接客の基本実務2026.06.17 公開SK-13

複数対応のやり方|待たせる人に先に声をかける

目次

複数対応は、手が2つしかないのに、同時に3人から声がかかるという場面です。1人に集中すると他が待ち、全部に手を出すとどれも中途半端になります。

この記事では、複数対応の順番と、待たせる人への声のかけ方を整理します。速く動く話ではなく、どう分けて、どう伝えるかという話です。

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結論:複数対応は「待たせる人」から声をかける

複数対応でいちばん効くのは、待たせる人に先に声をかけることです。

理由は、待っている時間の長さそのものより、放っておかれたと感じる時間が不満につながるからです。同じ3分でも、声をかけられた人とかけられていない人では受け取り方が違います。

ポイントはここです。声をかけるのは対応ではなく、順番の宣言です。「少々お待ちください」と言うだけで、その人は自分が列に入ったことが分かります。

一般には、先に来た人を先に片づけようとします。ただ、片づけている最中に来た人は、自分が見られているかどうかが分かりません。先に一声を入れるほうが、全体としては落ち着きます。

複数対応の4段1気づく顔を上げる2声をかけるただいま参ります3順番を伝えあとで伺います4戻るお待たせいたしました
気づく・声をかける・順番を伝える・戻るという4段の複数対応のフロー

何を先にやるかを決めておく

複数対応では、その場で優先順位を考えている時間がありません。先に決めておきます。

優先場面理由
1会計を待っている金銭が動いていて、途中で止められない
2危険があるけが、こぼれ、子どもの安全
3短く終わる場所を聞かれた、在庫を聞かれた
4時間のかかる相談最後に、腰を据えて

3つ目を2つ目より先にしないのが大事な点です。危険につながる場面は、短く終わるかどうかにかかわらず先に動きます。

4つ目の時間のかかる相談は、先に来ていても後回しにしてよい場面があります。ただし後回しにするなら、その旨を必ず伝えます。黙って離れないでください。

声のかけ方を3つだけ用意する

複数対応の場面で使う言葉は、3つで足ります。

  1. 気づいたことを伝える「ただいま参ります」
  2. 順番を伝える「お先のお客さまのあと、すぐに伺います」
  3. 待たせたことに触れる「お待たせいたしました」

3つ目を忘れる人が多くいます。戻ってきたときに何も言わずに続きから入ると、待っていた時間が無かったことになります。

声かけは3つ気づいたただいま参ります順番あとで伺います待たせたお待たせしました
気づいた・順番・待たせたという3つの声かけを並べた層の図

目を合わせるだけでも伝わる

手が離せないときは、目を合わせて軽く頭を下げるだけでも伝わります。

声を出せない場面はあります。電話中、他のお客さまと話している最中、両手がふさがっている場面。そのときに視線すら向けないと、気づいていないことになります。

一般には、2秒あれば足ります。視線を向けて、うなずく。それだけで「見えている」ことが伝わります。

ここで避けたいのは、見えているのに見えていないふりをすることです。忙しいときほど出やすい動きで、お客さまからははっきり分かります。

途中で離れるときの伝え方

対応の途中で別のお客さまに呼ばれることがあります。離れるときの伝え方を決めておきます。

伝えるのは2つです。離れることと、戻る目安

「少々失礼いたします」だけだと、どれくらい待つのか分かりません。「すぐに戻ります」「1分ほどお待ちください」まで言うと、その場で待つか他を見るかを本人が決められます。

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離れてよい場面とよくない場面があります。試着中、会計の途中、商品を預かっている最中は離れないでください。離れるなら他の人に引き継ぎます。

離れるかの4つの判断判断場面離れてよい商品を見ている途中引き継ぐ自分が長く離れる離れない試着と会計の途中戻る目安を言う1分ほどと伝える
離れてよい・引き継ぐ・離れない・戻る目安を言うという4つの判断を並べた表

