店舗の申し送り|次の人が困らない書き方
目次
申し送りは、シフトが交代するときに次の人へ引き継ぐ連絡のことです。書いていないせいで起きるトラブルは、店の中でかなりの割合を占めます。取り置きが渡らない、苦情の続きが分からない、機器の不調が放置される。どれも「言ったつもり」から始まります。
この記事では、申し送りに何を書くか、どう書くと伝わるかを整理します。長く書く必要はなく、項目が決まっていれば数行で足ります。
結論:申し送りは「口で言わない」ことが要点
申し送りが伝わらない原因のほとんどは、口頭で済ませていることです。交代のタイミングは双方が忙しく、聞いたほうも動きながら聞いています。その場では分かったつもりでも、数時間後には残っていません。
ポイントはここです。書けば、聞いた側が忘れても残ります。口で伝えるのをやめる必要はありませんが、口頭は補足で、本体は紙かシステムに置きます。
もう1つ大事なのが、読む相手が誰か分からない前提で書くことです。次のシフトの人が誰かは、当日変わることがあります。「〇〇さんに言っておいた」は引き継ぎになりません。
申し送りに書く5つ
申し送りに書く内容は、店によって多少違いますが、次の5つを押さえると抜けが減ります。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 未完了の用件 | 取り置き、取り寄せ、折り返しの電話 |
| お客様との約束 | 何を、いつまでに、誰に |
| 起きたこと | 苦情、トラブル、けが |
| 設備と在庫 | 機器の不調、切らしているもの |
| 変更 | 価格、営業時間、当日の変更点 |
いちばん抜けるのが1つ目の未完了の用件です。自分の勤務中に終わらなかったことは、意識から外れやすくなります。交代の10分前に、終わっていないものを見直す習慣にすると残ります。
2つ目の約束は、「誰が・何を・いつまで」の3つがそろっていないと引き継げません。「お取り置きのお客様が来ます」だけでは、来たときに対応できません。
申し送り1:未完了の用件
未完了の用件は、中途半端な状態がいちばん危ないものです。完了していれば残す必要はなく、手つかずなら次の人が最初から対応できます。困るのは途中です。
書くときは、どこまで終わっているかを添えます。
- 「〇〇様の取り寄せ、メーカーに発注済み。入荷連絡待ち」
- 「返品の件、店長に確認中。回答待ち」
- 「クレームの折り返し、本日中と伝えてある。未連絡」
「どこまで終わったか」があると、次の人は続きから動けます。これが無いと、確認のために最初からやり直すことになります。
申し送り2:お客様との約束
お客様に何かを約束した場合は、必ず残します。約束した本人が翌日休みでも成立する形にしておきます。
書く項目は決まっています。
| 項目 | なぜ要るか |
|---|---|
| お客様の名前 | 来店時に照合する |
| 内容 | 何を約束したか |
| 期限 | いつまでと言ったか |
| 連絡先 | 必要なら連絡する |
| 対応した人 | 経緯を聞ける |
期限を残すのが特に重要です。「今週中」と言ったのか「明日」と言ったのかで、次の人の動き方が変わります。曖昧に伝えると、約束を破る形になります。
申し送り3:起きたこと
苦情、トラブル、けが、機器の故障。その日に起きた異常は、収まっていても残します。
収まったのに書く理由は2つあります。同じことが繰り返されているか分かることと、続きが来る可能性があることです。
苦情は、その場で収まっても後日連絡が来ることがあります。何も残っていないと、次に受けた人が一から聞くことになり、お客様は同じ話を繰り返すことになります。これ自体が次の苦情の材料になります。
書き方は、クレーム対応の基本手順の記録と同じで構いません。「何を約束していないか」まで書いておくと、次の人が踏み込みすぎずに済みます。
申し送り4:設備と在庫
機器の不調と、切らしているものは、次の人が同じ場所でつまずくので残します。
- レジの引き出しの開きが悪い
- 冷蔵ケースの音が大きい
- レシート用紙が残り1本
- 釣銭の千円札が少ない
機器の不調は、記録が並ぶと原因が見えてきます。1回では「たまたま」でも、3回続けば修理の判断材料になります。書かないと、その判断ができません。
在庫や消耗品は、切れてからでは遅い部分です。「残り1本」の時点で書くようにすると、次の人が発注か補充を判断できます。
申し送りの書き方
申し送りは長く書く必要がありません。読まれなければ意味がないので、短さのほうが優先されます。
使える形は次のとおりです。
