従業員同士の言葉|売り場で聞こえる話し方
目次
従業員同士の言葉は、お客さまに向けていないぶん、気が緩みやすい部分です。接客の言葉づかいは指導されても、売り場での仲間内の会話は放置されがちです。
この記事では、従業員同士の言葉のうち、お客さまに聞こえてしまう場面をどう整えるかを整理します。私語を禁じる話ではなく、聞こえ方の話です。
結論:従業員同士の言葉は「聞こえている前提」で決める
従業員同士の言葉で大事なのは、売り場では常に聞こえている前提で話すことです。
お客さまは、こちらが思っているよりずっと近くにいます。棚の反対側、通路の角、レジの後ろ。姿が見えなくても声は届きます。
ポイントはここです。内容を制限するのではなく、場所を分けます。聞こえてよい話は売り場で、聞かれたくない話はバックヤードで。この線を引くほうが守られます。
一般には「私語をしない」と決める店が多くあります。ただ、業務の連絡も私語に見えるため、線が引けず結局あいまいになります。場所で分けるほうが実行できます。
売り場で話してよいこと
売り場で交わしてよいのは、その場の業務に必要な短い連絡です。
| 話してよい | 例 |
|---|---|
| 在庫の確認 | 「バックにございますか」 |
| 引き継ぎ | 「こちらのお客さま、お願いします」 |
| 場所の確認 | 「レジに入ります」 |
| 応援の要請 | 「レジ、お願いします」 |
どれも敬語で話します。お客さまに聞こえる場所なので、仲間内の口調で話すと、店全体が雑に見えます。
逆に、シフトの話、休憩の相談、体調の話、他のお客さまの話は売り場でしないでください。どれもお客さまには関係がなく、聞こえると印象が下がります。
呼び方をそろえる
従業員同士の呼び方は、売り場では名字にさんを付ける形が一般的です。
あだ名や下の名前の呼び捨ては、仲のよさが伝わる一方で、お客さまからは店の格が下がって聞こえます。
役職で呼ぶ店もあります。「店長」「主任」と呼ぶ形です。ただし、お客さまの前で役職を連呼すると、誰に決定権があるかが伝わります。苦情の場面では、それが交渉の材料になることがあります。
お客さまの前で使わない言葉
従業員同士の言葉のうち、お客さまの前で使わないと決めておく言葉があります。
内輪の略語がその代表です。「バック」「前出し」「ロス」「PC」。意味が伝わらないだけでなく、隠して話しているように聞こえます。
もう1つは、お客さまを指す言い方です。「あの人」「さっきの客」は、聞こえた瞬間に印象が変わります。「お客さま」で統一します。
| 避けたい | 言い換え |
|---|---|
| あの人 | あちらのお客さま |
| さっきの客 | 先ほどのお客さま |
| クレーム | お申し出 |
| 売れ残り | 残っている商品 |
4つ目のように、商品の言い方にも同じことが起きます。売れ残りという言葉が聞こえると、買おうとしていた人の手が止まります。
声の大きさと場所
内容が適切でも、声が大きいと売り場の空気が変わります。
離れた場所にいる人を呼ぶときは、大声で呼ばずに近づきます。店内の端から端まで声が飛ぶと、お客さまは会話の中にいる形になります。
一般には、インカムや内線を使う店が増えています。道具があるなら、大声で呼ぶ理由がなくなります。
道具が無い店では、呼びに行くと決めておきます。手間に見えますが、店内の印象は明らかに変わります。
笑い声の扱い
従業員同士の笑い声は、内容が分からないぶん、自分のことを言われていると感じさせることがあります。
売り場で笑うこと自体は悪いことではありません。明るい店のほうが入りやすくなります。ただ、お客さまのほうを見ながら笑う形は避けます。
一般には、笑う場所をバックヤードに寄せる形が取られています。売り場では、話の内容が明るく聞こえる程度にとどめます。
注意や指導を売り場でしない
従業員同士の言葉でいちばん避けたいのは、売り場での注意です。
注意されている人も、聞いているお客さまも、どちらも居心地が悪くなります。注意の内容が正しくても、場所が違えば伝わり方が変わります。
売り場で伝えてよいのは、その場で直さないと危ないことだけです。それ以外はバックヤードで、その日のうちに伝えます。
伝え方も決めておきます。人前で言わない、行動について言う、その日のうちに言うの3つです。
新しく入った人への言葉
新しく入った人に対する言葉は、周りが思うより強く響きます。
分からないことを聞いたときの返し方で、次に聞けるかどうかが決まります。「前に言ったよね」「見て覚えて」と返されると、聞かなくなります。