引き継ぐときに伝える3つ

他の人に引き継ぐときは、3つだけ伝えます。

何を探しているか、どこまで話したか、次に何をするか。この3つが無いと、お客さまが最初から説明し直すことになります。

一般に、お客さまが同じ話を2回するのが、複数対応でいちばん不満につながる形です。引き継ぎが短くても、この3つがあれば繰り返しになりません。

引き継ぐ相手がすぐに動けない場合は、引き継がずに自分で戻るほうが早いこともあります。引き継ぎ自体に時間がかかる場面では、判断を変えます。

レジと売り場を1人で見る日

人数が少ない日は、レジと売り場を1人で見ることになります。

このとき決めておくのは、レジを離れてよい範囲です。一般には、レジから目が届く範囲までとしている店が多くあります。

決めること目安
離れてよい範囲レジが視界に入るところまで
離れてよい時間30秒ほど
現金の扱い引き出しを閉めて離れる
呼び出し呼び鈴か声で呼べる形

3つ目は必ず守ってください。現金の入った引き出しを開けたまま離れると、盗難の対象になります。

呼び鈴を置く場合は、鳴らしてよいと分かる表示を添えます。置いてあるだけでは鳴らしません。

行列ができ始めたとき

複数対応が追いつかなくなると、行列になります。列になった時点で、対応の仕方が変わります。

列に対しては、個別に声をかけるより全体に一度伝えるほうが効きます。「お待たせしております。順にご案内いたします」と一声入れます。

列が伸びているときに、列の最後尾が分からない状態がいちばん混乱します。床の表示か、立つ位置の目印を用意しておきます。

電話が鳴ったとき

売り場で複数対応している最中に電話が鳴ることがあります。目の前のお客さまが優先です。

一般には、電話は「かけ直せる」ものとして扱われます。ただし、鳴りっぱなしにすると店の印象が悪くなるので、手が空いている人が取る形を決めておきます。

取る人がいない時間帯があるなら、留守番の案内を入れるか、コール数の上限を決めます。目の前の対応を中断して電話に出ると、対面の人が後回しにされたと感じます。

「あとで」と言ったら必ず戻る

複数対応で信用を落とすのは、あとで伺いますと言って戻らないことです。

戻らない理由はだいたい同じで、他の対応が長引いて忘れます。声をかけた相手を覚えておく形を作っておきます。

方法向いている場面
頭で覚える1人か2人まで
メモに書く3人以上のとき
他の人に伝える自分が離れるとき
場所で覚える売り場が広いとき

2人を超えたら、頭で覚えるのはやめてください。忘れます。手の甲やメモに1文字書くだけでも違います。

待たせた時間を短く感じてもらう

待ち時間そのものを短くできない場面があります。そのときは、感じ方を変える方向に動きます。

一般に知られているのは3つです。あとどれくらいかが分かること、何かをして待てること、進んでいるのが見えること。

売り場なら、近くの棚を見てもらう案内が使えます。「よろしければこちらをご覧いただきながらお待ちください」と言うだけで、待っている感じが減ります。

待ち方が変わる3つ見通しあと何分かすることがある棚を見てもらう進んでいる止まっていない
見通し・することがある・進んでいるという3つの感じ方を並べた層の図

複数対応を1人で抱えない

複数対応が続く時間帯は、個人の技術ではなく人の配置の問題です。

同じ時間帯に同じことが起きているなら、記録に残して配置を変える材料にします。

残すのは3つで足ります。時間帯、そのとき待たせた人数、対応した人数。1か月分並べると、山になる時間帯がはっきり出ます。

「がんばって回した」で終わらせないことが大事な点です。記録がないと、次の月も同じ時間に同じことが起きます。

新しく入った人に何から渡すか

複数対応は、新しく入った人にはいちばん難しい場面です。

渡すのは、声をかける1文だけにします。「ただいま参ります」が自然に出るようになれば、それだけで待たせ方が変わります。

判断の伴う優先順位は、慣れてからで足ります。最初から順番を考えさせると、固まって動けなくなります。

教えた内容と日付は記録に残します。何をどこまで渡したかが分かると、次に足すものが決まります。

混む時間帯の並び方を決めておく

複数対応が重なるのは、だいたい同じ時間帯です。時間帯が読めるなら、その時間の立ち位置を先に決めておきます。

立ち位置を決めるのは、お互いの担当を分けるためです。1人がレジ、1人が売り場と決まっていれば、両方に走る動きが減ります。

決め方は単純で、入口とレジの両方が誰かの視界に入るようにします。2人とも売り場の奥にいる時間があると、その間に来た人は誰にも気づかれません。

混む時間の立ち位置場所見えるものレジ会計を待つ人入口来店した人売り場の手前通路の全体売り場の奥見えない。2人は置かない
レジ・入口・売り場の手前・売り場の奥という4つの立ち位置を並べた表

対応の途中でお客さまが増えたとき

対応を始めたあとに、別の人が並ぶことがあります。途中で優先順位を変えてよいかは、迷いやすい場面です。

一般には、始めた対応は最後までとされています。途中で切り替えると、両方が中途半端になります。

ただし例外が2つあります。危険につながる場面と、会計が止まっている場面です。この2つは、今の対応を一度止めてでも動きます。止めるときは「少々失礼いたします」と理由を添えます。

途中で増えたときの4段1始めたら最後まで基本はこれ2危険一度止めて動く3会計止まっていたら動く4理由を添え少々失礼いたします
始めたら最後まで・危険・会計・理由を添えるという4つの判断のフロー

