売り場づくりの基本|毎日そろえる3つだけ
目次
売り場づくりは、担当者が変わるたびに形が変わってしまう業務のひとつです。前の人が作った並びを次の人が崩し、気づくと最初とは別の売り場になっています。
この記事では、毎日の営業のなかで売り場づくりをどう保つかを整理します。大きな改装の話ではなく、開店前の10分と営業中の手直しで何をそろえるかという話です。
結論:売り場づくりで毎日そろえるのは3つだけ
売り場づくりを毎日の作業にするなら、そろえるものは3つで足ります。前に出す、面をそろえる、値段を合わせるの3つです。
理由は、この3つがお客さまが商品にたどり着けるかどうかを決めているからです。奥に下がった商品は無いことになり、向きがばらばらの棚は選びにくくなり、値段が読めない商品は手に取られません。
ポイントはここです。項目を増やすほど、忙しい日に全部飛びます。3つに絞って毎日必ずやるほうが、10項目を週に1回やるより売り場は保たれます。
一般には、売り場づくりというと季節の展開や大きな什器の入れ替えを思い浮かべます。ただ、そうした展開は月に1回か2回です。残りの28日を支えているのは、この3つの繰り返しです。
前に出す|売り場づくりでいちばん効く作業
前に出す作業は、棚の奥に下がった商品を手前に引く作業です。前進陳列やフェイスアップと呼ばれます。
売れた分だけ棚の前が空きます。空いたまま置くと、棚の前列が抜けた状態になります。お客さまから見ると、売り切れた棚か、手入れされていない棚に見えます。
一般には、開店前と、お客さまが少ない時間帯に1回ずつ行っている店が多くあります。夕方に売れる店なら、昼過ぎに1回入れておくと夕方の見え方が変わります。
引く順番は、よく売れる棚からです。時間が足りない日に全部を回ろうとすると、いちばん見られている棚が手つかずのまま残ります。
面をそろえる|どの向きを正面にするか
面をそろえるのは、商品の正面を通路側に向ける作業です。
そろえるといっても、どの向きを正面と呼ぶかを決めていない店では作業になりません。缶なら商品名の面、箱なら写真の面、袋なら表面、と決めておきます。
決め方は難しくありません。値段と商品名が同時に読める面を正面にします。これだけで担当者による違いがほとんど消えます。
新しく入った人には、正面をそろえた棚の写真を1枚見せるのが早い方法です。言葉で説明するより、写真1枚のほうが伝わります。
値段を合わせる|いちばん苦情になりやすい部分
値段の表示は、売り場づくりのなかでいちばん苦情につながりやすい部分です。
棚の値札と実際の商品がずれていると、レジで金額が違うことになります。お客さまからは、店が値段を上げたように見えます。
一般に、値段がずれる原因は3つあります。商品を別の場所に置いた、値段が変わったのに値札を替えていない、特売の札を外し忘れたの3つです。
なお、値札に書いた価格と、レジで請求する価格が違う状態は、景品表示法の有利誤認にあたる場合があるとされています。意図がなくても対象になり得ます。判断に迷う表示は、消費者庁や所轄の自治体の窓口に確かめてください。
毎日の点検を3分で終わらせる形
3つを毎日やるなら、点検の形を決めておくと続きます。
| 見るもの | 何を確かめるか | 目安の時間 |
|---|---|---|
| 前列 | 奥に下がった商品を手前に引く | 3分 |
| 向き | 正面が通路を向いているか | 2分 |
| 値札 | 棚の値札と商品が一致しているか | 2分 |
| 空き | 欠品の穴が開いていないか | 1分 |
4つ目の欠品は、見つけたら埋めるのではなく記録します。在庫が無いなら埋められないので、発注につなげるほうが意味があります。
この表を1枚にして、開店前のチェック表に足します。別の紙にすると、見に行く手間で抜けます。
目線の高さから先に手を入れる
棚には、手が届きやすく目に入りやすい高さがあります。床から85cmから150cmあたりがそこにあたり、ゴールデンラインと呼ばれます。
時間が限られている日は、この高さの棚から手を入れます。いちばん見られている場所なので、同じ3分でも効き方が違います。
一番下の段と一番上の段は、後回しでかまいません。ただし一番下の段は汚れが目立つので、清掃のときに一緒に見る形にしておきます。
入口から3歩の範囲を決めておく
入口から3歩ほどの範囲は、店の印象がほぼ決まる場所です。
ここに段ボールが置かれていたり、台車が止まっていたりすると、それだけで店全体が散らかって見えます。売り場づくりの話をするときに、まずこの範囲を空ける決まりを作ると効果が早く出ます。
