言葉遣い・敬語実務2026.07.30 公開KO-15

お待たせの言葉|見通しを1つ添える

目次

お待たせの言葉は、言っているつもりで伝わっていないことが多い言葉です。「少々お待ちください」とだけ言われても、どれくらい待つのかが分からないままになります。

この記事では、お待たせの言葉に何を添えるかを整理します。謝る言葉を増やす話ではなく、見通しを渡す話です。

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結論:お待たせの言葉には見通しを1つ添える

お待たせの言葉でいちばん効くのは、どれくらい待つかを添えることです。

「少々お待ちください」だけでは、5秒なのか10分なのかが分かりません。「2分ほどお待ちいただけますでしょうか」と言えば、待つか出直すかを本人が決められます。

ポイントはここです。不満になるのは待った時間ではなく、見通しが無い時間です。同じ5分でも、分かって待つのと分からずに待つのとでは受け取り方が違います。

一般には、お待たせの言葉を丁寧にする方向で指導されます。ただ、丁寧さを足しても見通しは増えません。添えるものを1つ決めるほうが効きます。

添えるものは4つ時間2分ほどと言う理由在庫を確認します次の動き出直せると伝える進み具合止まっていない
時間・理由・次の動き・進み具合という4つの添えるものを並べた層の図

3つの場面で言葉を変える

お待たせの言葉は、待たせ始め、待っている途中、終わったあとの3つで変わります。

場面言葉添えるもの
待たせ始め少々お待ちくださいどれくらい待つか
途中お待たせしておりますいま何をしているか
終わりお待たせいたしましたなし

2つ目を言わない人が多くいます。待たせ始めに一度言ったきり黙っていると、進んでいるかどうかが分かりません。

3つ目は、待った時間が短くても必ず言います。言わずに続きから入ると、待っていた時間が無かったことになります。

「少々」が伝える長さ

「少々お待ちください」の「少々」は、受け取る人によって長さが違います。

一般に、言った側は1分か2分のつもりで、聞いた側は30秒ほどを想像します。このずれが、待たされたという感覚を作ります。

数字を入れると、ずれが消えます。「2分ほど」「5分ほど」と言い切ります。読めないときは、長めに言うほうが安全です。3分と言って5分かかるより、5分と言って3分で終わるほうが印象がよくなります。

「少々」の受け取り方言い方相手の受け取り少々人によって違う30秒聞いた側の想像2分言った側のつもり長めに言う短く終わると印象がよい
少々・30秒・2分・長めに言うという4つの受け取り方を並べた表

理由を添えるか

待たせる理由を添えるかどうかは、場面で変わります。

添えたほうがよいのは、待つ時間が長くなるときです。「在庫を確認してまいりますので」と言えば、時間がかかることが伝わります。

添えないほうがよいのは、こちらの都合が理由のときです。「人手が足りず」「機械の調子が悪く」は、お客さまには関係がありません。言い訳に聞こえます。

添えてよい理由添えないほうがよい理由
在庫を確認している人手が足りない
別の担当を呼んでいる機械の調子が悪い
準備に時間がかかる慣れていない
順番に対応している忙しい

4つ目の「忙しい」は、目の前で見えていても言葉にしないでください。見えていることと、言われることは別です。

途中で一度声をかける

待たせている途中で、一度声をかけます。

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かけるのは、最初に言った時間を過ぎそうなときです。「2分ほど」と言って3分経ちそうなら、その前に一声入れます。

一般には、進み具合を1つ添える形が取られています。「ただいま確認しております。もう少々お待ちください」と言えば、止まっていないことが伝わります。

黙ったまま時間が過ぎると、忘れられていると受け取られます。これがいちばん苦情につながる形です。

途中の声かけ4段1伝えた時間2分ほどと言った2過ぎる前3分になりそう3進み具合確認しております4もう一度もう少々お待ちを
伝えた時間・過ぎる前・進み具合・もう一度という4段の途中の声かけのフロー

