接客の言葉遣い一覧|場面別の基本フレーズ
目次
接客の言葉遣いは、覚えることが多そうに見えて、実際に使う型はそれほど多くありません。来店から見送りまでの場面が決まっているので、場面ごとに1つずつ言い方を持っておけば足ります。
この記事では、接客の言葉遣いを場面順に並べます。一覧として使えるように、よく出る場面から順に置きました。あわせて、丁寧にしようとして不自然になりやすい形も整理します。
結論:接客の言葉遣いは、場面ごとに1つ決めておけば足りる
接客の言葉遣いで迷うのは、選択肢が多いからです。同じ場面に3通りの言い方を知っていると、そのつど選ぶことになります。場面ごとに1つ決めて固定すると、迷う時間がなくなります。
ポイントはここです。言葉遣いの良し悪しより、店の中でそろっていることのほうが効きます。人によって言い方が違うと、お客様は対応が変わったと感じます。
一般には、接客の言葉遣いは丁寧さの度合いで3層に分かれます。どの層を使うかは業種と客層で決まります。
| 層 | 例 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 標準 | かしこまりました | 小売、飲食の大半 |
| 改まった形 | 少々お待ちくださいませ | 百貨店、ホテル、サロン |
| くだけた形 | 承知しました | 常連との短いやりとり |
接客の言葉遣い一覧:来店から見送りまで
接客の言葉遣いを、流れの順に並べます。店の決まりがある場合はそちらが優先しますが、無い場合の標準形として使えます。
迎えるとき
- いらっしゃいませ
- いらっしゃいませ、こんにちは
- ただいま係の者がまいります
待たせるとき
- 少々お待ちくださいませ
- ただいま確認してまいります
- 3分ほどお時間をいただけますでしょうか
- お待たせいたしました
待たせる場面の言葉遣いは、時間か動作のどちらかを添えると印象が変わります。「少々」だけでは見通しが立ちません。
受けるとき
- かしこまりました
- 承知いたしました
- Mサイズを2点、かしこまりました
確かめるとき
- こちらでお間違いないでしょうか
- ご注文は以上でよろしいでしょうか
- お支払いは現金でよろしいでしょうか
確かめる言い方では、「よろしかったでしょうか」を使わない形にしておくと無難です。理由はバイト敬語とはで扱います。
渡すとき
- お待たせいたしました
- こちらが○○でございます
- 品名を添えて渡すと、取り違えがその場で分かります
断るとき
- 恐れ入りますが、そちらは切らしております
- あいにく、こちらでは取り扱いがございません
- お調べいたしましたが、在庫が確認できませんでした
見送るとき
- ありがとうございます
- ありがとうございました
- またのご来店をお待ちしております
接客の言葉遣いで、丁寧にしようとして崩れる形
接客の言葉遣いは、丁寧にしようとするほど不自然になることがあります。よく出る形を3つ挙げます。
二重敬語になる
「お伺いいたします」「拝見させていただきます」のように、敬語を重ねた形です。意味は通じますが、回りくどく聞こえます。
| 重ねた形 | 整えた形 |
|---|---|
| お伺いいたします | 伺います |
| 拝見させていただきます | 拝見します |
| ご覧になられますか | ご覧になりますか |
| お召し上がりになられます | 召し上がります |
「させていただく」が増える
「確認させていただきます」「ご案内させていただきます」は、許可をもらう場面でないと不自然になります。こちらの都合で動くときは「いたします」で足ります。
語尾が伸びる
「かしこまりましたー」「ありがとうございましたー」のように伸ばすと、形だけ言っている印象になります。語尾を切る意識だけで直ります。
接客の言葉遣いは、業種で少し変わる
接客の言葉遣いの土台は共通ですが、業種によって当たり前の水準が違います。丁寧すぎても店に合わないことがあります。
| 業種 | 標準的な水準 | 特徴 |
|---|---|---|
| コンビニ・食品 | 標準 | 短く、回数が多い |
| 衣料・雑貨 | 標準から改まった形 | 説明が長い |
| 飲食店 | 業態で幅がある | 客層に合わせる |
| サロン・百貨店 | 改まった形 | 名前で呼ぶ場面がある |
自分の店の水準が分からないときは、先輩の言い方を場面ごとに1つずつ写すのが早い方法です。全体の雰囲気を真似ようとすると時間がかかります。
接客の言葉遣いを直すときの順番
接客の言葉遣いを一度に全部直そうとすると続きません。効き目の大きい順に並べると、次のようになります。
最初に直すのは語尾です。伸ばさない、下げない。これだけで聞こえ方が変わります。次に待たせる場面のひと言を直します。ここは苦情に直結する場所なので、効き目がはっきり出ます。