一般には「入口に物を置かない」と決めている店が多くあります。ただ、置く場所を決めていないと結局そこに戻ります。逃がす先を先に決めてください。
商品が少ない日の見せ方
在庫が入らない日や、売れ行きが読めずに品薄になる日があります。
棚が空いているとき、残った商品を広げて並べると、かえって寂しく見えます。一般には、面を減らして固めるほうが見え方が保たれます。
| 状態 | よくある対応 | 見え方が保たれる対応 |
|---|---|---|
| 1商品が品薄 | 間を空けて広げる | 面を減らして寄せる |
| 棚全体が品薄 | そのまま開けておく | 什器を1段減らす |
| 特売品が完売 | 札だけ残す | 札を外して記録する |
3つ目の札だけ残す形は避けてください。買いに来た人が探し続けることになります。完売したことが分かる表示に替えるか、入荷の予定を書きます。
触ってよい範囲を決める
売り場づくりを全員でやると、人によって並びが変わるという問題が出ます。
一般には、触ってよい範囲を決める方法が取られています。担当者以外は前に出すことと向きをそろえることまで、並び順や場所の変更は担当者が行う、という線です。
線を引かないと、よかれと思って動かした商品が行方不明になります。「戻す場所が分からなくなった」は、実際いちばん多いトラブルです。
図面を1枚だけ作る
売り場の配置は、A4で1枚の図面にしておくと引き継ぎが早くなります。
細かい商品まで書く必要はありません。什器の位置と、どの区画に何の分類が入るかだけで足ります。書きすぎると更新されず、古い図面が残ります。
図面があると、新しく入った人に「この商品はどこですか」と聞かれたときに指で示せます。売り場案内の話とつながる部分です。
写真で残す
正しい状態を写真で残しておくと、言葉で伝えるより早く戻せます。
撮るのは、開店直後の一番整った状態です。棚ごとに1枚、通路から撮った写真を1組そろえます。バックヤードに貼っておくか、共有の場所に置きます。
写真は季節の展開を変えたら撮り直します。古い写真が残っていると、そちらに戻そうとする人が出ます。撮った日付を必ず書いてください。
営業中の手直しをいつやるか
売り場づくりは開店前だけの作業ではありません。営業中に崩れていきます。
一般には、お客さまが途切れた時間に短く入れる形が取られています。1回5分でも、1日3回入れば15分になります。
このとき大事なのは、手直しをしている姿がお客さまに背中を向けた形にならないことです。棚に向かって作業していると、声をかけにくく見えます。近くにお客さまが来たら一度手を止めます。
清掃と一緒に回す
売り場づくりと清掃は、同じ動きのなかでまとめたほうが早く終わります。
棚の前を通りながら、前に出しつつ汚れを見ます。別々に回ると2周することになります。
| 回るもの | 一緒に見るもの |
|---|---|
| 前出し | 棚板のほこり、値札の傾き |
| 向きそろえ | 空き箱、はみ出したPOP |
| 値札の確認 | 期限、破損した商品 |
期限の確認を売り場づくりに混ぜてよいかは、扱う商品で変わります。食品を扱う店では、期限の確認を独立した作業にしている店が多くあります。食品の衛生の扱いについては、所轄の保健所に確かめてください。
記録に残すこと
売り場づくりは記録が残りにくい作業です。やったかどうかが後から分かりません。
残すのは3つで足ります。やった時刻、担当した人、気づいたことの3つです。
3つ目の「気づいたこと」がいちばん使えます。欠品が続いている商品、値札が合わなかった商品、動かされていた商品が並ぶと、手を打つ場所が見えます。
見直すきっかけを決めておく
売り場の配置は、きっかけを決めておかないと何年も変わりません。
一般には、季節の切り替わり、新商品の入荷、売れ行きの変化の3つがきっかけになります。月に1回、記録を見ながら15分だけ話す時間を作る形が続きやすい方法です。
このとき、売れていない商品を減らす話を必ず入れてください。増やす話だけをすると、棚が足りなくなって全体が窮屈になります。
什器と照明も売り場づくりのうち
売り場づくりというと商品の並びの話になりますが、什器と照明も同じくらい見え方を変えます。
棚板が傾いていたり、什器の脚が錆びていたりすると、置いてある商品まで古く見えます。一般には、什器の点検を清掃のときに一緒に見る形が取られています。
