接客の相づち|「なるほど」を使わない言い換え
目次
相づちは、教わらないまま現場に出て、そのまま癖になる言葉です。友達との会話で使っている言葉がそのまま出て、あとから注意されることが多くあります。
この記事では、接客で使える相づちと、避けたほうがよい相づちを整理します。難しい敬語の話ではなく、その場で言い換えられる形で書きます。
結論:相づちは「はい」と「さようでございますか」で足りる
接客の相づちは、2つあれば大半の場面が回ります。
「はい」と「さようでございますか」の2つです。前者は聞いていることを示し、後者は受け取ったことを示します。
ポイントはここです。相づちの種類を増やすより、返す間合いのほうが伝わります。言葉が少なくても、相手が話し終わってから返せば、聞いていたことは伝わります。
一般には、相づちのバリエーションを増やす方向で指導されることがあります。ただ、慣れないうちに種類を増やすと、返すタイミングを探しているうちに会話が止まります。2つに絞るほうが自然になります。
「なるほど」を接客で使わない理由
「なるほど」は、接客で避けたほうがよいとされる相づちの代表です。
理由は、もともと目上の人が目下の人の話を評価するときの言葉だからです。話の中身を「納得できる」と判定する響きがあります。
お客さまが説明してくださったことに「なるほど」と返すと、判定する側に立った形になります。本人にその意図がなくても、聞いた側にはそう伝わることがあります。
| 避けたい相づち | 言い換え |
|---|---|
| なるほど | さようでございますか |
| なるほどですね | 承知いたしました |
| そうなんですね | さようでございますか |
| わかりました | 承知いたしました/かしこまりました |
| 了解です | 承知いたしました |
「なるほどですね」は、敬語として成り立っていません。丁寧にしようとして足した「ですね」が、かえって不自然さを強めています。
「うん」「へえ」「まじで」が出てしまうとき
友達との会話で使う相づちは、忙しいときほど出ます。
意識で止めようとしても、意識を向けていられるのは最初の数十分です。止める方法は、言い換え先を1つだけ決めておくことです。
「うん」が出そうになったら「はい」。これだけを決めます。複数の言い換えを覚えようとすると、選んでいるうちに「うん」が出ます。
出てしまったときは、言い直さないでください。「うん、あ、はい」と続けるほうが目立ちます。そのまま続けて、次から直します。
相づちの間合い
相づちで差が出るのは、言葉より間合いです。
一般に、相手が話し終わってから返すほうが落ち着いて聞こえます。話している最中にかぶせると、急かしているように伝わります。
逆に、間が空きすぎると聞いていないように見えます。話し終わってから1拍が目安です。
| 間合い | 伝わり方 |
|---|---|
| かぶせる | 急かしている、話を切りたい |
| 話し終わって1拍 | 聞いている、受け取った |
| 2拍以上空く | 聞いていない、困っている |
| 一切返さない | 伝わっていない不安を与える |
うなずきだけで足りる場面
相づちは声に出さなくてよい場面があります。
お客さまが長く話しているときは、毎回声に出すとかえって話を切ることになります。うなずきだけを返して、区切りで一度「さようでございますか」を入れます。
うなずきの深さも変わります。軽い相づちなら小さく、大事な話なら深く。同じ深さで機械的にうなずくと、聞いていない感じが出ます。
同じ相づちを繰り返さない
「はい」「はい」「はい」と同じ相づちが続くと、聞き流しているように伝わります。
避け方は、相手の言葉を1つ入れることです。「はい、Mサイズですね」と、聞いた内容を短く返します。
これは復唱とも重なりますが、全部を繰り返す必要はありません。要点を1語だけ返せば、聞いていたことが伝わります。
苦情の場面での相づち
苦情を聞いているときの相づちは、普段と分けて考えます。
避けたいのは、「はい」を続けることです。淡々と聞こえて、流されていると受け取られます。
一般には、受け止める言葉を混ぜます。「さようでございましたか」「ご不便をおかけいたしました」と、状況に触れる言葉を入れます。
ただし、こちらの非を認める言葉と、受け止める言葉は別です。事実が確認できていない段階で「申し訳ございません、こちらの不備です」と言うと、後から事実が違ったときに困ります。受け止める言葉までにとどめます。
電話での相づち