気づかれていないお客さまを減らす

複数対応でいちばん困るのは、そもそも気づかれていないお客さまです。

声をかけられずに帰った人は、記録にも残りません。行列や待ち時間は見えますが、気づかれなかった人は数えられないためです。

減らす方法は2つあります。作業中に顔を上げる回数を決めることと、入口が見える位置に誰かがいる時間を作ることです。どちらも速く動く話ではなく、向きと位置の話です。

一般には、作業に入る前に一度売り場を見渡す形が取られています。数秒で足ります。

まとめ

複数対応は、待たせる人に先に声をかけることで変わります。

  • 声をかけるのは対応ではなく順番の宣言
  • 優先は、会計、危険、短く終わるもの、時間のかかる相談の順
  • 手が離せないときは目を合わせて頭を下げるだけでも伝わる
  • 引き継ぐときは何を探しているか、どこまで話したか、次に何をするかの3つ
  • 「あとで」と言ったら必ず戻る。2人を超えたらメモに書く

現金の扱いや防犯については社内の決まりがあります。レジを離れる範囲や引き出しの扱いは、社内の担当に確かめてください。

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実際に使える様式が必要な方へ

接客の教育記録をまとめて整えるなら、商い屋が近道です。

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よくある質問

Q. 同時に3人から声をかけられました。 A. 全員に一声だけ先に入れてください。「ただいま参ります」を3人に言ってから、順に対応します。対応より先に順番を伝えるほうが落ち着きます。

Q. 誰から対応しますか。 A. 会計、危険がある場面、短く終わるもの、時間のかかる相談の順です。危険につながる場面は、短さにかかわらず先に動いてください。

Q. 時間のかかる相談を後回しにしてよいですか。 A. 後回しにしてかまいませんが、必ずその旨を伝えてください。黙って離れると、放っておかれたことになります。

Q. 声を出せない場面ではどうしますか。 A. 目を合わせて軽く頭を下げてください。2秒あれば足ります。見えているのに見ないふりをするのがいちばん伝わります。

Q. 対応の途中で離れてよいですか。 A. 試着中、会計の途中、商品を預かっている最中は離れないでください。離れるなら他の人に引き継ぎます。

Q. 離れるときに何と言いますか。 A. 離れることと戻る目安の2つです。「1分ほどお待ちください」まで言うと、待つか他を見るかを本人が決められます。

Q. 引き継ぐときに何を伝えますか。 A. 何を探しているか、どこまで話したか、次に何をするかの3つです。お客さまが同じ話を2回するのが、いちばん不満につながります。

Q. 1人でレジと売り場を見ています。 A. レジを離れてよい範囲と時間を決めてください。視界に入るところまで、30秒ほどが目安です。引き出しは必ず閉めます。

Q. 呼び鈴を置いても鳴らされません。 A. 鳴らしてよいと分かる表示を添えてください。置いてあるだけでは鳴らしません。「ご用の際はお鳴らしください」と書きます。

Q. 行列になってしまいました。 A. 個別より全体に一声入れてください。「お待たせしております。順にご案内いたします」で変わります。最後尾が分かる目印も用意します。

Q. 電話が鳴ったらどうしますか。 A. 目の前のお客さまが優先です。手が空いている人が取る形を決めてください。対面を中断して出ると、後回しにされたと感じます。

Q. 「あとで伺います」と言って忘れました。 A. 2人を超えたら頭で覚えるのをやめてください。メモに1文字書くだけでも違います。戻らないのがいちばん信用を落とします。

Q. 待ち時間を短くできません。 A. 感じ方を変える方向に動いてください。あとどれくらいかを伝える、近くの棚を見てもらうだけで待っている感じが減ります。

Q. 毎日同じ時間に手が回りません。 A. 個人の技術ではなく配置の問題です。時間帯、待たせた人数、対応した人数を1か月分並べてください。山になる時間が出ます。

Q. 新しく入った人に何から教えますか。 A. 「ただいま参ります」の1文だけです。最初から優先順位を考えさせると固まります。判断は慣れてからで足ります。

Q. 混む時間の立ち位置をどう決めますか。 A. 入口とレジの両方が誰かの視界に入る形にしてください。2人とも売り場の奥にいる時間があると、その間に来た人は誰にも気づかれません。

Q. 対応の途中で優先順位を変えてよいですか。 A. 始めた対応は最後までが基本です。例外は危険につながる場面と、会計が止まっている場面の2つ。止めるときは理由を添えます。

Q. 待たせたあと、何と言って戻りますか。 A. 「お待たせいたしました」を必ず先に言ってください。何も言わずに続きから入ると、待っていた時間が無かったことになります。

Q. 声をかけずに帰られてしまいます。 A. 気づかれなかった人は記録に残りません。作業に入る前に一度売り場を見渡してください。数秒で足ります。

Q. 作業中はどこを向いていればよいですか。 A. 入口か通路が視界に入る向きです。棚に正対して背中を向けると、声をかけにくく見えます。体を斜めにするだけで変わります。