見通しが立たないとき

どれくらいかかるか読めない場面があります。そのときは、読めないことを伝えます。

「お時間がかかる見込みでございます」と伝えて、待つか、あとで来るか、連絡するかを選んでもらいます。

選択肢を出さずに待たせ続けると、待った時間が全部無駄になる可能性が残ります。出直せると分かれば、その場で判断できます。

連絡する形にするなら、いつまでに連絡するかを決めて伝えます。「本日中にお電話いたします」まで言わないと、待つことに変わりありません。

電話でのお待たせの言葉

電話では、保留にする前に一言入れます。

黙って保留にすると、切れたと思われます。「少々お待ちください」を言ってから保留にします。

保留の時間は、30秒が目安とされています。超えそうなら一度戻って、「もう少々お時間をいただきます」と伝えます。

保留の長さ受け取られ方
30秒まで気にならない
1分長く感じる
2分以上切ろうか迷う

戻ったときは必ず「お待たせいたしました」から始めます。いきなり答えから入ると、待った時間が無視されます。

列になっているとき

複数の人を待たせているときは、全体に一度伝えます。

個別に声をかけると、時間がかかって列が進みません。「お待たせしております。順にご案内いたします」と、列全体に一度言います。

一般には、最後尾の人にだけ個別に声をかける形が取られています。並んだ直後は不安が大きく、ここで一声あるかどうかで印象が変わります。

待たせたあとに謝りすぎない

待たせたあとに謝る言葉を重ねると、かえって気まずくなります。

「申し訳ございません」を3回言われると、待った側は恐縮します。一般には、「お待たせいたしました」の1回で足ります。

長く待たせた場合だけ、「大変お待たせいたしました」と程度を足します。言葉を増やすのではなく、程度を変える形です。

そのあとは、すぐに本題に入ります。謝罪を続けると、さらに時間がかかります。

待っている人の居場所を作る

言葉の前に、待つ場所そのものを整えると待ち方が変わります。

椅子がある、荷物が置ける、時計が見える。この3つがあると、同じ時間でも待ちやすくなります。

待つ場所の3つ椅子立たせない荷物置き手がふさがらない時計時間が読める
椅子・荷物置き・時計という3つの待つ場所の要素を並べた層の図

通路で待たせないでください。人の流れの中に立っていると、落ち着きません。待つ場所が決まっていない店では、そこから決めます。

言葉を3つだけ決めておく

お待たせの言葉は、3つ決めれば足ります。

待たせ始め、途中、終わり。この3つを1枚に書いて、レジと電話のそばに貼ります。

新しく入った人には、終わりの言葉から渡します。「お待たせいたしました」が自然に出るようになれば、それだけで印象が変わります。

記録に残す

待たせた時間が長かった場面は、記録に残しておきます。

残すのは3つです。日時、どれくらい待たせたか、何が理由か。

1か月並べると、同じ時間帯と同じ理由が出ます。言葉で吸収し続けるのではなく、原因を減らす材料になります。

言葉づかいの教育として渡した内容も、日付とあわせて残します。誰にどこまで渡したかが分かると、次に足すものが決まります。

待たせる前に見通しを作る

お待たせの言葉の前に、待たせる場面そのものを減らせることがあります。

減らせるのは、準備で吸収できる場面です。釣銭が足りない、袋が切れている、端末が立ち上がっていない。どれも開店前に確かめれば起きません。

一般には、待たせた記録を見ると、同じ理由が並びます。言葉を整える前に、この並びを見るほうが効きます。

言葉で吸収するのは、準備では避けられない場面だけにします。在庫の確認、責任者の判断、他の方の対応。この3つは待たせることが前提です。

3つに分けて考える準備で防げる釣銭と袋と端末言葉で受ける在庫と判断記録で減らす同じ理由が並ぶ
準備で防げる・言葉で受ける・記録で減らすという3つの分け方を並べた層の図

待たせた相手が複数いるとき

待たせている相手が2人以上いるときは、全員に声をかけます。

1人に対応しているあいだ、残りの人は放っておかれた形になります。「順にお伺いいたします」を全員に一度言うだけで変わります。

順番が前後する場合は、その理由を先に伝えます。「お先にこちらのお客さまのご会計を承ります」と言えば、飛ばされたことになりません。

黙って順番を変えると、その場で指摘を受けることがあります。指摘されてから説明するより、先に言うほうが早く収まります。

待たせたことを記録に残す形

待たせた場面の記録は、書式を決めると続きます。

書くのは3つだけです。時刻、待たせた長さ、理由。名前や詳細は要りません。

置き場所は、レジのそばにします。事務所に取りに行く形にすると、忙しい日ほど書かれません。

一般には、1か月分を並べて山になっている時間帯を見ます。人の配置を変えるか、準備の時間を動かすか、判断の材料になります。

記録に書く4つ書くこと中身時刻待たせ始めた時刻長さどれくらい待たせたか理由何で止まったか置き場所レジのそばに置く
時刻・長さ・理由・置き場所という4つの記録の要素を並べた表

待ち時間を短く感じてもらう形

待ち時間そのものを変えられない場面では、感じ方を変える方向に動きます。

一般に効くのは3つです。進み具合が見えること、することがあること、あとどれくらいかが分かること。

売り場なら、近くの棚を見てもらう案内が使えます。「よろしければこちらをご覧いただきながらお待ちください」と言うだけで、立ち尽くす時間が減ります。

番号札や順番の表示がある店では、今どこまで進んでいるかが見える形にします。数字が動くだけで、止まっていないことが伝わります。

まとめ

お待たせの言葉は、見通しを1つ添えると変わります。

  • 不満になるのは待った時間ではなく、見通しが無い時間
  • 「少々」は言った側と聞いた側で長さが違う。数字を入れる
  • 理由は添えてよいものと、言い訳に聞こえるものがある
  • 伝えた時間を過ぎる前に一度声をかける
  • 謝る言葉を重ねない。「お待たせいたしました」の1回で足りる

