商品の自主回収|店で最初にやる3つ
目次
自主回収は、連絡が入ってから店が動くまでの時間がそのまま被害の大きさになる場面です。売り場に残っている商品が、その間も売れ続けます。
この記事では、自主回収の連絡が入ったときに店で最初にやることを整理します。判断する話ではなく、決まった順番で動く話です。
結論:自主回収は「止める・集める・知らせる」の順
自主回収の連絡が入ったら、動く順番は3つです。売るのを止める、現物を集める、お客さまに知らせる。
この順番を変えないでください。知らせを先に作っていると、その間も売れます。まず売り場から下げます。
ポイントはここです。止めるのは、対象かどうかがはっきりしなくても先にやります。対象外だと分かれば戻せますが、売れてしまったものは戻せません。
一般には、本部や取引先から連絡が入る形が多くあります。ただ、お客さまからの申し出が先に来ることもあります。そのときも、順番は同じです。
最初にやる:売り場から下げる
最初にやるのは、売り場から現物を下げることです。
対象が分からないうちは、広めに下げます。同じ商品名で、製造日や賞味期限の範囲が分からないなら、その商品全部をいったん下げます。
下げた商品は、売り場に戻らない場所に置きます。バックヤードの中でも、通常の在庫と混ざらない場所を決めておきます。
| 下げる場所 | 起きること |
|---|---|
| 通常の在庫棚 | 戻される |
| 段ボールに入れて床 | 片づけで動く |
| 決めた隔離の場所 | 混ざらない |
| 表示を付けて隔離 | いちばん確実 |
4つ目の表示を付けてください。「自主回収対象・販売不可」と書いた紙を貼るだけで、別の人が触っても戻しません。
次にやる:範囲を確かめる
下げたあとに、対象の範囲を確かめます。
確かめるのは4つです。商品名、製造日か賞味期限、ロット番号、対象の理由。
理由によって、対応の重さが変わります。健康に関わる理由と、表示の誤りでは、お客さまへの伝え方が変わります。
ロット番号は、現物を見ないと分かりません。下げた商品を1つずつ確かめる作業になります。時間がかかるので、下げるほうを先にやる理由でもあります。
3つめ:お客さまに知らせる
範囲が分かったら、お客さまに知らせます。
知らせる先は2つです。すでに買った人と、これから来る人。
これから来る人には、売り場と入口に掲示します。買った人には、連絡先が分かる場合は個別に連絡します。
| 知らせる方法 | 届く相手 |
|---|---|
| 売り場の掲示 | これから来る人 |
| 入口の掲示 | 入店した全員 |
| 個別の連絡 | 連絡先が分かる人 |
| 本部からの告知 | 広く届く |
連絡先が分からない場合が大半です。掲示が主な手段になるので、書き方が大事になります。
掲示に書く6つ
自主回収の掲示に書くのは、6つです。
対象の商品名、対象の範囲、理由、お客さまにお願いすること、返金や交換の扱い、問い合わせ先。
4つ目を必ず書いてください。「食べないでください」「使用を中止してください」まで書かないと、掲示を読んだ人が何をすればよいか分かりません。
6つ目の問い合わせ先は、店の電話番号にするか、本部の窓口にするかを先に決めます。店の番号にすると、営業中の電話が増えます。
対象商品を買った人が来たとき
対象の商品を買った人が来たときの対応も、先に決めておきます。
決めるのは3つです。レシートが無い場合の扱い、返金か交換か、開封済みの扱い。
一般には、自主回収の場合はレシートが無くても応じる形が取られています。通常の返品とは扱いが違います。
開封済み、使用済みの場合も同じです。回収の目的は、使われないようにすることです。返品の可否を判断する場面ではありません。
現物を受け取ったら、記録に残します。日時、商品、数量、受け取った人。回収の実績として集計されることがあります。
対象かどうか分からないと聞かれたとき
お客さまから「これは対象ですか」と聞かれる場面があります。
その場で推測しないでください。対象の範囲は、製造日やロットで決まります。分からないなら、確かめてから答えます。
確かめられない場合は、対象として扱うほうが安全です。対象外だったものを回収しても、健康の被害は起きません。逆は起きます。
記録に残す
自主回収は、記録が求められることがあります。
残すのは、連絡を受けた日時、下げた日時、下げた数量、回収した数量、掲示した日、終了した日です。
