外国人のお客様への接客|伝わる日本語
目次
外国人のお客様への接客は、英語ができないと無理だと思われがちです。ただ実際の店頭では、英語が通じない相手のほうが多いという場面もよくあります。言語の数だけ準備するのは現実的ではありません。
この記事では、語学ではなく伝わる日本語の使い方と、言葉に頼らない方法を整理します。外国語ができなくても、その日から変えられる部分があります。
結論:外国人接客で効くのは、語学より「文を短くすること」
外国人のお客様への接客で最初に効くのは、日本語を短く区切ることです。丁寧にしようとして文が長くなると、日本語をある程度話せる方でも聞き取れなくなります。
ポイントはここです。敬語を外す必要はありません。短くするのは文の長さで、丁寧さではありません。
- ×「恐れ入りますが、こちらの商品につきましてはお一人様一点までとさせていただいております」
- ○「こちらは、お一人様1点までです」
日本語学習者がつまずくのは、謙譲語と二重敬語が重なった長い文です。「〜させていただいております」を「〜です」にするだけで、伝わり方が変わります。
外国人接客1:伝わる日本語の作り方
短くする以外にも、いくつか型があります。
| やること | 例 |
|---|---|
| 1文を短くする | 「こちらは1点までです」 |
| 主語と目的語を省かない | 「(お客様が)これを買いますか」 |
| 数字を先に言う | 「1,200円です」 |
| 二重否定を使わない | 「できません」(「〜ないことはない」を避ける) |
| 曖昧な表現を避ける | 「難しいです」→「できません」 |
「難しいです」は伝わりません。日本語では断りの意味になりますが、字義どおりに受け取られると「手間はかかるができる」と読まれます。断るときははっきり「できません」と言うほうが親切です。
擬態語も伝わりにくい部分です。「さっぱりした味」「ふんわり」などは、日本語学習者には難度が高くなります。「あまり甘くないです」のように、具体の形にすると届きます。
外国人接客2:言葉に頼らない方法
言葉が通じない場面では、見せる・書く・指すの3つが使えます。
見せるのがいちばん速い方法です。商品そのもの、値札、レシート、電卓の画面。金額は口で言うより数字を見せるほうが確実です。
書くのも有効です。数字と時間は書けば通じます。紙とペンをレジのそばに置いておくと、そのつど探さずに済みます。
指すのは、案内の場面で効きます。「あちらです」と言うより、一緒に歩くほうが速く終わります。
翻訳アプリを使う店も増えています。店として使ってよいか確かめておくと、迷わず出せます。個人の端末を使う場合は、店の方針を確認しておくほうが安全です。
外国人接客3:よく使う場面の英語
全部を英語にする必要はありませんが、数が限られた場面だけ覚えておくと楽になります。
| 場面 | 短い言い方 |
|---|---|
| 迎える | Hello. |
| 待たせる | One moment, please. |
| 金額 | (数字を見せながら) Total. |
| 袋 | Do you need a bag? |
| 支払い方法 | Cash or card? |
| 免税 | Tax free? |
| 温め | Heat it up? |
| ありがとう | Thank you. |
完全な文である必要はありません。単語と身ぶりで足ります。「Bag?」と袋を見せれば通じます。
無理に流暢に話そうとすると、かえって相手も早口で返してきます。短く区切って話すほうが、返ってくる言葉も分かりやすくなります。
外国人接客4:店として準備しておけること
外国人のお客様への対応は、個人の語学力に頼ると続きません。店として準備しておけるものがあります。
- 指差し用の紙(袋の要否、温め、支払い方法)
- 金額を表示できる電卓か端末
- 免税の手順書
- 主要な案内の多言語表示(トイレ、試着室、喫煙可否)
- 翻訳アプリを入れた共用の端末
指差し用の紙がいちばん費用対効果が高い部分です。よく聞く4〜5項目を絵と短い英語で並べておくだけで、多くの場面が解決します。
免税がある店では、手順を紙にしておきます。手続きは正確さが要るので、慣れていない人が対応すると時間がかかります。必要書類とレジ操作を並べておくと、誰でも同じ手順で進められます。
外国人接客5:やってはいけないこと
配慮のつもりが、失礼になる形があります。
英語で話しかけるとは限らない。見た目で判断して英語で始めると、日本語が話せる方には不快に受け取られることがあります。まず日本語で、短く話しかけて、通じなければ切り替える順番が無難です。