聞かなくなった結果は、自己流の作業と、間違いの放置として出ます。言葉づかいの話が、そのまま業務の質につながる部分です。
一般には、「何回でも聞いてください」と最初に言葉にして渡す形が取られています。言われていないと、聞いてよいかどうかが分かりません。
他の従業員の話をしない
従業員同士の言葉で、その場にいない人の話は避けます。
仕事のやり方についての話でも、本人がいない場で交わすと、伝わり方が変わります。売り場で交わせば、お客さまにも聞こえます。
必要な話なら、本人か責任者に直接伝える形にします。改善につながらない話は、そもそもしないほうが早く収まります。
敬語をどこまで使うか
従業員同士でどこまで敬語を使うかは、店によって違います。
売り場では敬語、バックヤードでは崩してよいという線を引く店が多くあります。この形なら、切り替えの基準が場所なので迷いません。
年齢や勤続の長さで上下が逆転する職場もあります。年下が先輩ということが普通に起きます。このとき、敬語の使い方で摩擦が出ることがあります。
一般には、全員が敬語でそろえるほうが摩擦が少なくなります。誰が誰に敬語を使うかを考えなくてよくなります。
| 線の引き方 | 起きやすいこと |
|---|---|
| 場所で分ける | 迷わない。守られやすい |
| 役職で分ける | 逆転すると気まずい |
| 年齢で分ける | 勤続と食い違う |
| 全員が敬語 | 摩擦がいちばん少ない |
決めたことを1枚にする
従業員同士の言葉について決めたことは、1枚にまとめます。
書くのは4つで足ります。売り場で話してよいこと、呼び方、使わない言葉、注意をする場所。
書いていないと、人によって違う基準で動きます。新しく入った人には、この1枚を最初に渡します。
書いたものは、休憩室に貼るのがいちばん見られます。売り場に貼ると、お客さまの目に入って別の印象になります。
記録に残す
言葉づかいについて渡した内容は、記録に残しておきます。
残すのは、日付、渡した相手、渡した内容の3つ。渡していないことを、できていないと責めないためでもあります。
新しい人が増えるたびに同じ説明をすることになりますが、記録があれば、どこまで渡したかが分かります。
インカムを使うときの言葉
インカムを使う店では、言葉づかいがそのまま全員に届きます。
売り場に立っている人の耳元で鳴るので、接客中に長い連絡が入ると、目の前の会話が途切れます。
一般には、1回の連絡を10秒以内にする形が取られています。長くなる話は、バックヤードに呼んでから話します。
| 決めること | 中身 |
|---|---|
| 長さ | 1回10秒以内 |
| 呼びかけ | 誰に向けた連絡かを先に言う |
| 返事 | 受け取ったことを短く返す |
| 雑談 | 入れない。全員に届く |
2つ目が抜けると、全員が自分宛てかどうかを考えます。名前を先に言うだけで、他の人は聞き流せます。
交代と休憩の伝え方
売り場を離れるときの言葉も、従業員同士の言葉のうちです。
黙って離れると、残った人が全部を抱えます。「休憩に入ります」「レジを代わります」と声に出すだけで、残る人が動きを変えられます。
一般には、戻る時刻を添える形が取られています。「15時に戻ります」まで言うと、残る人が配置を組めます。
戻ったときも同じです。「戻りました」と言葉にすると、待っていた人がそこで手を放せます。
引き継ぎの言葉を短くそろえる
売り場での引き継ぎは、短くそろえておくと抜けません。
伝えるのは3つです。誰を、どこまで、次に何を。この順番で言うと、10秒で終わります。
「こちらのお客さま、サイズをお探しです。バックを見てまいります」で足ります。背景や経緯を足さないでください。長くなるほど、聞いた側が要点を探します。
一般に、引き継ぎで抜けるのは3つ目です。次に何をするかが抜けると、受けた側が最初から聞き直します。
言葉づかいが売上に出る場面
従業員同士の言葉は、直接は売上に関係ないように見えます。
ただ、入口で立ち止まったお客さまが引き返す理由に、店内の会話の雰囲気が入ることがあります。何を話しているかが分からなくても、雑に聞こえる会話は伝わります。
一般に、こうした離脱は記録に残りません。入らずに帰った人は数えられないためです。だからこそ、数字で直せない部分として扱われます。
手の打ち方は単純です。開店前に1分だけ、今日の売り場での言葉づかいを確かめる。決めた4つを読み上げるだけで足ります。