- 1件1行で書く
- 未完了のものを上に置く
- 日付と名前を入れる
- 済んだものは線を引いて消す
「済んだものを消す」が抜けると、次第に読まれなくなります。古い内容が混ざったノートは、全部を読まないと今日の分が分からないので、そのうち誰も開かなくなります。
書く場所は固定します。ノート、ホワイトボード、システム。どこに書くか迷う状態だと、書かない日が出ます。交代のとき必ず通る場所に置いておくのが確実です。
申し送りは、読む側の型も決めておく
申し送りは書くだけでは回りません。読む習慣がセットで要ります。
一般的なのは、出勤したら最初に読むという決めごとです。制服に着替えたあと、売り場に出る前。ここを固定しておくと、忙しい日でも抜けません。
読んだことを示す仕組みがあると、さらに確実になります。名前を書く、チェックを入れる。誰が読んだか分かると、伝わっていない相手が見えます。
店として決めておきたいのは3つです。
| 決めること | 内容 |
|---|---|
| 書く場所 | 1か所に固定する |
| 書く時点 | 交代の10分前 |
| 読む時点 | 出勤して売り場に出る前 |
交代の10分前という時点を決めておくと、慌てて書くことがなくなります。終わりぎわに思い出しながら書くと、必ず抜けます。
申し送りは、書く量より置き場所で決まる
申し送りが回らない店の共通点は、内容ではなく置き場所が決まっていないことです。
| 状態 | 起きること |
|---|---|
| 置き場所が複数ある | 書く側が迷い、読む側が探す |
| 見に行く必要がある | 忙しい日に読まれない |
| 私物のメモに書いている | 本人がいないと分からない |
| システムと紙が混在 | どちらが最新か分からない |
交代のとき必ず通る場所に置くのが、いちばん確実な形です。更衣室の出口、レジの内側、タイムカードの横。動線の上にあると、意識しなくても目に入ります。
システムを使っている店では、紙と混在させないほうが回ります。どちらかに寄せて、もう一方は使わないと決めます。両方あると、書いた側も読む側も確認が二度手間になります。
申し送りは、書く人によって粒度が変わる
同じ出来事でも、書く人によって残る情報が変わります。粒度をそろえる仕組みがあると、読む側が楽になります。
効くのは、項目を印刷しておくことです。白紙に自由に書く形だと、何を書くか毎回考えることになり、人によって差が出ます。
| 印刷しておく項目 | 埋める内容 |
|---|---|
| 未完了 | 何が途中か |
| 約束 | 誰に、何を、いつまで |
| 起きたこと | 苦情・トラブル・けが |
| 設備・在庫 | 不調、残りわずか |
| 特になし | 該当が無ければ印を付ける |
「特になし」の欄があると、書き忘れと区別がつきます。空欄だと、書き忘れたのか本当に無いのか分かりません。
書く時点も決めておきます。交代の10分前にすると、慌てずに書けます。終わりぎわに思い出しながら書くと、必ず抜けます。
申し送りは、交代の10分前に見直す
申し送りが抜けるのは、終わりぎわに思い出しながら書くときです。時点を決めておくと、慌てずに済みます。
交代の10分前に、次を見直します。
| 見るもの | 確かめること |
|---|---|
| 手元の作業 | 終わっていないものはあるか |
| 受けた依頼 | 取り置き、取り寄せ、折り返し |
| 今日あったこと | 苦情、トラブル、機器の不調 |
| 在庫と消耗品 | 切らしているもの、残りわずか |
「終わっていないもの」から見るのが要点です。完了したものは書かなくてよく、手つかずのものは次の人が最初から対応できます。困るのは途中の状態です。
書くのは1件1行で足ります。長く書くと読まれません。どこまで終わったかを添えると、次の人が続きから動けます。
書いたあと、口頭でも伝えます。書いたものが本体で、口頭は補足という順番にしておくと、聞き逃されても残ります。
申し送りは、読む側の負担も考える
申し送りは、書く側だけでなく読む側の負担も考えないと回りません。
| 読みにくい形 | 直し方 |
|---|---|
| 全部が同じ重さで並ぶ | 未完了を上に置く |
| 古い内容が混ざる | 済んだものに線を引く |
| 長文で書かれている | 1件1行にする |
| 略語が多い | 新しい人が読む前提で書く |
| 手書きが読めない | 書きやすい大きさで書く |
「済んだものに線を引く」が抜けると、次第に読まれなくなります。全部を読まないと今日の分が分からないので、そのうち誰も開かなくなります。