声を大きくしない。聞こえていないのではなく、言葉が分からないだけです。大きくしても伝わりません。短く区切るほうが効きます。
子どもに通訳させない。家族連れで子どもが日本語を話せる場合でも、金額や契約に関わる話を子どもに通させるのは避けます。
文化の違いを決めつけない。出身国を推測して対応を変えると外します。必要な情報だけ、相手に直接聞くのが確実です。
外国人接客は、日本語話者にも効く
短く区切る、数字を見せる、二重敬語をやめる。これらは日本語話者にも同じように効きます。
高齢のお客様、急いでいる方、電話越しの相手。長い敬語の文が聞き取りにくいのは、誰にとっても同じです。外国人接客の工夫は、そのまま店全体の分かりやすさにつながります。
だから、これは特別な対応ではありません。普段の言い方を短くしておくと、そのまま外国人接客にも使えるという順番で考えると、準備の負担が減ります。
外国人接客は、聞き取る側の工夫も要る
外国人のお客様への接客では、こちらが話すことより、相手の日本語を聞き取ることでつまずく場面も多くあります。
聞き取れないときに使えるのは、次の形です。
- 単語で確かめる。「サイズ、ですか」「返品、ですか」と、聞こえた単語を1つ返します
- 選択肢を出す。「現金、カード、どちらですか」と2つに絞ります
- 書いてもらう。紙を出すと、書ける方は書いてくれます
- 見せてもらう。商品や画面を指してもらいます
選択肢を出す形がいちばん速く終わります。自由に答えてもらうより、2つから選ぶほうが双方の負担が小さくなります。
聞き返すときは、同じ言い方を繰り返さないほうが伝わります。通じなかった言い方をもう一度言っても、結果は変わりません。別の言葉に置き換えます。
外国人接客は、トラブルの形も少し違う
言葉が通じにくい状態では、行き違いがトラブルに育ちやすくなります。
| 起きやすい行き違い | 防ぎ方 |
|---|---|
| 金額の誤解 | 数字を見せる |
| 返品条件の誤解 | 書いて渡す |
| 免税の条件 | 手順書を見せる |
| 賞味期限・アレルギー | 現物の表示を一緒に見る |
| サイズの違い | 実物を当てて見せる |
アレルギーや期限に関わる内容は、口頭で済ませないほうが安全です。伝わったつもりで通じていないと、健康に関わります。現物の表示を一緒に見る形にします。
トラブルになった場合は、言葉で解決しようとせず、書く・見せるに切り替えます。早口の応酬になると、双方が消耗します。
責任者を呼ぶ判断も早めます。言葉が通じない状態で1人で抱えると、長引くだけになります。
外国人接客は、指差しの紙を1枚作る
外国人のお客様への対応は、紙を1枚作るだけでかなり解決します。語学の準備より費用対効果が高い部分です。
載せるのは、よく聞く4〜5項目だけで足ります。
| 項目 | 載せ方 |
|---|---|
| 袋の要否 | 絵と Bag? |
| 温め | 絵と Heat? |
| 支払い方法 | 現金・カード・コードの絵 |
| 箸・スプーン | 絵と数 |
| 免税 | Tax free? と条件 |
絵を入れるのが要点です。文字だけだと、読めない言語の方には届きません。指をさしてもらう形にすると、双方が話さずに済みます。
置き場所はレジのそば、すぐ手に取れるところです。探すところから始まると、使われなくなります。
作ったあとは、実際に使ってみて足りない項目を足します。最初から完璧にする必要はなく、聞かれた内容を後から追加する形で育てられます。
外国人接客は、想定しておく場面が決まっている
外国人のお客様への対応でつまずく場面は、業種ごとにだいたい決まっています。先に想定しておくと、その場で慌てません。
| 業種 | よくある場面 |
|---|---|
| 小売 | 免税、サイズ表記の違い、返品条件 |
| 飲食 | アレルギー、宗教上の食事制限、辛さ |
| コンビニ | 温め、箸、袋、支払い方法 |
| ドラッグストア | 用法、成分、持ち出しの可否 |
| サロン | 施術内容、所要時間、料金体系 |
食事制限は、口頭だけで済ませない部分です。宗教上の理由で食べられないものがある場合、原材料の表示を一緒に見る形にします。伝わったつもりで通じていないと、健康や信条に関わります。
サイズ表記は国によって違います。実物を当てて見せるほうが、数字を伝えるより確実です。
医薬品では、用法が伝わらないと危険につながります。薬剤師や専門の担当に代わる判断を早めるのが安全です。
外国人接客は、店として準備すると負担が減る