電話では、うなずきが見えません。声に出さないと、聞いていないことになります。
そのため、対面より相づちの回数が増えます。一般には、2文か3文に1回が目安とされています。
電話での相づちは短くします。「はい」「さようでございますか」の2つで足ります。長い相づちは、相手の話にかぶさります。
無言の時間が続くと、相手は切れたと思って「もしもし」と確かめます。確かめられた時点で、聞いている感じは伝わっていません。
復唱と相づちの違い
相づちと復唱は、役割が違います。
| 目的 | 使う場面 | |
|---|---|---|
| 相づち | 聞いていることを示す | 話の途中 |
| 復唱 | 内容の確認 | 話の区切り、注文や予約 |
復唱は、間違いを防ぐための確認です。相づちの代わりに毎回復唱すると、話が進みません。
注文、予約、金額、日時、個数。この5つは必ず復唱するものとして決めておきます。それ以外は相づちで受けます。
新しく入った人に何から渡すか
相づちを教えるときは、2つだけ渡します。
「はい」と「さようでございますか」。この2つが自然に出るようになってから、次を足します。
渡し方は、実際の場面を1つ挙げるのが早い方法です。「お客さまが商品の説明をしてくださったときは、さようでございますか、と返します」と、場面と言葉を組にして渡します。
言葉だけを一覧で渡すと、使う場面が分からず出てきません。
癖を直す形を作る
相づちの癖は、自分では気づけません。
一般には、お互いに聞き合う形が取られています。month単位で場を作るより、その日のうちに一言伝えるほうが効きます。
伝え方は、責める形にしないでください。「さっき、なるほどって言ってたよ」で足ります。理由まで説明すると説教になります。
言われた側も、その場で直そうとしなくてかまいません。言われたことを覚えておいて、次の接客で1回だけ意識する。これを繰り返すほうが早く抜けます。
記録に残す
相づちを含む言葉づかいの教育は、渡した内容と日付を残しておきます。
残すのは4つです。日付、渡した相手、渡した内容、できるようになった印。
法令で記録が求められるのは業種によりますが、記録が無いと、誰にどこまで渡したかが分からなくなります。新しい人が増えるたびに、同じことを最初から説明することになります。
相づちで話が広がる場面
相づちは受けるだけの言葉ですが、返し方で話が広がることがあります。
広げたい場面は限られています。お客さまが商品の使い方を話しているとき、迷っている理由を話しているとき、前に買ったものの話をしているとき。この3つは、もう一言返すと提案につながります。
返す言葉は「さようでございますか」のあとに短い質問を1つ足す形です。「さようでございますか。どちらでお使いになりますか」と続けると、話が進みます。
ただし、広げてよいかどうかは相手の様子で決めます。急いでいる人に質問を足すと、引き止めたことになります。荷物を持ち直す、レジのほうを見る、といった動きが出ていたら広げません。
相づちが出てこないとき
緊張していると、相づちそのものが出ません。
出ないときは、うなずきだけでかまいません。無理に言葉を探すと、間が空いて逆に不自然になります。
一般には、最初の1か月は「はい」だけと決めておく形が取られています。1つに絞ると、考えずに出るようになります。
出るようになってから、次を足します。同時に2つ覚えようとすると、どちらも出ません。
相づちを打ちすぎたとき
相づちは、多すぎても伝わり方が悪くなります。
一文ごとに「はい」を入れると、早く終わらせたい気配が出ます。相手は話を切られていると感じます。
対面では、2文か3文に1回で足ります。うなずきが見えるぶん、電話ほど声に出す必要がありません。
多く出てしまう人は、緊張していることが多くあります。沈黙を埋めようとして相づちが増えます。間が空いてよいと分かると自然に減ります。
世代や相手で相づちを変えるか
相づちを相手によって変えるかどうかは、迷いやすい部分です。
基本は変えないほうが安全です。変えようとすると、その場で相手の年齢や関係を判断することになり、外したときの印象が悪くなります。
ただし、話す速さと声の大きさは相手に合わせてかまいません。ゆっくり話す方にはゆっくり返し、聞こえにくそうな方には少し大きく返します。これは相づちの種類を変える話ではありません。
一般には、言葉は固定して、速さと大きさで合わせる形が扱いやすくなります。判断する材料が2つで済みます。
相づちを揃えると店の印象が揃う