食品の自主回収については、行政への届出が必要とされる場合があります。届出の要否や手続きは、本部か、所轄の保健所に確かめてください。店の判断で進めないでください。
なお、健康に被害が出る可能性がある商品の回収については、食品衛生法や食品表示法に基づく決まりがあるとされています。判断に迷う場合は、必ず所轄の保健所に確かめてください。
終わったあとに確かめる
回収が終わったあと、売り場に戻っていないかを確かめます。
戻る経路は3つあります。バックヤードから補充された、別の店から移された、返品されたものが戻された。
どれも、隔離の表示があれば防げます。表示が外れていないかを、終了の前に確かめます。
終了の判断は、店ではなく本部か取引先が出します。店の判断で「もう大丈夫」としないでください。
従業員への伝え方
自主回収の情報は、全員に同じ内容が届く形にします。
一部の人だけが知っていると、知らない人が売り場に戻します。申し送りと掲示の両方に入れます。
伝えるのは4つです。対象の商品、下げてある場所、お客さまに聞かれたときの答え、問い合わせ先。
3つ目がいちばん要ります。その場で答えられないと、お客さまを待たせて責任者を探すことになります。
起きる前に決めておく
自主回収は、起きてから手順を考えると間に合いません。
先に決めておくのは4つです。隔離の場所、掲示の様式、連絡を受ける窓口、報告する先。
このうち掲示の様式は、空欄を埋めれば出せる形にしておきます。文面をその場で考えると、1時間以上かかることがあります。
一般には、年に1回、手順を読み合わせる形が取られています。実際に起きる頻度は低いので、読まないと忘れます。
回収の対象になる理由
自主回収の理由は、大きく4つに分かれます。
| 理由 | 例 |
|---|---|
| 健康に関わる | 異物、菌、アレルギーの原因物質の表示漏れ |
| 表示の誤り | 原材料、期限、原産地 |
| 品質 | 想定より早く傷む、性能が出ない |
| 法令の基準 | 基準値を超えた成分 |
1つ目がいちばん急ぎます。とくにアレルギーの原因物質が表示から漏れていた場合は、食べた人に強い症状が出ることがあります。
一般に、アレルギーの原因となる食品のうち特定原材料は表示が義務とされています。表示の誤りは、それだけで回収の理由になり得ます。詳しくは消費者庁や所轄の保健所に確かめてください。
掲示を出す場所
掲示は、出す場所で届く人数が変わります。
一般には、次の4か所に出す形が取られています。入口、対象商品の売り場、レジ、店のウェブサイト。
2つ目を忘れないでください。入口だけだと、その商品を買いに来た人が売り場で気づけません。商品が無いことだけが分かって、店員に聞くことになります。
掲示の期間も決めます。短すぎると届かず、長すぎると誰も読まなくなります。本部の指示がある場合はそれに従います。
問い合わせが増えたとき
回収の掲示を出すと、問い合わせが増えます。
答える内容を1枚にまとめておくと、誰が受けても同じ答えになります。書くのは、対象の範囲、返金の扱い、健康への影響、問い合わせ先の4つ。
3つ目は、店で判断しないでください。「体調に不安がある場合は医療機関にご相談ください」と伝えて、詳しい内容は本部か窓口につなぎます。
一般には、答えられないことを答えないと決めておくほうが、結果として信用を落としません。推測で答えると、あとから訂正することになります。
回収と返品の違い
自主回収と通常の返品は、別のものとして扱います。
返品は、お客さまの都合や商品の不具合について、店が条件を決めて応じるものです。自主回収は、売った側から回収を呼びかけるものです。
条件の付け方が変わります。返品では、レシート、期間、開封の有無で線を引きます。自主回収では、これらを条件にしないのが一般的です。
レジの操作も変わることがあります。売上の取り消しとして処理するのか、別の科目で処理するのかを先に決めておかないと、当日に迷います。
回収の連絡をどこから受けるか
回収の連絡がどこから入るかを決めておきます。
一般には、本部、取引先、メーカーの3つのどれかです。店の代表電話で受けるか、担当者の携帯で受けるかまで決めておきます。
決めていないと、受けた人がその重さを判断できません。「あとで伝えます」で半日遅れることがあります。
受けたときのメモの様式も用意します。商品名、範囲、理由、いつまでに、連絡元の5つが書ければ足ります。
回収が終わったあとに見直す
回収が終わったら、手順を見直します。
見るのは3つです。連絡を受けてから下げるまでにかかった時間、掲示を出すまでにかかった時間、戻りが1件も無かったか。