略語も注意が要ります。書いた人には通じても、新しく入った人には分かりません。「Aの件」「例の取り置き」のような書き方は、引き継ぎになりません。
読む時点を決めておくのも効きます。出勤して売り場に出る前に固定すると、忙しい日でも抜けません。
申し送りは、何を書かないかも決めておく
申し送りには、書かないほうがよい内容もあります。ここを決めておかないと、記録として使えなくなります。
| 書かないほうがよい | 理由 |
|---|---|
| 個人の評価・感想 | 記録ではなく意見になる |
| お客様の外見の特徴 | 不適切な扱いにつながる |
| 従業員の体調や私的な事情 | 共有の範囲を超える |
| 確認していない推測 | 事実と混ざる |
事実と感想を分けるのが要点です。「感じの悪いお客様が来た」ではなく「〇〇について指摘を受けた」と書くと、記録として使えます。
お客様の特徴を書く必要がある場面もありますが、目的に必要な範囲までにします。繰り返し来る相手への対応を共有する場合など、理由があるときに限られます。
推測を書くときは、推測だと分かる形にします。「〜と思われる」と「〜だった」を混ぜないと、あとで読む人が事実として受け取ります。
申し送りは、書く人が変わっても同じ形にする
申し送りは、書く人が変わっても同じ形であることが、読む側にとって重要になります。
形がそろっていないと、読む側は毎回どこに何が書いてあるか探すことになります。忙しい日には、それだけで読まれなくなります。
そろえるのは3つです。
| そろえるもの | 方法 |
|---|---|
| 項目 | 印刷しておく |
| 順番 | 未完了を上に固定 |
| 粒度 | 1件1行 |
項目を印刷しておくのがいちばん効きます。白紙に自由に書く形だと、人によって残る情報が変わります。
新しく入った人にも、この形をそのまま渡せます。「ここに、この順で書いてください」と言えれば、初日から申し送りに参加できます。
形を変えるときは、全員に伝えます。片方の形で書き続ける人がいると、そこだけ抜けて見えます。
よくある質問
申し送りは口頭ではだめですか
口頭だけだと残りません。交代時は双方が忙しく、聞いたほうも動きながら聞いています。口で伝えるのは補足にして、本体は書いたものに置きます。
書くことが思いつきません
未完了の用件から見ます。自分の勤務中に終わらなかったものを書き出せば、たいていはそれで足ります。何も無ければ「特になし」と書きます。
「特になし」でも書きますか
書くほうがよい形です。空欄だと、書き忘れなのか本当に無いのか分かりません。次の人が確認に来る手間が減ります。
前の人の申し送りが分かりません
その場で聞ける相手がいれば聞きます。いなければ、分からなかったことを申し送りに書き足します。同じことで次の人も困ります。
申し送りノートが読まれていません
古い内容が残っている可能性があります。済んだものを消すようにすると読まれ方が変わります。読む時点を決めるのも効きます。
システムと紙のどちらがいいですか
どちらでも構いませんが、混在させないほうが回ります。両方あると、どちらが最新か分からなくなります。
書く人によって内容がばらつきます
項目を印刷しておくと粒度がそろいます。白紙だと、何を書くか毎回考えることになります。
申し送りが読まれていません
済んだものに線を引くと読まれ方が変わります。古い内容が混ざっていると、全部を読まないと今日の分が分かりません。
お客様の特徴は書いていいですか
目的に必要な範囲までにします。外見の特徴を細かく書くのは、不適切な扱いにつながります。
引き継ぐ相手がいない時間帯があります
書いたものが残っていれば成立します。読む相手が決まっていなくても、決まった場所に置くことが引き継ぎになります。
口頭でも伝えたほうがいいですか
伝えて構いませんが、書いたものが本体です。口頭だけだと、忙しい交代時に残りません。
前の人が書いていません
分からなかったことを、自分の申し送りに書き足します。同じことで次の人も困ります。
まとめ
申し送りは、口頭で済ませると残りません。交代のタイミングは双方が忙しく、聞いたほうも動きながら聞いています。本体は書いたものに置いて、口頭は補足にします。
書くのは5つです。未完了の用件、お客様との約束、起きたこと、設備と在庫、変更点。抜けやすいのは未完了の用件で、交代の10分前に見直す習慣にすると残ります。
長く書く必要はありません。1件1行、未完了を上に、済んだものは消す。読む時点も決めておくと、書いたものが実際に回り始めます。