待つ場所の椅子や通路の扱いには、建物の決まりが関わることがあります。避難の経路をふさぐ形にならないよう、判断に迷う場合は所轄の消防署に確かめてください。

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実際に使える様式が必要な方へ

接客の教育記録をまとめて整えるなら、商い屋が近道です。

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よくある質問

Q. 「少々お待ちください」だけでよいですか。 A. 見通しを1つ添えてください。「2分ほどお待ちいただけますでしょうか」と言えば、待つか出直すかを本人が決められます。

Q. どれくらいかかるか分かりません。 A. 読めないことを伝えて、待つか、あとで来るか、連絡するかを選んでもらってください。選択肢がないと、待った時間が無駄になる可能性が残ります。

Q. 時間を長めに言うべきですか。 A. 読めないときは長めが安全です。3分と言って5分かかるより、5分と言って3分で終わるほうが印象がよくなります。

Q. 待たせている途中で何か言うべきですか。 A. 最初に言った時間を過ぎそうなら、その前に一声入れてください。黙ったまま時間が過ぎると、忘れられていると受け取られます。

Q. 理由は言ったほうがよいですか。 A. 在庫の確認や担当を呼んでいる場合は添えてください。人手が足りない、忙しいは言い訳に聞こえます。

Q. 見えていても「忙しい」と言ってはいけませんか。 A. 見えていることと、言われることは別です。言葉にすると言い訳になります。状況ではなく、進み具合を伝えてください。

Q. 電話の保留はどれくらいまでですか。 A. 30秒が目安です。超えそうなら一度戻って「もう少々お時間をいただきます」と伝えてください。

Q. 保留にする前に何か言いますか。 A. 「少々お待ちください」を言ってから保留にしてください。黙って保留にすると、切れたと思われます。

Q. 保留から戻ったとき何と言いますか。 A. 「お待たせいたしました」から始めてください。いきなり答えから入ると、待った時間が無視されます。

Q. 列になっているときはどうしますか。 A. 全体に一度伝えてください。個別に声をかけると、時間がかかって列が進みません。最後尾の人にだけ個別に一声入れます。

Q. 待たせたあと、何回謝りますか。 A. 「お待たせいたしました」の1回で足ります。3回謝られると、待った側が恐縮します。長かった場合だけ程度を足します。

Q. 謝ったあとどうしますか。 A. すぐに本題に入ってください。謝罪を続けると、さらに時間がかかります。

Q. 待つ場所がありません。 A. 椅子、荷物が置ける場所、時計の3つがあると待ちやすくなります。通路で待たせないでください。人の流れの中では落ち着きません。

Q. 言葉をいくつ覚えればよいですか。 A. 3つです。待たせ始め、途中、終わり。新しく入った人には、終わりの言葉から渡してください。

Q. 待たせる場面が減りません。 A. 日時、待たせた長さ、理由を記録してください。1か月並べると同じ時間帯と同じ理由が出ます。言葉で吸収し続けないでください。

Q. 待たせる場面そのものを減らせますか。 A. 釣銭、袋、端末の立ち上げは開店前に確かめれば起きません。言葉で吸収するのは、準備で避けられない場面だけにしてください。

Q. 待たせている人が2人以上います。 A. 全員に一度「順にお伺いいたします」と言ってください。1人に対応しているあいだ、残りは放っておかれた形になります。

Q. 順番を変えるときはどうしますか。 A. 理由を先に伝えてください。黙って変えると、その場で指摘を受けることがあります。先に言うほうが早く収まります。

Q. 記録は何を書きますか。 A. 時刻、待たせた長さ、理由の3つです。レジのそばに置いてください。取りに行く形にすると、忙しい日ほど書かれません。

Q. 待ち時間を短く感じてもらうには。 A. 進み具合が見えること、することがあること、あとどれくらいかが分かることの3つです。近くの棚を見てもらう案内だけでも、立ち尽くす時間が減ります。

Q. 番号札は効きますか。 A. 今どこまで進んでいるかが見える形にしてください。数字が動くだけで、止まっていないことが伝わります。

Q. 待たせた記録を誰が見ますか。 A. 責任者がまとめて月に1回見てください。山になっている時間帯が出れば、人の配置か準備の時間を動かす材料になります。

Q. 「お待たせいたしました」を忘れます。 A. 戻ったときの第一声に固定してください。短い待ち時間でも必ず言います。言わずに続きから入ると、待った時間が無かったことになります。