最後に、二重敬語や細かい言い回しを整えます。ここは間違えても実害が小さいので、後回しで構いません。順番を逆にすると、細かい部分に時間を使って肝心な場所が残ります。
接客の言葉遣いで、お客様の呼び方をどうするか
接客の言葉遣いのうち、迷いやすいのがお客様の呼び方です。業種によって標準が違い、間違えると距離感がずれます。
| 呼び方 | 使う場面 | 注意 |
|---|---|---|
| お客様 | どの業種でも使える | 迷ったらこれ |
| ○○様 | 予約、会員、サロン | 読み方を確かめる |
| お客さん | 使わない | くだけすぎる |
| そちらのお客様 | 複数いる場面 | 指をささない |
名前で呼べる場面では、そのほうが丁寧に受け取られます。ただし、読み方を間違えると逆効果になります。予約名簿で読みが分からないときは、確認してから呼ぶか、「お客様」で通すほうが安全です。
複数のお客様がいる場面で特定の人に話しかけるときは、指をささずに手のひらで示すのが一般的です。「そちらのお客様」と言いながら人を指すと、指摘を受けることがあります。
お連れの方がいる場合の呼び方も決めておくと迷いません。「お連れ様」「ご一緒の方」が使えます。関係を決めつけた言い方は避けるほうが無難です。家族かどうか、どういう間柄かは、こちらから判断しないという線を持っておくと外しません。
接客の言葉遣いは、声に出して練習すると定着する
接客の言葉遣いは、読んで覚えるだけでは口から出ません。文字で知っていることと、とっさに言えることは別です。
練習の仕方として扱いやすいのは、次の形です。
- 場面を1つ決める(断るとき、待たせるときなど)
- その場面の言い方を1つだけ決める
- 出勤前に3回声に出す
- その日は、その場面だけ意識する
1日に1場面までにすると、他の場面が崩れません。複数を同時に変えようとすると、どれも中途半端になります。
慣れてきたら、言いにくい言葉だけ取り出して練習する形に移せます。「恐れ入りますが」「差し支えなければ」は、口になじむまで時間がかかる言葉です。逆に「かしこまりました」「ありがとうございます」は回数が多いので自然に入ります。
練習の相手がいる場合は、断る場面を見てもらうと効きます。断る言い方はその場で使う機会が少なく、実践だけでは身につきにくいためです。
接客の言葉遣いで、断りと確認の言い方を先に決めておく
接客の言葉遣いの中で、その場で組み立てるのがいちばん難しいのが断る場面です。日常の会話に無い言い方なので、経験の回数も少なくなります。先に文を決めておくと、詰まらずに済みます。
断る場面は、中身で3つに分かれます。
| 場面 | 決めておく言い方 |
|---|---|
| 在庫がない | あいにく切らしております。次回入荷は○日の予定です |
| 取り扱いがない | 申し訳ございません、こちらでは扱いがございません |
| 対応できない | 恐れ入りますが、そちらはお受けしかねます |
「お受けしかねます」は、断り切る必要がある場面で使える言い方です。「できません」より角が立たず、「難しいです」よりあいまいさが残りません。やわらかくしすぎると断ったことが伝わらず、交渉が続きます。
確認の場面も、先に決めておくと安定します。会計時に毎回出るものなので、固定しておくと省略されにくくなります。
- ご注文は以上でよろしいでしょうか
- お支払いは現金でよろしいでしょうか
- こちら、Mサイズの紺で2点でございます
支払い方法の確認は、その日のレジが合うかどうかに直結します。押し間違いは締めのずれとして出るので、言い方を決めて毎回言う形にしておくと効きます。詳しくはレジが合わないときに書きました。
接客の言葉遣いは、店のマニュアルと食い違うことがある
接客の言葉遣いを自分で整えていくと、店のマニュアルと違う形になることがあります。この場合、どちらを取るかで迷います。
一般的な整理は、マニュアルがある場面はマニュアル、無い場面は自分で固定するという分け方です。マニュアルは店全体の統一のためにあるので、個人の判断で外すと、お客様から見て対応がばらつきます。
マニュアルの言い方が気になる場合は、個人で変えるのではなく店長に伝える形になります。言葉遣いは店の決まりとして扱うものなので、変えるなら全員で変えるほうが効きます。
マニュアルが古く、実際には誰も使っていない言い方が残っていることもあります。その場合も、実態に合わせて更新するのは店の判断です。自分だけ先に変えると、新しく入った人がどちらを覚えるか迷います。
接客の言葉遣いは、混雑時に短くしてよい
接客の言葉遣いは、丁寧であるほどよいとは限りません。混雑している時間帯に長い文を使うと、待っている人が増えます。
短くしてよい部分と、短くしないほうがよい部分があります。
| 部分 | 混雑時 | 理由 |