相づちは1人ひとりの癖に見えますが、店全体で揃うと印象が変わります。
同じ店の中で、ある人は「なるほど」、ある人は「さようでございますか」と返していると、応対の質にばらつきがあるように受け取られます。
揃えるのは難しくありません。2つに絞って、1枚に書いて、休憩室に貼る。これだけで、新しく入った人も同じ言葉から始めます。
まとめ
相づちは、2つに絞ると自然になります。
- 「はい」と「さようでございますか」で大半の場面が回る
- 「なるほど」は評価する響きがある。「なるほどですね」は敬語として成り立っていない
- 差が出るのは言葉より間合い。話し終わって1拍
- 同じ相づちを続けず、相手の言葉を1語返す
- 注文・予約・金額・日時・個数は相づちではなく復唱
苦情の場面で、事実が確認できる前に非を認める言葉を使わないでください。対応の手順は社内の決まりに従い、判断に迷う場合は責任者に確かめてください。
よくある質問
Q. 相づちは何種類覚えればよいですか。 A. 2つで足ります。「はい」と「さようでございますか」です。種類を増やすと、選んでいるうちに会話が止まります。
Q. 「なるほど」はなぜいけないのですか。 A. もともと目上の人が目下の話を評価するときの言葉です。判定する側に立った形に聞こえます。「さようでございますか」に替えてください。
Q. 「なるほどですね」ならよいですか。 A. 敬語として成り立っていません。丁寧にしようとして足した「ですね」が、不自然さを強めています。使わないでください。
Q. 「うん」が出てしまいます。 A. 言い換え先を1つだけ決めてください。「うん」が出そうになったら「はい」。複数覚えようとすると選んでいるうちに出ます。
Q. 出てしまったあと、言い直すべきですか。 A. 言い直さないでください。「うん、あ、はい」と続けるほうが目立ちます。そのまま続けて、次から直します。
Q. 相づちのタイミングが分かりません。 A. 相手が話し終わってから1拍です。かぶせると急かしているように伝わり、2拍以上空くと聞いていないように見えます。
Q. 声に出さなくてよい場面はありますか。 A. お客さまが長く話しているときです。うなずきだけを返して、区切りで一度声に出します。毎回声に出すと話を切ることになります。
Q. 「はい」が続いてしまいます。 A. 相手の言葉を1語入れてください。「はい、Mサイズですね」で変わります。全部を繰り返す必要はありません。
Q. 苦情のときも「はい」でよいですか。 A. 「はい」を続けると流されていると受け取られます。「さようでございましたか」など受け止める言葉を混ぜてください。
Q. 苦情で謝ってよいですか。 A. 事実が確認できる前に非を認める言葉を使わないでください。受け止める言葉までにとどめます。手順は責任者に確かめてください。
Q. 電話では相づちが多くなりませんか。 A. 対面より増えます。2文か3文に1回が目安です。うなずきが見えないので、声に出さないと聞いていないことになります。
Q. 電話の相づちは長くてよいですか。 A. 短くしてください。長い相づちは相手の話にかぶさります。「はい」「さようでございますか」の2つで足ります。
Q. 復唱と相づちは違いますか。 A. 相づちは聞いていることを示し、復唱は内容の確認です。注文・予約・金額・日時・個数の5つは必ず復唱してください。
Q. 自分の癖に気づけません。 A. お互いに聞き合う形にしてください。その日のうちに一言伝えるのがいちばん効きます。理由まで説明すると説教になります。
Q. 新しい人に何から教えますか。 A. 2つだけです。場面と言葉を組にして渡してください。言葉だけを一覧で渡すと、使う場面が分からず出てきません。
Q. 相手によって相づちを変えるべきですか。 A. 言葉は変えないほうが安全です。変えるのは話す速さと声の大きさだけ。その場で相手を判断すると、外したときの印象が悪くなります。
Q. 相づちから話を広げてよいですか。 A. 使い方、迷う理由、前に買ったものの3つの場面なら広がります。荷物を持ち直す動きが出ていたら広げないでください。
Q. 緊張して相づちが出ません。 A. うなずきだけでかまいません。最初の1か月は「はい」だけと決めてください。1つに絞ると考えずに出るようになります。
Q. 相づちが多すぎると言われました。 A. 対面では2文か3文に1回で足ります。一文ごとに入れると、早く終わらせたい気配が出ます。間が空いてよいと分かると減ります。