1つ目が長いほど、その間に売れています。30分を超えていたなら、連絡の受け方か、下げる手順に原因があります。
見直した内容は、手順の紙に書き足します。次に起きるのは数年後かもしれません。記憶では残りません。
まとめ
自主回収は、止める・集める・知らせるの順で動きます。
- 売るのを止めるのが先。知らせを作っている間も売れる
- 対象がはっきりしないうちは広めに下げる
- 下げた商品は表示を付けて隔離する。通常の在庫と混ぜない
- 掲示にはお客さまにお願いすることを必ず書く
- レシートが無くても、開封済みでも応じる。回収の目的は使われないようにすること
食品の自主回収には、行政への届出が必要とされる場合があります。届出の要否や手続きは、本部と所轄の保健所に確かめてください。店の判断で進めないでください。
よくある質問
Q. 自主回収の連絡が入ったら何からやりますか。 A. 売り場から下げることです。知らせを作っている間も売れます。掲示は下げたあとで足ります。
Q. 対象かどうか分からないときは。 A. 広めに下げてください。対象外だと分かれば戻せますが、売れてしまったものは戻せません。
Q. 下げた商品をどこに置きますか。 A. 通常の在庫と混ざらない場所です。「自主回収対象・販売不可」と書いた紙を貼ってください。別の人が触っても戻しません。
Q. 対象の範囲はどう確かめますか。 A. 商品名、製造日か賞味期限、ロット番号、理由の4つです。ロット番号は現物を見ないと分かりません。
Q. 掲示に何を書きますか。 A. 商品名、範囲、理由、お願いすること、返金や交換の扱い、問い合わせ先の6つです。「使用を中止してください」まで書いてください。
Q. 問い合わせ先は店の番号でよいですか。 A. 先に決めておいてください。店の番号にすると営業中の電話が増えます。本部の窓口にする選択肢もあります。
Q. レシートが無い場合はどうしますか。 A. 自主回収では応じる形が一般的です。通常の返品とは扱いが違います。
Q. 開封済みでも受け取りますか。 A. 受け取ってください。回収の目的は、使われないようにすることです。返品の可否を判断する場面ではありません。
Q. 受け取ったあと何を残しますか。 A. 日時、商品、数量、受け取った人です。回収の実績として集計されることがあります。
Q. 「これは対象ですか」と聞かれました。 A. 推測で答えないでください。確かめられない場合は、対象として扱うほうが安全です。対象外を回収しても被害は起きません。
Q. 行政への届出は必要ですか。 A. 食品では必要とされる場合があります。本部と所轄の保健所に確かめてください。店の判断で進めないでください。
Q. いつ終わりにしますか。 A. 店の判断で終わりにしないでください。本部か取引先が終了を出します。
Q. 終わったあと何を確かめますか。 A. 売り場に戻っていないかです。補充、他店からの移動、返品の3つの経路で戻ります。隔離の表示が外れていないか確かめます。
Q. 従業員にどう伝えますか。 A. 申し送りと掲示の両方に入れてください。一部の人だけが知っていると、知らない人が売り場に戻します。
Q. 起きる前に何を決めておきますか。 A. 隔離の場所、掲示の様式、連絡を受ける窓口、報告する先の4つです。掲示は空欄を埋めれば出せる形にしておいてください。
Q. 回収と返品はどう違いますか。 A. 返品は店が条件を決めて応じるもの、自主回収は売った側から呼びかけるものです。レシートや期間を条件にしないのが一般的です。
Q. レジでどう処理しますか。 A. 売上の取り消しか別の科目かを先に決めておいてください。当日に迷うと、処理がばらばらになります。
Q. 掲示はどこに出しますか。 A. 入口、対象商品の売り場、レジ、ウェブサイトの4か所です。売り場を忘れないでください。買いに来た人が気づけません。
Q. 問い合わせが増えました。 A. 答える内容を1枚にまとめてください。健康への影響は店で判断しないでください。医療機関か本部の窓口につなぎます。
Q. 連絡はどこから入りますか。 A. 本部、取引先、メーカーのどれかです。受ける窓口と、メモの様式を決めておいてください。受けた人が重さを判断できないと半日遅れます。
Q. 終わったあとに何をしますか。 A. 下げるまでの時間、掲示までの時間、戻りが無かったかの3つを見てください。手順の紙に書き足します。次は数年後かもしれません。