まとめ
従業員同士の言葉は、聞こえている前提で場所を分けると整います。
- 内容を制限するのではなく、売り場とバックヤードで分ける
- 売り場で交わすのはその場の業務に必要な短い連絡だけ。それも敬語で
- 呼び方は名字にさん。お客さまを「あの人」と呼ばない
- 注意と指導を売り場でしない。その日のうちにバックヤードで
- 全員が敬語でそろえるほうが、年齢と勤続の逆転による摩擦が少ない
職場での言動については、法令上の決まりが関わる場面があります。指導と叱責の線引きに迷う場合は、社内の担当か、所轄の労働基準監督署に確かめてください。
よくある質問
Q. 私語を全部やめさせるべきですか。 A. 内容ではなく場所で分けてください。売り場では業務の連絡だけ、それ以外はバックヤード。私語を禁じると、業務の連絡まで止まります。
Q. 売り場で話してよいことは何ですか。 A. 在庫の確認、引き継ぎ、場所の確認、応援の要請です。どれも敬語で話してください。仲間内の口調だと店全体が雑に見えます。
Q. 呼び方はどうしますか。 A. 売り場では名字にさんを付けてください。あだ名や呼び捨ては、お客さまからは店の格が下がって聞こえます。
Q. 役職で呼んではいけませんか。 A. かまいませんが、苦情の場面では誰に決定権があるかが伝わります。連呼すると交渉の材料になることがあります。
Q. 内輪の略語が出てしまいます。 A. お客さまの前では使わないでください。隠して話しているように聞こえます。「バック」「ロス」などが代表です。
Q. お客さまをどう呼びますか。 A. 「お客さま」で統一してください。「あの人」「さっきの客」は、聞こえた瞬間に印象が変わります。
Q. 離れた人を呼ぶときはどうしますか。 A. 大声で呼ばずに近づいてください。店内の端から端まで声が飛ぶと、お客さまが会話の中にいる形になります。
Q. 笑い声はいけませんか。 A. 笑うこと自体は悪くありません。お客さまのほうを見ながら笑う形を避けてください。自分のことだと感じさせます。
Q. 売り場で注意してよい場面はありますか。 A. その場で直さないと危ないことだけです。それ以外はバックヤードで、その日のうちに伝えてください。
Q. 注意の仕方で気をつけることは。 A. 人前で言わない、行動について言う、その日のうちに言うの3つです。内容が正しくても、場所が違えば伝わり方が変わります。
Q. 新しい人に何度も同じことを聞かれます。 A. 「何回でも聞いてください」と最初に言葉にして渡してください。聞かなくなった結果は、自己流の作業と間違いの放置として出ます。
Q. その場にいない人の話をしてしまいます。 A. 売り場では避けてください。必要な話なら本人か責任者に直接伝えます。改善につながらない話は、しないほうが早く収まります。
Q. 従業員同士で敬語を使うべきですか。 A. 全員が敬語でそろえるほうが摩擦が少なくなります。年下が先輩という逆転が普通に起きるためです。
Q. 決めたことをどう共有しますか。 A. 1枚にまとめて休憩室に貼ってください。売り場に貼ると、お客さまの目に入って別の印象になります。
Q. 記録は必要ですか。 A. 日付、相手、渡した内容の3つを残してください。渡していないことを、できていないと責めないためでもあります。
Q. インカムでの連絡はどのくらいの長さにしますか。 A. 1回10秒以内です。接客中の人の耳元で鳴るので、長いと目の前の会話が途切れます。長い話はバックヤードで。
Q. インカムで誰宛てか分かりません。 A. 名前を先に言ってください。呼びかけが無いと、全員が自分宛てかどうかを考えます。
Q. 休憩に入るときに何と言いますか。 A. 「休憩に入ります。15時に戻ります」と戻る時刻まで添えてください。残る人が配置を組めます。
Q. 戻ったときも声に出しますか。 A. 「戻りました」と言ってください。待っていた人がそこで手を放せます。
Q. 引き継ぎで何を伝えますか。 A. 誰を、どこまで、次に何をの3つです。背景や経緯を足さないでください。長くなるほど要点を探されます。
Q. 言葉づかいが売上に関係しますか。 A. 入口で引き返す理由に、店内の会話の雰囲気が入ることがあります。入らずに帰った人は数えられないので、記録には残りません。
Q. どうやって保ちますか。 A. 開店前に1分だけ、決めた4つを読み上げてください。売り場で話してよいこと、呼び方、使わない言葉、注意をする場所の4つです。