照明は切れてから気づきます。切れた蛍光灯やLEDが1本あるだけで、その棚だけ暗く沈みます。気づいた人が報告する形にしておくと、交換までの時間が短くなります。
高いところの交換作業は、脚立の使い方と、1人でやらない決まりを先に確かめてください。転落は店舗でも起きています。作業の安全については、所轄の労働基準監督署に確かめてください。
通路の幅を確かめる
売り場づくりで見落とされやすいのが、通路の幅です。
商品を増やすと、什器がせり出して通路が狭くなります。狭くなった通路は、買い物かごを持った人がすれ違えません。すれ違えない通路では、奥まで入ってもらえなくなります。
一般には、主要な通路で120cm前後、棚と棚のあいだで90cm前後を目安としている店が多くあります。ベビーカーや車いすが通る店では、もう少し広く取ります。
なお、避難の経路にあたる通路には、物を置いてはならないとされています。通路の幅や避難口の扱いは建物と用途で変わるので、所轄の消防署に確かめてください。
まとめ
売り場づくりは、毎日そろえる3つに絞ると続きます。
- 前に出す、面をそろえる、値段を合わせるの3つ
- 時間が足りない日は、よく売れる棚と目線の高さから
- 値札と実際の価格のずれは、苦情だけでなく法令の問題にもなり得る
- 触ってよい範囲を決める。並び順の変更は担当者が行う
- 整った状態を写真で残し、撮った日付を書く
食品の期限や衛生の扱い、価格表示については社内の決まりと法令があります。判断に迷う部分は、所轄の保健所や消費者庁の窓口に確かめてください。
よくある質問
Q. 売り場づくりに毎日どれくらい時間をかけますか。 A. 3つに絞れば10分前後で回せます。全部の棚を毎日やろうとしないでください。よく売れる棚と目線の高さから入り、残りは曜日で分けると続きます。
Q. 前に出す作業を忘れます。 A. 開店前のチェック表に1行入れてください。「前出し」と書くだけで抜けが減ります。別の紙にすると見に行かなくなります。
Q. 正面がどの面か分かりません。 A. 値段と商品名が同時に読める面を正面にしてください。迷う商品は、決めて写真に撮っておくと次から揃います。
Q. 人によって並びが変わります。 A. 触ってよい範囲を決めてください。前出しと向きそろえは全員、並び順と場所の変更は担当者という線が一般的です。
Q. 値札がずれていることに気づきました。 A. その場で正しい値段に直してください。すでに買われている場合は責任者に報告します。表示と請求が違う状態は法令の問題になり得るので、自己判断で放置しないでください。
Q. 商品が足りなくて棚が空きます。 A. 広げずに、面を減らして寄せてください。間を空けて並べると、かえって寂しく見えます。空いた分は什器を1段減らす方法もあります。
Q. 特売が終わったあとの札はどうしますか。 A. すぐ外してください。札だけ残っていると、買いに来た人が探し続けます。完売なら完売と分かる表示に替えます。
Q. 営業中に売り場を直していると声をかけられにくいようです。 A. 棚に向かって作業していると背中を向けた形になります。近くにお客さまが来たら一度手を止めて、体を通路側に向けてください。
Q. 図面を作ったほうがよいですか。 A. A4で1枚あると引き継ぎが早くなります。什器の位置と分類だけで足ります。細かく書くと更新されず、古い図面が残ります。
Q. 写真はどこに置きますか。 A. バックヤードに貼るのがいちばん見られます。撮った日付を必ず書いてください。日付がないと、古い写真に戻そうとする人が出ます。
Q. 入口に段ボールを置いてしまいます。 A. 置かないと決めるだけでは戻ります。逃がす場所を先に決めてください。入口から3歩の範囲は、店の印象がほぼここで決まります。
Q. 清掃と売り場づくりを分けるべきですか。 A. 同じ動きでまとめたほうが早く終わります。棚の前を通りながら、前出しと汚れを一緒に見ます。別々だと2周することになります。
Q. 期限の確認も一緒にやってよいですか。 A. 扱う商品で変わります。食品を扱う店では独立した作業にしている店が多くあります。衛生の扱いは所轄の保健所に確かめてください。
Q. 売り場を見直すきっかけがありません。 A. 月に1回15分だけ時間を取ってください。記録に残した「気づいたこと」を並べると、手を打つ場所が見えます。
Q. 棚が窮屈になってきました。 A. 減らす話をしていないためです。増やす話だけを続けると必ずこうなります。売れていない商品を外す判断を、同じ場で決めてください。