|---|---|---|
| あいさつ | 短くしてよい | 回数が多い |
| 前置き(クッション言葉) | 減らしてよい | 用件が遠くなる |
| 説明 | 短くしてよい | 必要なら聞かれる |
| 確認の復唱 | 短くしない | 取り違えが起きる |
| 待たせるひと言 | 短くしない | 不満に直結する |
短くするときは、敬語の種類を落とさずに文の長さだけ削るのが要点です。「少々お待ちくださいませ」を「少々お待ちください」にするのは長さの調整ですが、「ちょっと待って」にすると敬語そのものが外れます。
やってはいけない省略は、確認の省略です。「以上でよろしいでしょうか」を飛ばすと、その場では速く見えても、取り違えが起きたときに戻す時間のほうが長くなります。
混雑時の言葉遣いは、店として決めておくと人によってばらつきません。どこまで短くしてよいかを決めておくと、忙しい日でも水準がそろいます。
接客の言葉遣いを、新しく入った人に渡すとき
接客の言葉遣いを人に教える立場になったときは、一覧を渡すだけでは定着しません。場面と結びついていないと、文字として覚えて終わります。
渡し方として扱いやすいのは、次の順です。
- まず7つの定型句だけ渡す(迎える、受ける、待たせる、詫びる、礼を言う)
- 1週間はそれだけで回してもらう
- 断る場面の言い方を1つ足す
- 確認の復唱を足す
- 細かい言い回しは、気づいたときにその場で直す
断る場面を早めに渡すのが要点です。ここは自分で組み立てるのが難しく、経験の回数も少ないので、教わらないといつまでも苦手なまま残ります。
直すときは、その場で短く伝えるほうが入ります。あとでまとめて指摘すると、どの場面のことか分からなくなります。1回に1つにすると、受けるほうも負担が軽くなります。
接客の言葉遣いを、自分の形に落とす
接客の言葉遣いは、一覧を持っているだけでは使えません。自分が実際に言う形に書き直すと、口から出るようになります。
やり方は、場面を5つ書き出して、その横に自分の言い方を書くだけです。
| 場面 | 自分の言い方 |
|---|---|
| 迎える | |
| 待たせる | |
| 確かめる | |
| 断る | |
| 見送る |
書いてみると、決まっていない場面が見つかります。多くの場合、断る場面が空欄になります。ここが、その場で組み立てている部分です。
空欄を埋めたら、しばらくその言い方だけを使います。迷わなくなった時点で、次の場面に移れます。
よくある質問
接客の言葉遣いは、マニュアルどおりでないといけませんか
店のマニュアルがある場合はそちらが優先します。無い場合は、場面ごとに自分で決めて固定する形で構いません。重要なのは、同じ場面で毎回同じ言い方になっていることです。
「〜のほう」はなぜ避けるのですか
「お会計のほう」「お席のほう」のように、意味のない「ほう」が付く形です。間違いとまでは言えませんが、気になる人が一定数います。外しても意味が変わらないので、削るほうが無難です。
常連のお客様にも同じ言葉遣いをしますか
敬語の種類は落とさないまま、改まり具合だけ下げる形が扱いやすくなります。「少々お待ちくださいませ」を「少々お待ちください」にする程度です。敬語そのものを外すと、周りのお客様にも聞こえます。
方言が出てしまいます
接客の言葉遣いとして問題になるのは、敬語が崩れる場合です。イントネーションや語彙の方言は、むしろ親しみにつながることがあります。地域の店では、無理に標準語へ寄せないほうが自然になる場面もあります。
外国のお客様にはどう言えばいいですか
日本語で対応する場合は、敬語を保ったまま文を短くするほうが伝わります。丁寧にしようとして長くすると、かえって分かりにくくなります。品名と数と金額を先に言う形にすると、聞き取ってもらいやすくなります。
名前の読み方が分からないときは
無理に読まず「お客様」で通すか、確認してから呼びます。間違えて呼ぶより、確認するほうが丁寧に受け取られます。
練習する時間が取れません
出勤前の数十秒で足ります。1日1場面、3回声に出すだけでも、文字で覚えるより早く口から出るようになります。
言葉遣いを変えたら、お客様の反応は変わりますか
すぐに売上として出るものではありませんが、聞き返される回数と、行き違いの件数は先に動きます。そこを見ると、変化を確かめられます。
まとめ
接客の言葉遣いは、場面ごとに1つ決めて固定すると迷いがなくなります。来店、待たせる、受ける、確かめる、渡す、断る、見送るの7場面を押さえれば、日常の大半は回ります。
丁寧にしようとして崩れるのは、二重敬語、「させていただく」の多用、語尾が伸びる形の3つです。どれも足し算で起きるので、減らす方向で直せます。
直す順番は、語尾、待たせる場面のひと言、細かい言い回しの順です。効き目の大きい場所から手をつけると、途中でやめても改善が残ります。