個人の語学力に頼る形は続きません。店として用意しておけるものがあります。
| 用意するもの | 効き方 |
|---|---|
| 指差しの紙 | よく聞く4〜5項目が解決する |
| 多言語の表示 | トイレ、試着室、喫煙可否 |
| 免税の手順書 | 誰でも同じ手順で進められる |
| 原材料の一覧 | アレルギーと食事制限に対応 |
| 翻訳アプリの共用端末 | 個人の端末を使わずに済む |
免税の手順書は、慣れていない人ほど効きます。必要書類とレジ操作を並べておくだけで、時間が大きく変わります。
原材料の一覧は、飲食と食品で価値が高い部分です。その場で調べる時間が省けるうえ、伝え間違いも減ります。
個人の端末で翻訳アプリを使う場合は、店の方針を確かめます。共用の端末があるほうが、私物を出さずに済みます。
外国人接客は、経験がそのまま蓄積になる
外国人のお客様への対応は、経験がそのまま店の蓄積になります。同じ場面が繰り返されるためです。
聞かれた内容、通じなかった言い方、うまくいった伝え方。書き残しておくと、次の人が同じ苦労をせずに済みます。
蓄積しやすいのは次のようなものです。
- よく聞かれる質問と、通じた答え方
- 指差しの紙に足したい項目
- 免税でつまずいた点
- 通じなかった日本語の言い回し
「通じなかった言い回し」がいちばん価値があります。丁寧に言ったつもりが伝わらなかった例は、他の人も同じように使っている可能性があります。
続けていると、外国語ができなくても対応できる範囲が広がります。語学の習得より、蓄積のほうが早く効きます。
外国人接客は、言葉以外の準備で差が出る
外国人のお客様への対応は、言葉以外の準備で大きく変わります。
多言語の表示は、その代表です。トイレ、試着室、喫煙の可否、支払い方法。聞かれる前に解決するので、双方の負担が減ります。
商品の表示も効きます。アレルギーや原材料は、表示があれば見せるだけで済みます。説明しようとすると、言葉の壁がそのまま出ます。
決済手段の掲示も、聞かれる回数を減らします。使える種類が絵で分かると、確かめずに済みます。
こうした準備は一度やれば残ります。その場の対応力より、準備のほうが安定して効きます。
よくある質問
英語ができないと対応できませんか
できます。見せる・書く・指すの3つで、店頭の場面の多くは解決します。単語と身ぶりで足ります。
何語で話しかければいいですか
まず日本語です。見た目で判断して英語から入ると、日本語が話せる方には失礼になることがあります。通じなければ切り替えます。
翻訳アプリを使ってもいいですか
店の方針を確かめます。使ってよい場合は、短い文を入力するほうが訳が正確になります。長い敬語の文は誤訳されやすくなります。
免税の対応が分かりません
手順を紙にしておくのが確実です。慣れていない人が対応すると時間がかかるので、書類とレジ操作を並べておくと誰でも同じ手順で進められます。
トラブルになったときは
言葉が通じない状態でのトラブルは、1人で抱えないほうが早く収まります。責任者を呼ぶ判断を早めるのと、書いて示す方法に切り替えるのが現実的です。
相手の日本語が聞き取れません
選択肢を2つ出すのがいちばん速く終わります。自由に答えてもらうより、双方の負担が小さくなります。
アレルギーの確認はどうしますか
口頭で済ませません。現物の表示を一緒に見る形にします。伝わったつもりで通じていないと、健康に関わります。
食事制限を聞かれたときは
口頭で済ませません。原材料の表示を一緒に見る形にします。伝わったつもりで通じていないと、健康や信条に関わります。
サイズの説明が伝わりません
数字より、実物を当てて見せるほうが確実です。国によって表記が違います。
翻訳アプリを使うと時間がかかります
短い文を入力すると速く正確になります。長い敬語の文は誤訳されやすいので、単語に近い形で入れます。
通じているか分かりません
復唱してもらうか、数字や現物で確かめます。うなずきだけでは、通じたかどうか分かりません。
まとめ
外国人のお客様への接客で最初に効くのは、語学ではなく日本語を短く区切ることです。敬語を外す必要はなく、短くするのは文の長さのほうです。
言葉に頼らない方法として、見せる・書く・指すの3つが使えます。金額は口で言うより数字を見せるほうが確実で、案内は一緒に歩くほうが速く終わります。
見た目で判断して英語から入らない、声を大きくしない、子どもに通訳させない。この3つは配慮のつもりが失礼になりやすい形です。短く区切る工夫は日本語話者にも効くので、普段の言い方を整えておくとそのまま使えます。