
| 説明させていただきます | ご説明いたします |
「分かりましたか」は、意味としては自然でも、お客様の理解を確かめる形なので上から聞こえることがあります。不明点を尋ねる形にすると角が取れます。
受け取る場面
| 間違えやすい形 | 整えた形 |
|---|---|
| こちらでよろしかったですか | こちらでよろしいでしょうか |
| お預かりいたします(ちょうどのとき) | 頂戴いたします |
| いただいてください | 召し上がってください |
「いただいてください」は、お客様の動作に謙譲語を当てた形になります。食べるのがお客様なら「召し上がる」です。飲食では出やすい間違いなので、意識しておくと外しません。
見送る場面
| 間違えやすい形 | 整えた形 |
|---|---|
| またお越しになってください | またのお越しをお待ちしております |
| 気をつけて帰ってください | お気をつけてお帰りくださいませ |
見送りは定型句で足りるので、1つ決めて固定するほうが自然になります。毎回考えると、言い方が揺れます。
接客の敬語と、社内で使う言葉を分ける
接客の敬語で迷いが出るのは、同じ相手に対して言い方が変わる場面です。店の中では店長に敬語を使い、お客様の前では呼び捨てにする。この切り替えが要るため、混ざります。
| 相手 | 場面 | 店長の呼び方 |
|---|---|---|
| 店長本人 | 社内 | 店長、○○さん |
| 同僚 | 社内 | 店長 |
| お客様 | 売り場・電話 | ○○(呼び捨て) |
| 本部・取引先 | 電話 | ○○(呼び捨て) |
切り替えの基準は、その場に外部の人がいるかどうかです。お客様や取引先の前では、店の人間は全員が身内になります。
慣れるまでは、文の頭を「○○は」で始めると決めておくと、そのあとの動詞が自然に謙譲語になります。「店長の田中は席を外しております」のように、名前から入る形です。
逆に、社内で急に呼び捨てにすると角が立ちます。切り替えるのは外部の人がいる場面だけで、普段の会話まで変える必要はありません。
接客の敬語は、間違えても立て直せる
接客の敬語を間違えたとき、どう立て直すかを決めておくと、焦らずに済みます。
軽い間違いは、言い直さずにそのまま続けるほうが自然です。言い直すと、間違えたことのほうに注意が向きます。お客様はほとんど気にしていないことが多く、こちらが止まるほうが目立ちます。
言い直したほうがよいのは、内容が変わる間違いです。
| 種類 | 対応 |
|---|---|
| 敬語の形を間違えた | 言い直さず続ける |
| 身内に尊敬語を使った | 次の文から直す |
| 金額や数量を言い間違えた | その場で訂正する |
| 事実と違うことを言った | その場で訂正して詫びる |
上の2つは言い方の問題なので、流して構いません。下の2つは内容の問題なので、その場で止めて直します。ここを混ぜると、直すべきものを流し、流してよいものを直すことになります。
間違いを指摘された場合は、短く詫びて用件に戻るのが穏やかな収め方です。説明を足すと長くなります。「失礼いたしました」と言い直して先へ進みます。
接客の敬語は、業種によって求められる高さが違う
接客の敬語は、どこまで改まった形を使うかが業種で変わります。丁寧すぎても店に合わないことがあるので、水準を見ておくと自然になります。
| 業種 | 標準的な高さ | 特徴 |
|---|---|---|
| コンビニ・食品 | 丁寧語中心 | 回数が多く、短い |
| 衣料・雑貨 | 尊敬語を交える | 説明が長い |
| 飲食店 | 業態で幅がある | 客層に合わせる |
| サロン・百貨店 | 尊敬語と謙譲語を使い分ける | 名前で呼ぶ場面がある |
回転の速い業種では、尊敬語を厳密に使い分けるより、短く正確に伝えるほうが合います。逆に滞在の長い業種では、使い分けができていないと目立ちます。
自分の店の水準が分からないときは、先輩が使っている動詞を場面ごとに写すのが早い方法です。全体の雰囲気を真似ようとすると時間がかかりますが、動詞だけなら数日で入ります。
接客の敬語は、書き出すと弱い場所が見える
接客の敬語は、頭の中だけで整理しようとすると混ざります。主語ごとに書き出すと、弱い場所が見えます。
自分の店で1日に使う動詞を5つ挙げて、尊敬語と謙譲語を書いてみます。書けないところが、迷っている場所です。
| 動詞 | お客様が | 自分が |
|---|---|---|
| 見る | ||
| 言う | ||
| 来る | ||
| 食べる | ||
| する |
埋まらない欄があっても問題ありません。丁寧語で言い換えられるので、そちらを先に決めておけば会話は止まりません。
書き出す作業は一度でよく、繰り返す必要はありません。弱い場所が分かれば、そこだけ意識すれば入ります。
よくある質問
接客の敬語は全部覚えないといけませんか
店で使う動詞は10個ほどです。一覧を暗記するより、主語で分ける考え方を1つ覚えるほうが応用がききます。迷ったら「これは誰の動作か」と考える習慣にすると、知らない動詞にも対応できます。
「ご覧いただけますか」は正しいですか
使える形です。「ご覧」は尊敬語、「いただく」は謙譲語ですが、この組み合わせは依頼の形として定着しています。二重敬語として指摘されることはあまりありません。
「お待ちください」と「お待ちくださいませ」の違いは
意味は同じで、「ませ」が付くと改まった響きになります。百貨店やサロンでは「ませ」付き、コンビニや飲食では付けない形が多くあります。店の水準に合わせて選べます。
敬語を間違えたとき、言い直したほうがいいですか
軽い間違いなら、言い直さずそのまま続けるほうが自然です。言い直すと、間違いのほうに注意が向きます。取り違えや金額の誤りのように内容に関わるものは、その場で訂正します。
敬語が苦手でも接客はできますか
できます。敬語の細かい種類より、語尾を整えることと、身内に敬語を使わないことの2つを押さえれば、大きく外しません。残りは使いながら覚えても間に合います。
尊敬語が出てこないときはどうしますか
丁寧語に戻して構いません。「ご覧になりますか」が出てこないなら「見ていただけますか」で足ります。間違えた尊敬語より安全です。
敬語の本を1冊読んだほうがいいですか
読むより、自分の店で回数の多い動詞から固めるほうが早く効きます。一覧を通読しても、とっさには出ません。
敬語を使い分けられないと評価に響きますか
店によりますが、内容の間違いのほうが重く見られるのが一般的です。金額や数量の取り違えを防ぐほうが先で、敬語の細かい種類は後から入ります。
まとめ
接客の敬語は、動作の主語で決まります。お客様の動作なら尊敬語、自分や店側の動作なら謙譲語。この1点を押さえると、知らない動詞にも対応できます。
混ざりやすいのは「伺う/いらっしゃる」「いただく/召し上がる」「ご存じ/存じる」の3組です。どれも主語を確かめれば分かれます。
大きく崩れるのは、身内に尊敬語を使った場合と、お客様に謙譲語を当てた場合です。二重敬語や「お」の付け方は意味が変わらないので、直す順番としては後ろで構いません。